WIRE『Mind Hive』
2020-03-01

70年代後半にポスト・パンクの道を切り開いた英国のバンドのWIREの
17作目と言えそうなオリジナル・アルバム。
最近こればっかのへヴィ・ローテーションCDである。
変わってない。
今回はハードコア・パンクみたいな曲こそないが、
70年代の3作や80年代後半~90年代初頭の作品のニュアンスやメロディをキープしながら、
さらに深化している。
ヘヴィ・ロック風のオープニングで驚かせつつまったりした曲で始まり、
軽快でポップな曲に続き、
アップ・テンポの曲やドリーミーな曲へと連なる。
穏やかな前半からいつのまにかヘヴィな後半へと流れ、
混沌とした風情の8分近い曲を経て、
静かな叙情の調べのゆったり曲で締めるWIRE流のドラマチックな展開が見事だ。
簡素極まりない“オカズ”無しのこの飄々としたドラムあってこそWIREと再認識する一方、
あのビートが聴こえてこなくてもWIREとも知らしめる。
過半数の曲で使われるシンセサイザーが本作の色を決定づけているのに加え、
アコースティック・ギター、スタイロフォン、テナー・ギター、オルガン、
そしてゲストによるハーディ・ガーディが優雅な彩りを添える。
ミニマルなテクスチャーの曲をふくらませる緻密に研ぎ澄まされた音作りに惚れ惚れとする。
高音も中低音も非常にクリアーに響いてきて、
鳴らした音がヘッドホンを使わなくてもすべて聞こえてきそうだし。
スピーカーで聴いたら特にベースとドラムの音に全身で痺れるほかない。
ポスト・パンクというよりニューウェイヴという言葉が似合う佇まいの麗しの音色と旋律の中に、
WIREならではの諧謔が息づいている。
プロデュースとミックスも行なったコリン・ニューマン(vo、g)は
シニカルとデリケイトが背中合わせの歌声が光る。
本作の肝となる後半の2曲でリード・ヴォーカルをとったグラハム・ルイス(b他)は、
グロテスクと繊細が背中合わせの喉を震わせる。
二人とも芝居がかったヴォーカルではないからこそ歌心がじんわり溢れ出ている。
こぢんまりとまとまらずにスケールが大きく広がりがあり、
やっぱり深い。
クセになるさすがの一枚。
グレイト!
★WIRE『Mind Hive』(PINK FLAG PF25CD)CD
クールなデザインも音にピッタリの三面デジパック仕様の35分弱9曲入り。
実際のジャケットの文字部分は↑の画像よりやや上の方にデザインされている。
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