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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『友川カズキ どこへ出しても恥かしい人』

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フォークを超えたギター弾き語りの鬼才、
友川カズキ(友川かずき)の2010年夏の記録を収めたドキュメンタリー映画。

撮影から完成まで10年近く経ったのは、
1980年岩手県宮古市生まれの佐々木育野監督が“進めなかった”からとのことだが、
友川が70才の誕生日を迎える直前の公開になったのだから絶好のタイミングである。

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友川のドキュメンタリーといえば
フランスのヴィンセント・ムーン監督の『花々の過失』が知られている。
その映画の撮影が2009年で日本ロードショーが2010年の12月だから
“微妙な時期”に撮った感じになったわけだが、
どちらも曲名からの引用とはいえタイトルに表れたようにかなり趣が異なる。

ライヴのMCで遠回しに言っていた映画『花々の過失』で友川が不満に思った点を、
すくいとったような映画にも思える。
『友川カズキ どこへ出しても恥かしい人』で描かれている友川は、
ひたすら“無頼者”の友川だ。

『花々の過失』が強靭なシンガーソングライターとしての友川をメインに描いた映画だとしたら、
本作は自作自演歌手というだけでもなく画家であり詩人でもある面も撮りつつ、
競輪愛好家/競輪評論家としての友川をメインに描いている。

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友川の歌は庶民の唄とも言えるが、
やっぱりいわゆる“俗”とは一線を画す。
あの歌声とギターの響きは気持ちが研ぎ澄まされてなければ出てこない。

一方で極端に俗っぽい。
酒とタバコの臭いがプンプンしてくる映画で、
最安タバコの一つである“わかば”を愛好する友川はタバコをほとんど手放さない。
喫煙は今やマイナーな嗜好になっているわけだが、
さらに公営競技のギャンブルの中でもメジャーな競馬ではなく競輪というのも妙に友川らしい。
のめりこんでいるのは20年ほどらしいが、
“競輪バカ一代!”とも“競輪狂の詩!”とも叫びたくなる友川の姿が次々と映し出される。

主なロケ地は競輪場と神奈川県川崎の“自宅”アパートの部屋で、
それらの場所での競輪観戦の模様がこの映画の核。
もちろん車券を購入していて(基本的に大穴狙いとのこと)、
ライヴと同じくある意味lifeを“賭けて”いるからステージと同じく絶叫する。
自分の部屋でもあの甲高い声が天を突くからアパートの隣人の方に同情してしまうほどである。

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大半が普段の友川カズキを撮った様相だ。
競輪場やアパートの室内、飲み屋などでの、ざっくばらんな友川カズキである。
そういう映像が続くとダラダラして身内やコアなファン以外はキツい作品になりがちだが、
カットアップとまでは言わないまでも多少モザイク状の構成で各シーンを短めに切り上げ、
起伏に富む構成だ。

期間は長くなかったのかもしれないが膨大な映像を撮ったと思われるし、
整然とは対極の友川の行動を一つの映画にまとめる苦労は想像するに難くない。
だが撮った映像をなるべく入れて無駄に長い最近の日本のドキュメンタリー映画とは一線を画し、
英断の編集により友川の魅力が64分に凝縮されている。

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ライヴと同じく天然パフォーマンスと軽妙マシンガン・トークも相まって退屈させない。
特にカメラを意識したわけではないであろう、
常に粋な友川のファッション・センスも映画全体を引き締めている一因だ。

節目節目で挿入される友川が歌うシーンはやっぱり映画のテンションを上げる。
ライヴでよくバックを務める石塚俊明や永畑雅人とギターを弾き語る数曲を、
自動車の後部でやっているシチュエーションも面白い。
自宅で遠藤ミチロウの「思惑の奴隷」を弾き語る場面が特に生々しい。
そのカヴァーを提供した2010年12月発売のCD
『青鬼赤鬼 ~ザ・スターリン・遠藤ミチロウ還暦 & 30周年トリビュートアルバム~』に
参加した本音も友川ならではだ。

