なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

愛のために死す at新宿ゴールデン街劇場 5月9日

愛のために死すconvert_20100510164849


既成のアンダーグラウンド・シーンともつるまずに独自の活動展開をしている東京拠点のトリオ・バンド、
愛のために死すがギューンカセットからリリースしたアルバム『部屋と夢』の発売記念単独公演。
↑の画像がそのジャケットである。


愛のために死すは2004年に結成し、
2006年に自主制作ライヴCD-R『Live`418』を発表。
2007年にはPSF RecordsのオムニバスCD『Tokyo Flashback 6』に参加し、
CD-R版に収録のNIRVANAのカヴァー「About A Girl」を外した10曲で『Live`418』もLP化される。

LP『Live`418』の発売元がHoly Mountain Recordsというのも特筆すべきだろう。
SLEEPの二人が結成したOMの最初の2作のリリースで知られている米国のレーベルで、
遠藤ミチロウがプロデュースした83年の7”シングルがベースのONNAのリイシューCDや、
どろんこ雲(DORONCO GUMO)の『Old Punks』のLPも出している。
愛のために死すが、
そういった強烈な面々と共振する“叙情的なデーモン”を宿していることは言うまでもない。

愛のために死すrecohatsuflyer_omote

会場の新宿ゴールデン街劇場はその名のとおり新宿ゴールデン街に居を構える小劇場である。
ゴールデン街の建物の中に入ったのは、
一角に店を構える飲み屋さんのクラクラによく行っていた90年代初頭以来だったが、
まず街の匂いと建物の匂いがたまらない。
新宿ゴールデン街劇場はその名のとおり演劇が催されることが多く、
前後の間隔が狭くて段差のある長椅子状の座席に腰掛けて激しい音のライヴを観るというのもオツなものだ。
入場の手続きからいわゆるスタジオ・ライヴのように自主的に運営。
通常のライヴとは違うそういったことのすべてで開演前から静かに盛り上がっていく。

百人弱の満員のお客さんが固唾を飲んで見守ったこの日は、
オリジナル・メンバーで作詞作曲も手がける大口弦人(vo、g)がほぼヴォーカルに専念。
だがゲストの狩生健志(俺はこんなもんじゃない、cojo他)が全曲で実にいいギターを弾き、
銀塩つばめの端子が曲によってヴァイオリンや口笛で参加した。


愛のために死すのことを書くときにぼくはよく、
NIRVANA/カート・コバーン、不失者/灰野敬二、ガセネタ/山崎春美を引き合いに出す。
“NIRVANA meets 不失者 with 山崎春美”といった佇まいだからだが、
とりわけこの晩はNIRVANAがダブる瞬間が多々あった。

さりげなく自己主張の強い秋永悠のベースと朴訥ながらワイルドな島健太郎のシンプルなドラムも手伝い、
ポップなメロディと歯切れのいいリズムが際立ち、
キャッチーですらあるベーシックな曲のラインがとても印象に残ったからでもある。
しっかりとしたソングライティングの曲に裏打ちされているからこそカオスが浮き彫りになっていた。
NIRVANAをグランジとかオルタナとかのいわゆる洋楽的な文脈から切り離し、
ナマのロックとして捉えると、
日本で呼吸をしている人間たちによるエクストリームなNIRVANA解釈にも見えてきた。

死ぬほどデリケイトになった町田町蔵が『My War』の頃のBLACK FLAGで歌っているような瞬間も。
フロントマンの大口がタイトできちっとした服装で固めてステージに立っていたからでもある。

基本的にはCD『部屋と夢』どおりの抑揚で歌われたが、
同じ歌い方は二度とないと思われるヴォーカルだ。
五線譜と音符と日本語が揺れるぐらいおのれの律動で歌う。
どもりと慟哭が一緒になったみたいな軋みを伴いながら歌い、
レッド・ゾーンを振り切ってスクリームする。

しっかり立ってスタンディング・マイクで歌う大口は、
喉を震わせている最中は声が裏返るように目が裏返る。
小柄なボディをときおり大きく屈曲させ、
へたりこみ、
うなだれる。

時に自虐的で曲と共に崩壊もするヴォーカルだが、
触れたらこわれそうな、
だが決して折れない。
この世の地獄でザックリと割れて火傷を負ったかと思えば、
のどかな日本の風景を想像できるところもある振り幅の大きい曲の中に息づく、
広々として果てしない潔癖な心の荒野の響きに酔いしれた一夜であった。



今まで味わったことのない空気感の中でリフレッシュしたあと会場を出たところで、
Yamashirubeの人に声を掛けられる。
なんかうれしかった。

帰り道の新宿歌舞伎町の路上では、
映画『アヒルの子』の“主演者”でもある小野さやか監督に声を掛けられる。
試写会の会場の受付ですれ違った程度にもかかわらず顔を覚えてもらっていたことにも感激した。

すべてがつながっているとあらためて思った。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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