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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ラスト・ムービースター』

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『脱出』(1972年)、『トランザム7000』(1977年)、『ブギ―ナイツ』(1997年)で知られ、
昨年82歳で亡くなった米国のバート・レイノルズの最後の主演作である2017年の映画。
一周忌の9月6日(金)に日本でも公開される。

『デトロイト・ロック・シティ』(1999年)を手掛けたアダム・リフキンが監督で、
“いい映画だなぁ”と観た後に思わず漏らしてしまうアメリカ映画らしいシンプルな快作だ。

実話の再現ではないが、
レイノルズ自身をモデルにした映画らしく、
本人のエピソードなどをアレンジして物語に活かしてもいるからリアルに迫ってくる。
過去の出演作の映像をユニークに活用した“仕掛け”も心憎い。
レイノルズのファンの方が細かいネタ込みでたっぷり楽しめることは言うまでもないが、
知らない方も
落ちぶれた映画スターの人間味とささやかなしあわせにジン!とくること間違いナシの映画だ。

Sequence.jpg

一世を風靡したハリウッド俳優のヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)のもとに、
とある映画祭から功労賞受賞の招待状が届く。
歴代受賞者がロバート・デ・ニーロやクリント・イーストウッドだと聞いて、
しぶしぶ参加したものの、騙しに近い名もない映画祭だと知ると、エドワーズは憤慨。

だが、その映画祭の場所は、彼が生まれ育った街のテネシー州ノックスビルに近く、
過去の思い出がよみがえる。
映画祭開催中のエドワーズのアテンド&運転手になったリル(アリエル・ウィンター)に
命じて向かった先は、
育った家、大学のフットボールで活躍したスタジアム、最初の妻にプロポーズした岸辺。
自身の人生を振り返ったエドワーズは、ある行動を起こす。

以上があらすじだ。

サブ3

エドワーズが呼ばれた映画祭は招待状に“国際ナッシュビル映画祭”と書かれていたが、
映画オタクがDIYで催しているアットホームなイベントだった。
経済的に可能な限りのもてなしをしてくれて熱い歓待で迎えてくれたはいえ、
ビッグな映画祭と思って出向いたにもかかわらず移動の飛行機や車、宿泊先はイマイチ。
到着してビックリした小さなパブでの自主上映会+ファンとの交流会みたいな催しに、
自分の落ちぶれぶりを思い知らされて元スーパースターのプライドも許さなかった。

中盤までエドワーズは嫌なクソジジイにしか見えない。
偏屈なアティテュードは自虐加虐も込みのユーモア・・・と解釈できるうちはまだ笑えるが、
酒をあおって短時間のうちに次々と起こすトゥー・マッチな行動がエスカレートし、
映画祭のメンバーたちも愛想をつかしていく。
でも車で“帰宅”途中に故郷の道路標示がふと目に入ったことが運命の分かれ道で、、
思い出の場所を巡っていく中盤以降にエドワーズはゆっくりとおのれを顧みていく。
とぼけていて傍若無人な素行で前半を貫くからこそ
終盤のシリアスな展開は落差も相まってグッ!とくる。

The Last Movie Star

この映画の最初から最後までキーパーソンになっているのが、
映画祭の主催者の妹ということでエドワーズの運転手をするハメになったリル。
レイノルズ以外の俳優たちも若手中心ながらみな好演で、
映画の物語に沿った感じでレイノルズと共演できる喜びが伝わってくるのだが、
そのリルを演じたアリエル・ウィンターが特に素晴らしい。
まだ21歳で今後が楽しみな女優である。

リルはスマホを肌身離さないイマドキのギャルでビッチなファッションに身をまとっているが、
生意気クールなようで根は純情かつ真面目だからこそチャラ男の彼氏に何度も騙され、
ちょい太目の体型も相まって憎めない愛嬌を振りまく。
ジジイ相手にやる気ゼロの序盤と生き生きした終盤とで顔つきが変わっているところもポイントで、
後半になってもワガママなところは変わらないエドワーズをコントロールするところにもシビれる。

サブ5

臨時運転手のリルとの時間で知らず知らずのうちに自分を省みていく意識の流れが
とてもナチュラルに描かれている。
“全盛期”はモテまくって5回離婚し、
映画の序盤から“老いてなお盛ん”なことを隠さないジジイのエドワーズが、
ひょんなことから超豪華なスイート・ルームでリルと過ごす時間がクライマックスだと思った。
でも本当のクライマックスはその後だ。

リルと回った“自分巡りの道中”で、
もはや映画オタクしか自分のことを覚えてないと思っていた“過小自己評価”を改めていく。
ほんとうの“自信”が湧くと人間って器が大きくなるもので、
敬意や感謝も自然と表すようになる。
驕り高ぶった“自分ファースト”の思い上がりを改めて大切なことに気づく。
今からでも遅くはない・・・死ぬまでに一番やっておきたいことをやらねば。

そしてエドワーズは数十年ぶりに心からの謝罪をする。
とある事情で面と向かってもエドワーズのことを誰だかわかってない一番大切な人に対して。

サブ4

終盤のエドワーズの“スピーチ”は、
まるで人生の最期を悟ったバート・レイノルズが伝えたい最後の思いを込めたかのようだ。
それぐらい熱く、グッとくる。

プライドは謙虚さがあってこそ輝く。


★映画『ラスト・ムービースター』
2017年/アメリカ/英語/104分/原題:The Last Movie Star
監督・脚本:アダム・リフキン
出演:バート・レイノルズ、アリエル・ウィンター、クラーク・デューク、エラー・
コルトレーン、ニッキー・ブロンスキー、チェヴィー・チェイス
(C)2018 DOG YEARS PRODUCTIONS, LLC
9月6日(金)に新宿シネマカリテ、シネ・リーブル梅田ほか全国順次公開
https://lastmoviestar2019.net-broadway.com/


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コメント

このブログきっかけで 移動都市モータルエンジンを iPhoneダウンロードして鑑賞しました。
ありがとうございました。

Re: タイトルなし

モチオさん、コメントありがとうございます。
映画を観るきっかけになることができて嬉しいです。
音楽も含めて幅広く接しておられるようで何よりです。
今後ともよろしくお願いします。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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