なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

つしまみれ『Sex on the Beach』

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東京拠点の女性トリオがリリースしたばかりの約1年ぶりのフル・アルバム。

つしまみれは千葉大学バンドサークルで出会った3人が99年に結成。
やよい(b、cho)の苗字の“つしま”+まり(vo、g)の“ま”+みずえ(ds、cho)の“み”が、
“まみれ”て楽しい音楽をやるから“つしまみれ”というバンド名になる。
本作を含めてこれまでにミニ・アルバムとフル・アルバムを計6枚発表し、
6回のアメリカ・ツアーをはじめとしてライヴ活動も精力的だ。

2004年に弁天レーベルからリリースされたデビュー・アルバム『創造妊娠』は、
ヘンテコな歌とストレンジな曲で彩られていた。
といってもいわゆる不思議ちゃん系とは一線を画して妙に生々しく、
音も“作られた”感じがしなかった。
アルバム・タイトルで一瞬キワモノか?とも思ったが、
キワモノだったら11年も続いてない。

以前少年ナイフの項でも書いたが、
女性だけのバンドは短命に終わりがちだ。
女性バンドの人は男性以上に人生で“犠牲”になるものが多いとも言うから、
長続きさせるには精神的にも肉体的にもかなりエナジーが必要だと思われる。
しかもこれまで、つしまみれは結成以来メンバー・チェンジ無しなのである。

ぼくが知っている限りではそんなに派手な宣伝をしてないし、
いい意味で、知的なメディアがもてはやすようなキャラや音楽性でもない。
みるみるうちに活動規模が大きくなっていったのは、
いい意味での貪欲な姿勢と音楽に対する向上に他ならない。
バンドの求心力になっている“ハングリー精神”を楽しんでいるようにも見える。

そして基本的に変わってない。
つしまみれは真剣だ。


念のために言っておくと新作の『Sex on the Beach』というアルバム・タイトルは、
東京拠点のハードコア・パンク・バンドのFUCK ON THE BEACHとはまったく関係ない。
おいしいカクテルのことである。
ちょっとしたカフェ/バーで飲めるから試してみていただきたい。
一昨年『つしまみれとロックとビアで』というミニ・アルバムをリリースしたことだし、
何気にお酒と縁があるバンドだ。
それはともかくカクテルSex on the Beachみたいに曲によって色々なフルーツの汁が甘く効き、
それでいてガツッ・・・・!とクるルバムなのである。
3D効果じゃないが、
妖しい紫色をベースにした20ページのブックレットを見ながら聴くとさらに効く。

『Sex on the Beach』は日本解釈の“オルタナティヴ・ロック”と言える。
まずなんたって思い切りのいいプレイが痛快だ。
身内やファンの前だけでなく未知のお客の前でもやるツアーで鍛えられているだけに気合が違う。
ギターもベースもドラムもよく前に出ているレコーディング/ミックス/マスタリングも功を奏し、
いい意味でのメジャー感のある音作りで彼女たちのポップ・センスが引き出されている。

けっこうハードな音でグルーヴィでもかなりポップな曲の数々は、
やっぱり女性ならではの柔らかい発想で作られている。
こんなのあり!?と言いたくなるネタいっぱいなのだ。
一種のミクスチャーみたいなのに元のジャンルがわからないぐらいのブレンド・センス。
曲によって色んなことをやっているのに全曲“つしまみれ印”が鳴っている。
必ずしも忙しい曲の展開をしているわけではないが、
マイク・パットンの作る曲からアヴァンギャルド風味を抜いたみたいでもある。
しっかりと発声して伸びやかでストロングなヴォーカルも存在感も大きい。
一見ふざけているような言葉でもストレートな歌い方で姿勢を正されるのであった。

tsushimamire_strobo_shokai_mid.jpg

先行シングル(↑の画像が限定盤のジャケットで通常盤は色違い)になった「ストロボ」は、
つしまみれの異色ナンバーだ。
直球ラブソングである。
王道J-POP・・・・と呼ぶにはピュアすぎる。
こういう曲がヒットするといいなぁと思わせる素敵な曲である。
それに続く曲「J-POP」はRAMONES系のパンク・ロック風に繰り広げるJ-POP批評みたいで、
アナーキーがデビュー・アルバムでやった曲「ロック・スター」みたいなニュアンスもあって痛烈なのだ。

ヴォーカルのまりは「屈折したラブソングをとくとお聞きくださーい!」とのことだが、
他の曲もまっすぐに体当たりするラブソングが多いような。
でも照れがあるのかヘンテコになったりもしている。
「Nezumi Sensation」という曲は、
「(日本語の歌詞で)そのまま収録することによっていろんな大人が怯えてしまって・・・」
珍しく英語の歌詞になったとのことだ。

言葉遊びもたっぷり。
頓知の効いた曲(≠コミック・ソング)にもヤられた。
ハード・ロックちっくでもある曲「おばあちゃんのブラジャー」で、
“ちちバンド ちちバンド ちBURRRRN!!!”のフレーズが繰り返されるところは、
メタル・ファンは苦笑しながら拳を上げてヘッドバンギングしていただきたいところである。

“女性”というよりも“ガールズ”というよりも、
箸が転がっても笑うような“女の子”がアレコレ思う心模様みたいな歌が多いが、
大気圏外っぽい雰囲気もポジティヴなラスト・ナンバーの「人生圏外」には背中が押されるのであった。

なにしろ気取りがない。
だが密かにプライドを感じさせる。
たくましく実は意外と艶っぽい。
耳を傾ければ本気だとわかる。
だから好きだ。

つしまみれは初期の拠点だった千葉LOOKを皮切りに5月23日(日)から日本ツアーに出る。


★つしまみれ『Sex on the Beach』(フライングスター VICB-60055)CD
約46分13曲入り。
ウルフルケイスケも1曲ギターで参加している。


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コメント

イイデスね

つしまみれの歌、音とてもイイデス。ライブも最高です。

きんさん、コメントありがとうございます。
曲も歌詞もすごくユニークなバンドですね。
オトコ的な発想じゃないのも大きいでしょう。
“洋楽”っぽくないこういう音楽のバンドが何度も米国ツアーをしているのも挑戦的で素晴らしいです。
ライヴも楽しみです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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