なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ストリート・オブ・ファイヤー デジタル・リマスター版』

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1984年の公開当時に日本でも大ヒットした米国のロックンロール映画。
ウォルター・ヒル監督が脚本も手掛けた作品で、
このたび7月後半からデジタル・リマスター版で再び日本全国ロードショーとなる。
アクションあり、ラヴあり、笑いあり、音楽ありありの理屈抜きの娯楽映画で、
映像も音声も臨場感抜群だから劇場で観るとエキサイト五割り増しで楽しめる快作だ。

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街に戻ってきた流れ者の男が、
大人気ロック歌手になった元カノが暴走族に誘拐されたと知り、
そのマネージャーや女兵士と救い出すストーリー。

映画の王道パターンのシンプルな物語だが、
だからこそ問われる“肉付け”が最高の映画だ。

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まずキャラのはっきりした俳優陣が映画を隅々まで盛り立てている。

当時19歳とは思えぬ、
いや19歳だからこその存在感のダイアン・レインがまぶしい。
凛としてセクシー(≠エロい)なヒロインのロック歌手を堂々と演じ切っている。
出世作になっただけに流れ者の男を演じたマイケル・パレがクールすぎる。
男っぽい女兵士役のエイミー・マディガンと
メガネもマネージャーらしいリック・モラニスがユーモラスないい味を出している。
暴走族のボス役のウィレム・デフォーも凶暴でよろしい。

みな絵にかいたような“いかにも”だが、
伝統を新しく魅せるのがグレイトなロックンロール・スピリット。
とにかく全員最初から最後までキャラの針が振り切って役に“憑依”している。
アメリカンなダイナミズムにあふれつつも大味に陥らず、
感情表現もなかなか丁寧だからますます引き込まれる。

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雰囲気ぶちこわしになるシーン以外は
ロックンロール・ミュージックが流れっぱなしで、
それがわずらわしくない使われ方にもセンスを感じる。
いわゆるロックンロールだけでなくR&Bナンバーもふんだんに使われ、
映画の中でコーラス/ダンス・クループが登場人物として出てくるのも象徴的だ。

リンク・レイで知られる「Rumble」をはじめとして
(この映画の音楽全般を担当していて数曲提供しているライ・クーダーのバンドの演奏)、
渋めの選曲も功を奏している。
Patti Smith GROUPやTom Petty and the HEARTBREAKERSなどのプロデュースをしてきた、
ジミー・アイオヴァインが特殊音楽素材監修なのも隠し味だ。

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もちろん音楽に乗ってテンポもいい。

ゆったりしたシーンも含めて映画全体がリズミカルなのも大きなポイントである。
やっぱり映画全体が命の鼓動のビートに貫かれている映画は
ダレることなく一気にクライマックスまで見せるのだ。

もちろんスクリーン狭しと派手にやっていて、
愚連隊が集結する場面はスクリーン一杯に人が広がる。
とはいえバイクやアメ車が活躍する路上シーンも、
タイマンをはじめとする対決シーンも、
わざとらしくないアナログ感覚の映像だからこそリアルに映る。
この映画で歌われているラヴ・ソングのように、
ラヴ・シーンも“チラ見せ”の美学だからこそ輝いている。

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セリフも絶妙だ。
わりと聞き取れる英語が多いが、
日本語字幕担当者のセンスも特筆したい。

流れ者の男を演じたマイケル・パレが
元カノのロック歌手のダイアン・レインに吐く別れの捨てゼリフが心憎すぎる。
続編を期待させるラスト・シーンも粋だ。

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★映画『ストリート・オブ・ファイヤー デジタル・リマスター版』
1984年|原題:Streets of Fire|アメリカ|カラ―|94分
©1984 Universal Studios. All Rights Reserved.
◆公開表記
7月21(土)シネマート新宿ほかダイナマイトロードショー! 以降全国順次公開。


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コメント

ウォルター・ヒルは80年代の一時期、日本でも名前で客が呼べる監督のひとりになってましたね。
同監督の映画を初めて観たのは小学生の時スターウォーズとの二本立て(!)で観た『ザ・ドライバー』で、ハードボイルドなカーアクション映画ですが西部劇をまんまカーチェイスに置き換えたようなスタイリッシュな演出、登場人物たちが互いにアダ名でしか呼び合わず最後まで名前も明かされないストイックな設定、ストリート~でも顕著なナイトシーンへのこだわり等々、スターウォーズよりこっちが断然気に入ってしまいました。
3作目『ウォリアーズ』(個人的にはこれがヒルの最高傑作と思っとります)でストイックさもプロットのシンプルさも益々研ぎ澄まされ、ほとんどストーリーの骸骨が疾走するような大傑作ですがヒル監督がファンだったというKISSのメイクそのものなベースボール・フューリーズってストリートギャングの一団が出て来てケレン味に華を添えるのもご愛敬です。
純正西部劇『ロングライダーズ』、未公開で "ブラボー小隊・恐怖の脱出" という邦題でTV放映のみの『サザン・コンフォート』(これも快作ながらヒルには珍しくカタルシス皆無)、『48時間』を経ていよいよヒル集大成ともいうべき『ストリート~』で、この1作にすべて注ぎ込んだであろうヒルの並々ならぬ意欲が充満した快作です。封切り当時、スピルバーグの「インディジョーンズ魔宮の伝説」の夏休み1人勝ち状態を唯一阻止した興行実績もあり忘れられない青春の1本でもあります!
けれども、ストイックさとケレン味が行き過ぎていささかギャグ寸前になってるようなところもあり、シェーンが現代にカムバックしたような西部劇とロックンロールの寓話を作ろうとした目論みは達成しているとはいえリアタイでヒルを追っかけたファンの1人としては100点満点とはいかない気分になったのも事実として正直に言っておかねばなりません。とはいっても中学生当時、ツレと観に行って上映終了後肩で風切るようにイキッて出て来ましたがw 絶対そういう気分にさせる映画なんです!
面白いのは、公開当時こういうロックがひっきりなしに鳴ってるような映画は忌み嫌いそうな年配の映画評論家諸氏に意外なほどウケが良かったことで、とくに超のつくベテラン先生の淀川長治さんや双葉十三郎さんなどはほぼ絶賛してました。「これはシェーンが現代に蘇ったのだ」と。ヒルの作風は往年の映画ファンの心をくすぐるところも多分にありました。
もともとは脚本家としてサム・ペキンパーの『ゲッタウェイ』のシナリオなど手掛けていたヒル、脚本家出身の監督としては珍しく "余分なシーンを撮らない" ことでも優秀でした(脚本家が演出すると、自分の書いたホンを切れないので必要性のない場面も入れてしまうケースが往々にしてあり)
いまや怪優の名を欲しいままにするウィレム・デフォーが初めて日本の観客に認知された映画でもありますねぇ。ダイアン・レインはともかくマイケル・パレはその後どうしてた?ってくらい顔を見なかったですが。
ともかくヒルにとっても良くも悪くも頂点を極めた映画だったと思ってます。シュワちゃんの『レッドブル』とか、その後も佳作はあるんですけどね。

Re: タイトルなし

Nuggetsさん、コメントありがとうございます。
毎度触発されます。色々リンクさせていて洞察も刺激になります。
挙げていただいた作品をはじめとしてコメントを参考に、僕もこういうアメリカンな映画をもっと観てみますね。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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