なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

SLEEP『The Sciences』

SLEEP『The Sciences』


カリフォルニア出身のヘヴィ・ロック・バンドSLEEPが約20年ぶりに出した実質的な4作目。
再編第一弾アルバムでもある。
“マリファナ用語”や造語がスパイスの歌詞も含めて、
6曲で前作『Jerusalem』のリメイクを試みた続編とも言える。

避けて通ろうとしたが、
SLEEPだからそうはいかなかった。

昔話とはいえ前身バンド時代も含めればPROFANE EXISTENCEやOFF THE DISKという
地下ハードコア・レーベルからも音源を出してきたことが示すように、
激臭が魅力のバンドである。
だからこそ偏見と言われようが、
元WHITE STRIPESのジャック・ホワイトのレーベルからのリリースということで嫌な予感はあった。

悪くはない。
けど“たいへんよくできました”って感じである。


最終的な仕上げの違いで前作は
『Jerusalem』と『Dopesmoker』という2タイトルのアルバムが発表されたが、
僕は断然、アルバム・タイトルも中身もすべてを凝縮している『Jerusalem』派だ。
個人的にはルー・リードの『Metal Machine Music』や灰野敬二の『慈』と並んで、
『Jerusalem』は最も一日中リピートしてきたサイケデリック作である
(『Jerusalem』の日本盤のCDはマスタリングの影響か若干薄口だから注意)。

それほどの存在の僕の思い入れが強すぎるのか、
この新作は手放しでは喜べない。


ドラマーはNEUROSISのジェイソン・ローダー。
ハードコア・パンク時代からNEUROSISを支えてきた人だが、
本作のリズムは2000年代以降のNEUROSISみたいな間合いになっていて、
SLEEPの新しい個性と解釈することも可能ではある。
けど2010年代に入ってからのSLEEPの再編ライヴ等でずっと叩いてきているとはいえ、
アル・シスネロス(vo、b他)とマット・パイク(g)に絡み切れない堅実なドラムに聴こえる。
スローな曲でもSLEEPの肝だった加速度やドライヴ感が今一つなのが辛い。
ポスト・メタルの端正なビート感なのだ。

バンドはドラマーで決まるとあらためて思わされるが、
何よりアルとマットが手癖で“なぞっているプレイ”に聴こえてしまう。
もちろん一般的なバンドのレベルからいったらかなりのものだが、
スリープならではの危険なケミストリーやロックのバンド・マジックが薄い。
“それっぽく”聞こえるヴォーカルも“末期”SWANSの如く思わせぶりに響く。

エンジニアとミックスはCHRIST ON PARADE~NEUROSISのノア・ランディスで、
マスタリングはSHELLACのボブ・ウェストン。
暑苦しいロック畑の人たちではないレコーディング布陣も、
消臭されたかのように匂いや気配があまり漂ってこない音の仕上がりに影響したのかもしれないが、
プロデュースはSLEEP自身だ。

宇宙にちょこっと舞台を移しつつエルサレムも絡めた歌詞は今回も“彼岸”をイメージする。
BLACK SABBATHのギーザー・バトラーをもじったみたいな曲名「Giza Butler」もあり、
他の曲の歌詞にもBLACK SABBATH関連の言葉が組み込まれ、
ユーモアともなんとも言い難い。
アレコレ考えずに撮った写真を使ったみたいな内ジャケットも謎だが、
ジェイソンが根本アイデアを出したアルバム・カヴァーの表と裏も生々しさに欠ける。


聴けば聴くほど遠くなっていく。
SLEEPの意識が聴こえてこないから。

しばらく経ってからまた聴き返してみる。
絶えずツアーをやっているHIGH ON FIREの気合の入った新作を早く聴きたくなったのが、
今の本音だ。


★SLEEP『The Sciences』(THIRD MAN TMR 547)CD
歌詞が載った六つ折りインサートが封入された薄手の二つ折り紙ジャケット仕様の約53分6曲入り。
↑の画像はLPのジャケットでCDは上下が若干圧縮された感じのレイアウトになっている。


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コメント

SLEEPはLIVE行きましたがその世界に入り込めなかったので新作買ってないです。音もそうですが、マット・パイクの存在そのものが今のSLEEPでは収まりきらない感覚が個人的になくならなくて。Electric Wizardの最近のLIVE(新作は面白いですね)もそうでしたが、周りの熱あるレスポンスと自分のどこか冷めた感じの差により何かまたより煮え切らない気持ちにさせられます。作品聴いてないのに失礼しました。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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