非常階段『極悪ライブ'81+凶悪ライブ'81』
2019-03-22

“キング・オブ・ノイズ”を標榜するノイズ・バンドの非常階段による2つの初期ライヴを収めた映像作品。
かつてDVD-Rで販売されていたものの2 in 1でのDVD化だ。
「極悪ライブ’81」と題された1981年8月28日の新宿ロフトでのライヴは、
イベントの“FLIGHT 7DAYS unbalance day”出演時の23分のノーカット版。
暗めで鮮明な画質はではないが、
多数のメンバーが乗ったステージ上での動きがしっかり記録されているドキュメンタリーだ。
前から撮っているから観客の目線で楽しめる。
はっきりとは確認できないが、
生魚、ミミズ、ゴカイ、納豆が飛びかっていたらしく、
嘔吐や放尿もありだから床がすべって立てないようなシーンも映しこまれている。
好き勝手な放任状態ながら、
アナーキーな“調和”が感じられるのが非常階段ならでは。
ヴォイスとドラムとサックスを含む演奏はフリー・ジャズの加速度で、
エレクトリック・ギター中心の容赦無き高音域際立つ熾烈ノイズに突き動かされ、
みんなノリノリだ。
ノイズに殺られたのかノイズに憑かれたのかは定かじゃないが、
演奏してないメンバーは一心不乱に何かブツをしばいたり、
覚醒陶酔して夢遊病者みたいな動きも見せて舞踏にも見えるパフォーマンス。
ところによっては際立つ、
『Velvet Underground & Nico』の裏ジャケット風のサイケデリック・テイストの映像色も特筆したい。
「凶悪ライブ’81」と題された京都・同志社大学至誠館24番教室で行なわれたライヴの方は、
1981年11月27日の学園祭会場でのステージを19分収録。
カラーながら天然のセピア色っぽい映像色でモノクロにも近くて生々しい効果を生んでいる。
いわゆるステージのないスペースと思われ、
プレイしている周りから様々なアングルで撮られているから、
メンバーの目線というかステージ上で観ている気分にもなる。
やはりエレクトレック・ギター、ドラム、サックスを含む演奏で、
ルー・リードの『Metal Machine Music』がハード・ロック化したように硬質ノイズを放射し、
まさに“無限大の:幻覚”のイメージを体現したようなサウンドだ。
演奏前から既にパフォーマンスが始まっているようなライヴで、
電子音が鳴りわたる中で準備しているみたいなメンバー映像がオープニング。
こちらも何人がメンバーか判然としないところもまたフリー・フォームで、
幾人もの人が音を発して何かのブツをしばいている。
ステージと客席の境目がない感じでどれが観客かメンバーがわからないフロアーだから、
観客もまぎれこんでいるかのような雑然とやりたい放題。
ノイズに酩酊してうろつきつつ物投げたり転げたり叫んだり他の人間に絡んだり、
アブないパフォーマーたちのプリミティヴな行ないが目立つ。
撮っている人も何が飛んでくるかわからない状況だから、
しだいに遠めのカメラになっていき、
“ドクター・ストップ”みたいな感じで映像が終わるのもリアルだ。
まさにロックの極北をナマで記録した映像作品である。
★非常階段『極悪ライブ'81+凶悪ライブ'81』(アルケミー ARDVD-006)DVD
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