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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『東京裁判』

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<東條英機(元内閣総理大臣/陸軍大臣)>


昭和20年(1945年)8月15日までの日中戦争や太平洋戦争での“行為”をメインに、
戦争犯罪人とされた敗戦国日本の28人の“指導者”を
戦勝国の連合国が裁いた裁判のドキュメンタリー。
もともと1983年に公開された映画で、
このたびデジタルリマスター版で全国ロードショーとなる。

六部作の『人間の條件』で知られる小林正樹監督の“戦争映画”の集大成でもある。
ナレーターは佐藤慶で音楽は武満徹という万全の制作だ゜。
4時間37分におよぶ大作だが、
長丁場とはいえ上映時は中間部で休憩タイムが設けられている。

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<極東国際軍事裁判法廷>

正式には極東国際軍事裁判と呼ばれる通称“東京裁判”は
昭和21年(1946年)の5月から昭和23年(1948年)の11月まで行われたが、
その裁判の様子が中心の映画である。
今回はデジタルリマスタリング修復補訂された彫りの深いシャープなモノクロ映像で
顔つきもしっかり鑑賞でき、
音声もくっきり聞こえてくる。
劇場のスクリーンとスピーカーで体験する映画として緻密に仕上げられているのだ。

といっても動きのあまりない裁判の様子が延々続くと飽きそうという現実的な計らいか、
裁判進行過程のその時々のネタ等の関連アーカイヴ映像をバランスよく随所にたっぷり挿入。
もちろん国内に留まらず
日本が“バトル・フィールド”にした中国、太平洋の諸国などの強烈な戦争映像中心に、
玉音放送なども盛り込み、
アクセントを付けるに留まることなく映画全体を引き締めている。

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<マッカーサー司令官>

裁判の模様はアメリカ国防総省が撮影していた膨大なフィルムをピックアップしたそうだが、
まさに気の遠くなる作業が想像できる。
“開廷”の際は毎回数台のカメラで撮影していたと思われ、
カメラ・アングルといい遠近のカメラ・ワークといい劇映画を思わせる映像力が凄い。
裁判ものだけに静的な映像がほとんどながら、
一般のアメリカ映画を思わせるほど対象に対してカメラが迫るダイナミズムで引き込む。

多少なりとも東京裁判を知っている方なら結果がわかっている推理小説を読む感覚ではあるが、
ある種のサスペンス映画やミステリー映画としても味わえる作りだ。
単なる記録映画の域を超えた一種の“ドラマ”も見せる作りなのである。
もちろん脚色の類いは無しだが、
専門家以外のふつうの人が裁判進行の流れに入っていきやすい構成だ。

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<広田弘毅(元内閣総理大臣ほか)>

28人の被告の佇まいも見どころで、
クライマックスの判決までほぼ微動だにしない表情の微妙な変化、
語り口や声のトーンも聞き逃せない。
やっぱりそういうところに人間の意識が表れているのだ。

太平洋戦争中の実質的な日本のトップ権力者だった東條英機はやっぱり存在感が格別である。
裁判が始まる前に自決失敗するも、
対応に不備がある場面ではしっかり注文を付けている。
ヒトラーと一緒にして語ることは粗雑極まりないとはいえ貧乏くじを引いた説も無理があり、
罪は逃れ得ないと覚悟を決めた風情に、
いわゆる戦前によく使われた国号の“大日本帝国”を感じる。

だがむろんセンチメンタリズムの類いは贅肉みたいに削ぎ落している。
ドキュメンタリー映画は“支持者”が喜ぶような無駄が目立つ編集でゲンナリすることが多いが、
“身内”もヘッタクレもないストイックな編集は美しくすらある。

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<ウィリアム・F・ウェッブ裁判長>

普遍的な観点で示唆に富む裁判の映画としても興味深い。
日本の被告人のために働いたアメリカ側の弁護人が“的を射た”素朴な指摘をするなど、
発見たくさんである。
“平和に対する罪”とは?
“人道に対する罪”とは?
考えさせられる。

いわゆる戦争に留まらず複雑で骨肉の争いの内戦の類いにもリンクする。
ポルポト支配下のカンボジア、ユーゴスラビア内戦、ルワンダ大虐殺、
コロンビアなど中南米での極左ゲリラとの和解、ISをはじめとするイスラム過激派関連などなど、
永遠に続きそうなほど無限大に現在進行形なのがつらい。

日常生活でもそうだが責任感が問われる。

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<極東国際軍事裁判法廷>

殺された者の無念そっちのけでエゴ丸出しの“正義”を説く知識人がのたまう
「僕たちは~しなければならない」みたいなたメッセージはない。
そんな説教、ふつうの人の耳には響かないから。

淡々と・・・だからこそ深い。


★映画『東京裁判』
1983年/日本/モノクロ/DCP/5.0ch/277分
企画・製作・提供:講談社、配給:太秦
2019年8月3日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
(C)講談社2018
公式サイト:www.tokyosaiban2019.com


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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