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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『男と女 人生最良の日々』(1966年のフランス映画『男と女』の“続編”)

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“ダバダバダ~ダバダバダ~ダバダ……♪”の主題歌でお馴染みの
1966年の映画『男と女』の“今”を描いた2019年の作品。
フランス映画の伝統イメージと言うべき
生々しくロマンチックな恋愛模様の枯れること無き爛熟に心が動く佳作だ。

“前作”の主要スタッフとキャストが揃っている。
監督・脚本は後に『愛と哀しみのボレロ』(1981年)も撮るクロード・ルルーシュ。
主演女優(アヌーク・エーメ)も主演男優(ジャン=ルイ・トランティニャン)も同じで、
新曲も提供しつつ一昨年他界したフランシス・レイが引き続き音楽を担当している。

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とある海辺の施設で余生を送っている男ジャン・ルイ(ジャン=ルイ・トランティニャン)。
かつてはレーシング・ドライバーとして一世を風靡する注目を集める存在だった。
ところが今では徐々に過去の記憶を失い始め、状況は悪化するばかり。

そんな父親の姿を心配した息子は、
ジャン・ルイが長年愛し続けてきた女性アンヌ(アヌーク・エーメ)の居場所を突き止め、
ジャン・ルイの近況を説明して「もう一度、父と会って欲しい」と申し出る。
後日、アンヌがジャン・ルイのいる老人ホーム系の施設を訪れ、久しぶりの再会を果たす。

でも相手がアンヌだと気が付かない(ように見える)ジャン・ルイは、
アンヌへの思いを話し始めるのだった。
そこでいかに自分が愛されていたかを知ったアンヌは、
ジャン・ルイを連れて思い出の地であるノルマンディーへと車を走らせる。
長い空白を埋めるように二人の物語が新たに始まろうとしていた。

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ありえないけどもしかしたらありえるかも…と思わせる、
映画ならではの“憧れ感”が50年前と変わらずキープされている。

“前作”『男と女』を観た方はもちろんのこと観てない方も楽しめる作りだ。
その名場面の数々をフラッシュバックのように適宜挟み込ませており、
“前作”を観ている方は二人と同じく思い出が蘇りイメージをダブらせて観ることができ、
観てない方も当時の二人の出会いと進展と別れみたいなものをイメージできる。
同監督の1976年の短編“暴走ドキュメンタリー”『ランデヴー』の映像もけっこう長時間挿入し、
ジャン=ルイがレーサー時代の記憶を紐解く場面で効果を上げている。

そういった編集のコントラストも含めて、
まず映像だけで魅せる。
特に凝った撮り方をしてないにもかかわらず、
いやシンプルだからこそじわじわと思いが滲み出てくる映像だ。
さりげなく植物の緑がアクセントになった映像だから
映画自体が鮮やかに光合成している色合いでもある。

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メインの二人をはじめとする人間たちにじっくり向き合い、
顔や体だけでなく心にもナチュラルに迫って生き生きとした映像作品に仕上げている。
特に二人の会話のシーンはいわゆる速度がまったりだから単調になりがちなところを、
実はリズミカルな話のタイミングにジャストなカメラの切り替えが見事でテンポがいい。

二人の実年齢は2つ違いとはいえルックスで見る歳の重ね方の違いにも驚かされる。
映画の中でそのへんのことについても語られるからここでは書かないが、
ヴィジュアルの“差”が役柄の上でも実生活の上でも“人生いろいろ”を想像させ、
そんな二人がこうやって再会して微妙な交わりを行なうことがまたたまらない。

二人のやり取りがジェラシーを覚えるほど絶妙だ。
飄々とした佇まいながら会話というより対話と言いたいぐらい“真剣勝負”なのである。
基本的にクールに見えてお互いの気持ちの機微をしっかり読んでいる。
アンナの方はもちろんのこと、
“認知”がヤバそうなジャン・ルイも彼女を“認知”して“演技”しているようでもあるからだ。

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2週間足らずで撮影されたという凝縮された時間の中で濃縮された思いがさりげなく濃い。
男優のジャン=ルイによれば「アヌーク・エーメは素晴らしい友だち」とのことだから、
実生活で50年会ってないということはないと思われる。
だが映画の中で、しかも実質的に50年以上ぶりの“続編”で再会したとなれば、
ときめき感が溢れて否が応でも二人の気持ちが高まったことは想像に難くない。
当時の『男と女』の結末の続きというドラマチックな舞台設定、
だが本作のストーリーがドラマチックかどうかは観た人にゆだねたい。

会話のウエイトも高い映画ながら一言一言が短めでわかりやすく、
まさにエスプリな言葉が連発される。
もちろんスノッブな知性とは百万光年かけ離れた庶民の言葉で、
特にジャン=ルイの言葉にはヤられっぱなしだ。

かつてトップ・レーサーだったプライドゆえか
いわゆる一般の人と言える施設の他の老人たちと群れることなく、
ジャン=ルイは車椅子の上でも洒落たファッションをキープして詩人を気取る。
若い頃と変わらず女好きであることを隠さず、
老いてなお盛んなジャン=ルイの元気なジジイぶりに苦笑を禁じ得ない。
再会した“元カノ”を口説くロマンあふれる言葉には痺れるが、
会うたびに口に出す担当女性介護士を口説く言葉はさらに露骨だ。
日本語字幕によればワイセツではないにしろ完璧にセクハラだが、
キャラの為せるワザかリスペクトされているからか、
嫌悪されなかったと言われる森繁久彌の“その手”の言動と同じくオチャメとも解釈できる。

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物語の前後を入れ替えるような編集がないにもかかわらず、
夢の中の出来事なのか?と思わせる作りもさすがだ。
いわゆる“アート”だからこそ成し得る“あいまいさ”だが、
そういうところにこそ無限のヒントが息づいているとあらためて思わされる。
映画だからこその、映像、物語、音楽、役者の魅力の粋なブレンド具合にまたまた感服し、
フランスの香り・・・いや匂いと言いたい音楽も“催淫作用”ありありだ。

いくつになっても永遠に完熟しない恋愛関係。
50年来の仲なのに“手探り”を続ける二人の言動も相まって、
まるで初恋みたいに初々しく、まばゆい。
老年の、というより変わることのない大人のラヴ・ロマンスとしても楽しめる作品だ。

50年前は子どもだった各々の息子と娘の“『男と女』な関係”もいいアクセントである。
家族映画としても粋な作品ということも付け加えておきたい。


★映画『男と女 人生最良の日々』
2019年/フランス/90分/フランス語
出演:アヌーク・エーメ(『モンパルナスの灯』)、ジャン=ルイ・トランティニャン(『愛、アムール』)、スアド・アミドゥ、アントワーヌ・シレ、モニカ・ベルッチ他。
1月31日(金) TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー。
© 2019 Les Films 13 - Davis Films - France 2 Cinéma
http://otokotoonna.jp/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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