なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

RATT『Infestation』

RATT_Infestation_7863_LR.jpg


出身はもっと南のサンディエゴだが、
LAメタルを代表するバンドとして80年代に一世を風靡したRATTの11年ぶりのアルバム。
“享楽メタル”全開の快作である。

●ウォーレン・デ・マルティーニ(g)、
●ボビー・ブロッツァー(ds)、
●スティーヴン・パーシー(vo~2006年に復帰)
というオリジナル・メンバー3人に加え、
●ロビー・クレイン(b~96年からメンバー)、
●カルロス・カヴァーゾ(g~ランディ・ローズの後にQUIET RIOTで弾いたミュージシャン)
という編成だ。


ぼくは80年代にRATTを好んで聴いていたわけではないが、
とりたててRATTを嫌いというわけでもなかった。
“エリート意識”が強くて嫉妬深い政治的なパンク/ハードコア連中に洗脳され、
しばしハード・ロック/ヘヴィ・メタルを遠ざけていたのだ。
やたらと難しい言葉を使って得意がるいわゆる活動家と一緒で、
彼らは結局フツーの一般の人の目線で物を見ることなく思い上がりがはなはだしいだけで、
“個”がないかの如く一様に「メタルは歌詞がくだらないからダメ」と言っていた。

RATTといえば初期のアルバムのエロティックなジャケットが印象的で曲よりもそっちが頭に残っている。
ちょっと調べた限りでは歌詞もそれっぽいというかラヴソングが多い。
自分の洋楽ルーツがAEROSMITHとBOSTONということを思えば、
ラジオやテレビからRATTのポップなハード・ロックンロールが聞こえてきたら理屈抜きにイケる。
でもラヴソングを素直に受け入れなかった80年代の自分は積極的に聴くことはありえなかった。

ぼくも政治を歌えばなんでもオッケー!みたいにも思っていた時期があった。
今でもそういうレコードはかなり買っているが、
ポリティカルとされるパンク/ハードコア・バンドのレコードを90年代にホント山ほど買って、
それっぽい歌詞やアートワークだからといって必ずしも訴えかけてこないことを“学習”した。
結局ヴォーカルや音に切迫感がないと本気に思えなくなった。
音楽そのものがアピールしてこないと心から出てきたものとは思えなくなった。

数年前に発売されたCARCASSのリイシュー盤にプラスされたDVDで、
フロントマンのジェフ・ウォーカーは“名言”を残す。
CRASSにも心酔して活動家だった80年代からジェフは厳格な菜食主義を実践してきたようだが、
実生活で“支障”をきたしてその自分の“規範”をちょっとゆるめたことに関して一言、
「女とヤるためなら何だってやるぜ(笑)」。

正直(≒frank)なヤツが好きだ。


女の歌・・・というよりRATTの場合は女性の歌というニュアンスだろうが、
そんな曲も多いとはいえ、
いい意味で紳士的なのが本作のRATTである。

映画『ウィンター・ソルジャー』のことを書いた時、
“overkill”や“killing machine”といった、
ハード・ロック/ヘヴィ・メタル・ファンにはお馴染みのフレーズが自分の中から湧いてきたのには驚いた。
前者はMOTORHEADの曲名/アルバム名であり、
後者はJUDAS PRIESTの曲名/アルバム名でDEEP PURPLEの「Highway Star」の歌詞にも出てくる。
やっぱりメタルには戦争もイメージさせるに殺伐とした言葉がふさわしいのかもしれないが、
むろんこのアルバムのRATTには無縁の世界だ。

ヴォーカルのスティーヴンの脱退もあったりして90年代以降は迷走していたようだが、
伸び伸びとしたパフォーマンスで生き生きしたサウンドがホント素晴らしい。
恥ずかしくなるほどまっすぐだ。
余計なことを考えず気張って若作りしなくても自分たちらしさを追求したからRATTになった。
昔の曲をセットリストに入れずに本作の曲だけでもツアーできそうなほど全曲恐ろしくクオリティが高い。
メタルとしてロックとして以前に一つの曲として心に引っかかる。
何かの括りの中で捉えずに曲も一つ一つの“個”として向き合うと別な世界が見えてくるのだ。

