映画『レディオ・バードマン/ディセント・イントゥ・メールストロム』
2020-09-02

1974年結成でオーストラリアを代表するパンク/ロックンロール・バンドの一つの、
RADIO BIRDMANのドキュメンタリー映画。
関係者の話や貴重な映像と写真、それらを補う漫画で綴るオーソドックスな作りだ。
前身バンド結成前後のオーストラリアの状況から丁寧に追っていくが、
彼らと同じくメンバーが長髪で影響を受けたバンドの一つであろうRAMONESの傑作映画
『END OF THE CENTURY』以上にシビアな内容だ。
RADIO BIRDMANの音楽性は、
リーダーのデニス・テック(g)が米国ミシガン州で生まれ育ったことを抜きには語れない。
ミシガン州デトロイトが実質的な活動拠点だったMC5やSTOOGESと
同時代に同じ地域の空気を吸っていたからだ。
MC5だったらセカンドの『Back In The USA』、
「T.V. Eye」をカヴァーしているとはいえSTOOGESなら
Iggy and the STOOGESの『Raw Power』がRADIO BIRDMANに近い。
RADIO BIRDMANが活動停止した80年代初頭にデニスはメンバー2人を引き連れ、
STOOGESのロン・アシュトンや元MC5のデニス・トンプソンとNEW RACEで活動。
2000年代の半ばには、
鍵盤楽器の導入などRADIO BIRDMANからの影響大のHELLACOPTERSを率いる
ニッケ・アンダーソン(IMPERIAL STATE ELECTRIC、LUCIFER)らと共に
デニスはMC5の再編プロジェクトに参加し、
そのMC5(D,K,T)の一員として2004年のサマーソニックで来日公演も行なっている。
話を戻すと、
主要メンバー2人が医大生だったことをはじめするメンバーの背景から、
どういうライヴをやっていたかなどをじっくりと細かく綴っていく。
オーストラリアのパンク系アンダーグラウンド・シーンとの関係も描き、
BIRTHDAY PARTYの前身でニック・ケイヴ在籍のBOYS NEXT DOORや、
RADIO BIRDMANと双璧を成したSAINTSとの微妙な関係も興味深い。
The STALINの先を行くユニークなライヴ・パフォーマンスも繰り広げていたとはいえ、
エキセントリックな立ち振る舞いが売りのバンドではないだけに、
立ち位置の難しい孤高のバンドだとあらためて思わされもする。
話が進むにつれて映画中盤以降に“火花”が激しくなるメンバー間の軋轢が凄まじい。
エゴと非情と不信感と疑心暗鬼が渦巻く“骨肉の争い”で、
一触即発の冷戦状態がずっと続いている様相だ。
再始動のたびにトラブルが起こっているようにも見える。
そういう状態を生々しくハードコアに伝えることを意識したのか、
メンバー以外の談話をほとんど挟み込んでないのもこの映画の特徴だ。
“仲良し倶楽部”みたいなバンドがウソ臭く見えることがあるし、
バンドに限らず“身内”が最大の敵とも思う僕にとっては真実味たっぷりの映画だが、
ここまでくると色々考えさせられて切なくなる。
「バンドメンバーといると家族のようだった。
その関係がおかしくなると余計つらく感じた。
家族や信頼への裏切りだからだ。
本当に傷つく経験だった」
という一メンバーの言葉は、
普遍的な人間ドラマでもある本作のポイントを突き刺す。
リーダーのデニス・テックによる締めの言葉もリアルだ。
★映画『レディオ・バードマン/ディセント・イントゥ・メールストロム』
2018年|オーストラリア映画|109分|BD|
原題:DESCENT INTO THE MAELSTROM © LIVING EYES PTY LTD 2018
監督・製作・編集:ジョナサン・セクエラ
9月11日(金)から東京と大阪で開催されるロック・ドキュメンタリー映画祭
“UNDERDOCS”の中で公開。
http://underdocs.jp/
イベントの上映作品は以下のとおりだ。
『ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーション』
『デソレーション・センター』
『レディオ・バードマン/ディセント・イントゥ・メールストロム』
『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』(以上4作品は日本初公開)
『D.O.A.』
『悪魔とダニエル・ジョンストン』
『AMERICAN HARDCORE』
『ミニットメン:ウィ・ジャム・エコノ』
『ジ・アリンズ/愛すべき最高の家族』
『めだまろん/ザ・レジデンツ・ムービー』
『フェスティバル・エクスプレス』
『地獄に堕ちた野郎ども』
『ザ・デクライン』
『FILMAGE:THE STORY OF DESCENDENTS/ALL』
『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』
『END OF THE CENTURY』
『FUGAZI:INSTRUMENT』
『バッド・ブレインズ/バンド・イン・DC』
『ザ・メタルイヤーズ』
『ギミー・デンジャー』
『ザ・スリッツ:ヒアー・トゥ・ビー・ハード』
『L7:プリテンド・ウィ・アー・デッド』
さらに“番外編”として以下のロック劇映画も上映される。
『ジャームス/狂気の秘密』
『スパイナル・タップ』
『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』
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