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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Lou Reed『New York』(デラックス・エディション)

new york


ルー・リードの人気作の一つである1989年リリース作の3CD+DVD+2LPでのリイシュー。
1972年のデビュー作から数えて15作目のオリジナル・アルバムだから、
コンスタントな創作/リリース活動をしていたことを再認識した。
個人的には発売後しばらく最も数多く聴いたアルバムであり、
ルーにしてはわかりやすすぎていつしか最も聴かなくなっていたアルバムだが、
深さを思い知るリイシューである。


打ち込み使ったりラップみたいなこともした前作『Mistrial』(1986年)の反動か、
VELVET UNDERGROUND時代も含めて最もストレートなロック・サウンドのアルバムだ。
フック十分のシンプルな曲オンリー。
ルーには“初心者不可”のアルバムも少なくないが、
リフがはっきりしているから、
ハード・ロック/ヘヴィ・メタルのファンの方も馴染みやすいと思う。
ある意味この作品で一区切りをつけてルーは90年代以降、
エレクトリック・ギター・インプロヴァイザーのアプローチをゆっくり進め、
さらに深遠な世界へと突入していくことになる。

ディスク1の本編は音圧上げすぎずのグレイトなリマスタリングが素晴らしい。
ヴォーカルと演奏のバランスの取れていて、
デリケイトなギターのニュアンスが伝わってくるし、
ルー史上最もストロング・スタイルのサウンドから色気が立ち昇ってもくる。
当時のニューヨーク・ハードコアと共振したかのように映る歌詞も特筆したい。

ディスク2は、
1989年の3~8月の数回分のライヴ音源で一つのコンサートのように編集構成。
むろん音質極上だ。
『New York』の全14曲がアルバムの曲順どおりに並べられているが、
『New York』よりも15分ほど長い約71分の尺になっているのも興味深い。
多少MCが入るとはいえ大きくアレンジを変えているわけではなく、
整然としたテイクをまとめて『New York』を“再現”した趣のCDである。
ドラムはアルバムで叩いたフレッド・マー(元VOIDOIDS)ではなく、
1990年の日本ツアーで叩いたモーリン・タッカー(元VELVET UNDERGROUND)でもなく、
ロバート・メディチが務めている。

ディスク3はアルバム・レコーディング前後のレア音源集。
オフィシャル・リリースでソロ作のこういうブツをほとんど披露してない人だけに貴重で、
曲の骨格がすっぴんのまま聞こえてきて感動的だ、
ラフ・ミックス等は音質極上だし、
制作過程のドキュメンタリー音源は生々しい。
90年代以降のルーのギター・プレイにつながるデリケイトなインストの「The Room」と、
1989年のライヴの「Sweet Jane」「Walk On The Wild Side」で締める。

DVDは約76分の1989年8月13日のライヴがメイン。
1990年にVHSとレーザー・ディスクで発売された『THE NEW YORK ALBUM』の映像だ。
こちらも『New York』の曲をアルバムどおりの曲順で14曲収め、
バンド・メンバーもディスク2と同じだが、
そのCDに入っている公演とは別のライヴである。
もちろん画質音質編集極上で彫りの深い仕上がり。
曲によっては椅子に腰かけてタバコをくゆらせながらプレイするルーはやっぱりクールである。
表情ひとつ変えずにエレクトリック・ギターを弾き語るルーに対し、
戦々恐々とした様子で演奏するバンド・メンバー3人の佇まいも見どころで、
馴れ合い無しの真剣勝負が楽しめる。
映像以外に、
アルバム全曲の24 Bit / 96 kHzのオーディオ・トラックと、
約26分のルーのインタヴュー(音声のみ)も入っている。

そして本編のLPはディスク1と同じリマスタリングの音が使われている。
計57分弱だから無理すれば1枚のLPに収まるポリュームだが、
それだと繊細さも迫力も激減の尺だから2枚組で贅沢にレコードの溝を使った効果ありありで、
死んだ音が目立つ最近製造されたLPの中でも出色の生々しい音の仕上がり。
180グラム重量盤の仕様も相まってサウンドの肉体感が伝わってくるのであった。

16ページのブックレット封入で、
ハード・カヴァー仕様のジャケットの印刷状態もたいへんよろしい丁寧な作りである。
やはり『New York』に入り込んだことがある方なら持っておきたいグレイト・リイシューだ。


★Lou Reed『New York』(SIRE/RHINO R2 628762/603497847556)3CD+DVD+2LP


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コメント

行川さんも書かれているように、最初は聴きこんだんですけど、個人的にもあまり聞かなくなってる1枚ですね。
でもこの文章読んでまた聞きたくなりました。
レビューから力をもらった気がします。
もっと多くな行川さんのレビュー読みたいなと思ってます!

Re: タイトルなし

能年さん、コメントありがとうございます。
個人的には買うフォーマットをLPからCDに切り替えていた時期でCDならではの便利さにもハマってリピートして聴いていました。
今回何年かぶりに聴いてやっぱいいなと。
前作で一休みしたツイン・ギター・バンド体制でこのあと進むきっかけけのアルバムでもあります。
ルーがソロ時代に作った中で最も疾走感のある「There Is No Time」は『Lulu』の曲よりスピード感ありますね。
最近更新を怠ってますが、レヴューがんばります。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
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