わかりやすいけど練り込まれているから永遠に聴けそう。
音作りは80年代みたいにリバーブ効かせまくったやつじゃなく、
現代風にタイトで引き締まっている。
パワフルで華麗。
どこをとっても問答無用なほど明快。
キャッチーだが実に腰の強いグルーヴィな音
ブックレットで見られるメンバーのヴィジュアルを見ても気合を感じる。

こういう音楽って知的じゃないとかで馬鹿にされたり差別されたり黙殺されたりもするが、
やっぱり理屈じゃないのだ。
自分の感覚とカラダを信じる。

甘いものが欲しくなったらコレ。
ビター・チョコレートみたいなアルバムだから、
リリースされて1ヶ月経ってもけっこうヘヴィ・ローテーションになっていて怖い。


★ラット『インフェステイション』(ロードランナー・ジャパン RRCY-21364)CD
オリジナル盤のブックレットに加えて、
日本盤は歌詞とその和訳、わかりやすく簡潔で詳細な伊藤政則執筆のライナー付で、
ボーナス・トラック1曲追加。


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コメント

おはようございます

初めまして。ブログいつも楽しみに読ませていただいております。今回のブログは「ハッ!」とさせられました。『良い音楽』にジャンルは関係無いということなんですね?

バカ

ろくに聴いたこともないくせに知ったかぶりで、しまいにはマサ伊藤にヘコリかよ
うすらみっともないにも程がある

JADEさん
コメントありがとうございます。そうですね。
イギリスのパンク/ニューウェイヴ/ハードコア中心で結局は自己保身に過ぎず、リアル・タイムで出会えたイイモノをたくさん逃した80年代前半の自分の悔恨の気持ちもこめて、あちこちで種々雑多なものを紹介しています。
音楽でも何でも“各界”にグレイトな人がいるわけで、対象に対して愛情をもって一生懸命に取り組んでいる“表現者”が好きなのです。

行川様

ご無沙汰してます。噂を聞きつけブログ拝見させていただきました。
「スラッシュ・メタル・ファンはRATTやDOKKENなどポーザー・バンドを聴いてはならん」という不文律を頑に信じ込んでいたためLAメタルには長年中指を立てていたのですが、ここ数年で私もそこらへんのものをちょくちょく聴くようになりました。パンクにとっての仮想敵はメタル全般だったようですが、メタル内でさえ対立の構図があったのは今では懐かしい気がします。

RATTとKORNが同じレーベルにいるという事実も、10年前だったらなかなか考えにくいことですね。

しかしRATTを行川さんがご紹介されるとは驚きであると同時に、文章を読ませていただき「納得」という感じです。

これからもこのサイトを覗かせていただきます。

奥野

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奥野、おまえ働けよ。
広瀬が泣いてるぞ。
でなきゃ雑誌創刊してみな。

奥野さん、実名コメントありがとうございます。
あなたとは“異母兄弟(もちろん父親はレミー)”だから、言わんとすることはよくわかります。だから、ここで書いたジェフ・ウォーカーの話でも盛り上がれるわけです。
最近JUDAS PRIESTの『British Steel』の30周年記念盤のことを書いて、これまた同時代のパンク・ロックとの接点を見出して盛り上がっているところです。

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ジェフ・ウォーカーの話とは「女の子がラザニアを作ってくれたけどヴィーガンだって言えなかった」というやつですね? あれは笑えました。あまりに正直に告白していて(笑)
「BRITISH STEEL」の記事はどこで読めるのでしょうか? 楽しみにしております。

奥野

奥野さん、ジェフの話はそれです。。真面目に言うとヴェジのあるべき姿を見た感じもしたのです。惚れ直しました
「BRITISH STEEL」の記事はその雑誌が出たらここで紹介します。

その場面、DVDで見直しました。ジェフがしれっとした口調で「女とやるためなら・・・」と告白した後、ビルとケンが同意するように爆笑したシーン。(笑) ビル曰く「だからベジタリアンってのは信用ならない」ってわざわざ言わなくてもいいことを自分で言ってるし。(笑) ま、所詮は誰しも人間、そういうもんですよ。ビル、ナイス・コメント(笑)

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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