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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

TAU CROSS『Messengers Of Deception』

TAU CROSS『Messengers Of Deception』


AMEBIXのロブ“ザ・バロン”ミラー(vo、b)のバンドが昨年12月に、
『Pillar Of Fire』から約3年半ぶりにリリースしたサード。

“TAU CROSS復活!”を告げる声と音を聴いているうちに涙が滲んできた。
最近の超ヘビーローテーション・アルバムである。


当初は一昨年8月のリリース予定だった。
にもかかわらず当時の発売元のRELAPSE Recordsはその一か月ほど前に発禁を決定。
ザ・バロンによれば既に完成品状態だったレコードのほぼすべてが“破壊”されたという。
まもなくRELAPSEのサイトからTAU CROSSのバック・カタログとバンド名も削除。
まさに“除名”である。

RELAPSEが発売中止を決定したのは、
オリジナル『Messengers Of Deception』のサンクス・リストのクレジットに
ジェラルド・メニューインの名前を発見したからだ。
メニューインはナチスのホロコーストに関する歴史修正主義者とされることの多い人だが、
ザ・バロンは彼の著作から何らかのインスピレーションを得たようである。
著作を読んだことのない人間がとやかく言う資格はないし、
ヒトラーの『我が闘争』からだってある種のインスピレーションは受ける。
そもそも物事はすべて様々な角度から見ないと偏った視点になる。
ザ・バロンはCRASSの流れをくむ人だからかなり覚悟を決めてクレジットしただろうし、
シーンの“マジョリティ”を敵に回そうが屈しないところで僕は惚れ直した。

色々な話が出てくるにつれて馬鹿馬鹿しい思いが増して僕の中の憤りが加熱し、
何かと白黒つけたがる風潮にまた考えさせられた。
そんな中でザ・バロンが、
メンバーだったアウェイ(VOIVOD)らを“release”したというコメントがとても印象的だった。
自分が叩かれまくるのはともかくメンバーたちを騒動に引きずり込んだ形になったから、
とばっちりを受けた彼らをバンドから“解放”した気持ちだったに違いない。


ザ・バロンはリセットして『Messengers Of Deception』に再び取り組むことを決意。
ジャケットはオリジナル『Messengers Of Deception』のデザインを変更し、
収録曲もオリジナルLPの中の3曲を削除して新たに1曲を加え、
トリオ編成基本で録り直した。
ギタリストとドラマーはクレジットされた名前では“無名”と言えるが、
ザ・バロンのプロジェクト状態での録音とはいえ二人ともTAU CROSSにハマり役だ。
ギタリストが一人になって多少シンプルになったが、
前2作よりKILLING JOKEテイストがやや減って程良くメタリックなリフが目立つ。
ドラマーも前任アウェイの絶妙のリズム・タイミングのパワフルなプレイを見事に継承している。

ミディアム/スロー・テンポのパートはメタル・クラストっぽくもあり、
アップ・テンポでクールに走る曲の数々はパンク・ロック以外の何ものでもない。
オープニングにちょっとしたSE等が入る多彩な曲で物語を編んでいき、
アルペジオやキーボードを適宜挿入して静かな部分を設けながらフック十分。
と同時にスピリチュアルでもある。
AMEBIX時代からの“たそがれメロディ”にも磨きをかけ、
7分を越える曲ではゲストがフィドルとニッケルハルパ(スウェーデンの民族楽器)も挿入し、
ますます胸が締めつけられる。

凄まじいばかりのエナジーに打ちのめされる。
ベーシストを新たに入れてレコーディングした前作とは異なり、
AMEBIX時代から弾いていたザ・バロン自身が再びベースを手にしていることも大きい。
セカンドで物足りなかったのはそこだったし、
意思と意志が宿るあのベースの音がまさにサウンドの筋肉と化している。

ヴォーカルもさらに深い。
渋い喉を激しく震わせるシャウトもさることながら
苦渋と苦汁が滲む歌唱に痺れる。
諦念や達観を感じずにはいられないが、
強靭な音と共振してポジティヴに響く。
ほぼピアノとデュエットの曲は慈悲すら溢れる穏やかな歌もので、
歌心ここに極まれりだ。
ポーズ無しの歌い方だから“真心”の歌声なのである。

オリジナルLPには入れていたのに今回未収録の3曲は
自分の作曲ではなかったからザ・バロンが外したとのことだが、
メンバーだったMISERYのジョン・ミザリーが書いたアルバム・タイトル曲は再録音している。
歌詞もみなディープで、
今回新たに加えた「Babylonian Death Cult」は特に深読みできる。
そもそも不変のタイトル『Messengers Of Deception』からして意味深長だった。

意識に耳を傾けることの大切さをあらためて知る。
音楽の無限の力もあらためて知る。
何よりザ・バロンがますますロックしているのが何よりうれしい。

ウルトラ・グレイト。


★TAU CROSS『Messengers Of Deception』(HERETICAL MUSIC HERCD003)CD
興味深い言い回しの数々からも思いが滲むザ・バロンによるセルフ・ライナーと
歌詞が載ったインサート封入の、
二つ折り紙ジャケット仕様の約50分10曲入り。
無地のインナー・スリーヴ(CD紙袋)付。
実際のジャケットの色合は↑の画像より暗めです。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
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