なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

AS I LAY DYING『The Powerless Rise』

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南カリフォルニアのサンディエゴ出身のメタルコア・バンドが、
昨年制作のDVD『This Is Who We Are』に続いてリリースした5作目にあたるニュー・アルバム。

特定のサークルや身内に甘えず自己鍛錬を積み重ねてないとこういう音は搾り出せない。
だからこそ彼らは完全に飽和状態の“メタルコア横丁”の中で抜きん出たバンドのひとつになっている。
それどころか2007年の前作『An Ocean Between Us』が全米総合チャートの8位にランクインしたから、
もはやアメリカを代表するメタル・バンドといっても過言ではない。
むろんデッチ上げの過剰な宣伝や音楽以外のことで気を引かせることはなく、
音楽そのものの力でここまできた。
『The Powerless Rise』でもおのれに磨きを掛けた響きが聴ける。

前作に引き続き、
KILLSWITCH ENGAGEのリーダーでもある音楽家アダム・デュトキエビッチがプロデュースを行ない、
コリン・リチャードソンがミックスをしている。
アダムはメタルコア界のプロデューサーとしても引っ張りだこで、
メタル/ハードコアに限らず様々な音楽に親しむバランス感覚に長けた音楽センスの持ち主だ。
コリンはDISCHARGEの『Hear Nothing See Nothing Say Nothing』が録音技師としての極初期作品の人で、
セカンド以降のCARCASSや90年代のNAPALM DEATHやメジャー時代のSxOxBもプロデュースし、
一緒に仕事をしたバンドの話を総合すると偏執狂的なまでの緻密な仕上がりに定評がある。
昨年もリリースした個人ユニットのAUSTRIAN DEATH MACHINEの『Double Brutal』もそうだったし、
やろうと思えば何でも一人でやれてしまうリーダーのティム・ランベシス(vo)が、
今回初めてプロデュース等に不参加なのも興味深い。

むろんそういったプロダクションの音作りは仕上げの段階の話で、
まず開かれた意識でじっくり取り組んで厳選した11曲のソングライティングで引き付ける。
適宜ブラスト・ビートも挿入するスラッシーな曲が多く、
AT THE GATESとIN FLAMESのメロディック・デス・メタル・テイストを、
The HAUNTEDの突貫スラッシュ・チューンで“スウェーデン・ミックス”したみたいでもある。

ほぼすべてが速い曲にもかかわらず飽きさせないのは、
各パートのコンビネーションの妙味によるところも大きい。
メタルに限らず何度聴いても発見があるか否かは演奏のアンサンブルで決まるのだ。
両手両足を駆使する終始戦闘状態のドラムと強靭なベース、
ソリッドな音で叙情的に編み上げる2本のギター、
贅肉を削ぎ落として剛直かつデリケイトな咆哮をはじめとするヴォーカルが絡み合う。
適度に入るリリカルなギター・ソロやベーシストのメロディアスな歌唱もパターン化せず、
ナチュラルだからこそ心に響く。

腕力や軍事力に溺れる馬鹿の一つ覚えみたいなゴリ押し単細胞メタルコア/デスコアとは一線を画し、
“引きのセンス”も十分。
だから最近のメタルコアを聴き慣れた耳や、
エクストリーム・メタル系に聴き馴染んだ耳や、
30年以上メタルを聴き疲れた耳のツボも突く。

AS I LAY DYINGというバンド名は、
20世紀の米国を代表する作家ウィリアム・フォークナーの1930年の小説のタイトル、
『As I Lay Dying(邦題:死の床に横たわりて)』をそのまま使っている。
今回の歌詞もいわゆる政治的な内容ではないが、
シリアスな意識の流れのトーンはフォークナー譲りではないか。
ほんとうに政治的なことは人間臭い。

曲はキャッチーだったりするが、
いわゆる反社会的な態度や歌詞とかのバンドを誉め持ち上げるオトナには激しい音だからか黙殺されている。
けどそれは誇るべきことだ。
AS I LAY DYINGのライヴには頭デッカチなヤツはいない。

無機的ではなくオーガニックな胆力のこもった快作である。


★アズ・アイ・レイ・ダイイング『ザ・パワーレス・ライズ』(メタル・ブレード・ジャパン MBCY-1124)CD
CONVERGEのヴォーカルのジェイク・バノンが手がけたアートワークの三つ折り紙ジャケット。
歌詞の和訳付だ。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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