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ポイントになる場面で友川をバックから撮っているところもユニークだ。
もちろん大半は前から撮っているのだが、
歌っているシーンは顔の極端なアップが多いのも特筆したい。

というわけで真正面からというより背後から友川に向き合ったような映画にも思えるし、
超どアップで友川の内面に迫った映画とも言えるのである。

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この映画も息子たちとの交流が見どころの一つ。
けどそういう貴重な時間もやっぱり銀輪の疾走が目と鼻の先の場だったりするのが友川。

競輪選手に負けじとばかりに友川が“愛車”を飛ばすシーンも爽やかでよろしい。

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★映画『友川カズキ どこへ出しても恥かしい人』
2019年/日本/DCP/5.1ch/64分
出演:友川カズキ、石塚俊明、永畑雅人、及位鋭門、及位然斗、及位玲何、大関直樹、安部俊彦、
林秀宣 六兵衛鮨、菊池豊ほか。
2月1日(土)より新宿K's cinemaにて公開。以降、全国順次公開予定。
https://hazukasiihito.shimafilms.com/


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コメント

なつかしい…

20年以上前だったか、仙川のゴスペルというライブハウス(焼肉屋の2階。まだあんのかなあ)で、三上寛先生と合同ライブということで、参戦。友川先生飲みながら弾きかたっているもんだから、グデングデン。なんか、今回の映画タイトル通りでしたことはよく覚えています。

あ、それと以下の一文、間違えています。「以外以外」ネット上の校正は見落としますよね。やっぱりデータは物質化(プリントアウト)しないと、眼に入ってこないというか。

>そういう映像が続くとダラダラして身内やコアなファン以外以外はキツい作品になりがちだが、

Re: なつかしい…

癌堕ムさん、コメントありがとうございます。
御指摘にも感謝します。手直ししました。
仙川のゴスペルでその二人のライヴがありましたか! 僕も90年代前半によく行っていてライヴフロアーは狭くても別階にバーカウンターがあるイイ場所でしたね。
友川さん、最近はどうか確認できていませんが、以前は呑みながらのライヴは通常モードで、確か吉祥寺マンダラⅡでのライヴでステージ上に置いた大ジョッキのチューハイをライヴ中にひっくり返したのを観た記憶もあります。

3/12渋谷Lamama

ご返信どうもです。友川さん、三上さんの黄金ライブはかれこれ30年以上前ですね。ゴスペルそうでした。別階にバーカウンターございました。いつのLIVEか忘れましたが三上寛さんと灰野啓二さんの合奏も壮絶でした。三上さんの演奏曲の山場にだけ、渾身のノイズを挿入するんですね。人を殺せる音というか居合抜きのようでしたよ。それで、三上さんの後ろにいる灰野さんが、ノイズ演奏中に体勢を崩し三上さんにしなだれかかっても、三上さん構わず演奏と。前置き長くなりすぎました。なめさんは表題の上映&LIVE行かれますか? 自分は行きます。

Re: 3/12渋谷Lamama

癌堕ムさん、返信ありがとうございます。
友川さん、三上さん、灰野さんのつながり、僕はその三人のCDをコンスタントにリリースしていたPSFレコードを通じてでした。そう考えてもPSFの主宰者だった生悦住さんの貢献の大きさをあらためて認識させられます。
仙川にあったゴスペルは、あのバーカウンターがライヴ前、最中、後の語らいの場になり、交流が生まれていましたね。
灰野さんのギター、まさに「人を殺せる音というか居合抜き」ですね。特に90年代まではそういうニュアンスが強かったです。三上さんと灰野さんとのステージ上での光景、興味深いです。
ラママのライヴは知りませんでした。なかなかお得なイベントですね。スケジュール表に記しておきます。

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Re: 3/12渋谷Lamama

癌堕ムさん、コメントありがとうございます。
残念ですね。
来月16日に仕切り直しというのはナイスな計らいです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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