なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

CATHEDRAL『The Guessing Game』

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87~89年に在籍したNAPALM DEATH時代は、
『Scum』の後半と『From Enslavement To Obliteration』『Mentally Murdered』で歌った、
リー・ドリアンが率いる4人組が5年ぶりに放つ9枚目のオリジナル・アルバム。
レコード会社の担当の方がずっとCATHEDRALに付けてきている、
“ブリティッシュ・ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの守護神!”というキャッチ・コピーに、
“ブリティッシュ・ロックの守護神”とも付け加えたい2枚組である。


DOWNのセカンドを手がけたウォーレン・ライカーが前作に引き続きプロデュースを行ない、
各パートがよく聞こえてきて粘っこくてイイ音が出ている。
約85分13曲入りだが、
そのうち3曲はインストの小曲で他の曲はすべて5~11分というヴォリューム。
じっくりと向き合いたい大作である。
でも様々な情趣と情景を見せてくれて、
押しつけがましくなく曲作りも音作りも風通しがよくて一気に聴けるモンスター・アルバムなのだ。

メロトロン、モーグ・シンセサイザー、アープ・シンセサイザー、オート・ハープ、
サンプリングやフィールド・レコーディングなどの多彩な機材や音源を使ったが、
ヴァイオリンやヴィオラ、ハモンド・オルガン、シタールといった楽器の他は4人のメンバーがプレイ。
前作『The Garden Of Unearthly Delights』収録の27分近くに及ぶ曲「The Garden」の流れを感じつつも、
プログレと呼ぶには異形すぎるフリーキーな13曲のストレンジな光に幻惑されっぱなしだ。

大筋ではドゥーム・メタルながらも
ところによってはポップだし、
たそがれのフォーク・ミュージック、
ジャズやファンクを隠しもっているのはこれまでと同じ。
でも気がふれたかの如く音の針がかなり振り切れており、
ほとんど統合失調状態だ。

MELVINSほど悪乗りの変態行為はせずにブリティッシュ・ロックの紳士的な佇まいながらも、
91年のデビュー・アルバムから彼らの中に脈々と流れる音楽的な倒錯テイストがときおり噴き出す。
実験的ですらある変幻自在なサウンドが妖しいところに誘ってくれる密かに刺激的な作りである。
GENESISとEMERSON, LAKE & PALMER(EL&P)のアルバムの邦題になぞらえれば、
“怪奇骨董音楽箱”“恐怖の頭脳改革”といったフレーズが似合うカオスの雰囲気。
だからもしかしたら“ヘヴィ・メタルのピューリタン”の人は「・・・?」と感じる部分もあるかもしれない。

だが、ノリのいい“CATHEDRAL節”全開のロック・チューンもたくさん入っているし
あくまでもクールなリフで進めるカッコいいヘヴィ・ロックであることを強調しておきたい。

60年代後半から70年代頭に活動していたアイルランドのプログレ/フォーク・バンド、
MELLOW CANDLEの女性ヴォーカリストのアリソン・オドネルが2曲で参加したのも特筆すべきところだ。
ALL ABOUT EVEをはじめとして色々な人がカヴァーしてきたバンドで、
元PAVEMENTのスティーヴン・マルクマスも2003年のアルバム『Pig Lib』で、
名曲「Poet And The Witch」をカヴァー。
というわけでその筋の方々も是非チェックしていただきたいところである。


リー・ドリアンのヴォーカルはナチュラルな歌い方のものも多い。
たおやかで色っぽい表情もたたえて、
これまで以上に歌心を感じさせる。

ぼくにとってリーは特別なアーティスト/ミュージシャンの一人だ。
CRASSが立ち上げたアナーコ・パンク学校”の落第生、いや落ちこぼれ、
いや素晴らしき“はみ出し者”と言うべき永遠の“留年生”として、
CARCASSのジェフ・ウォーカーと共にぼくにとって彼らはキー・パーソンでもある。
ついでに言うとアナーコ系じゃないが政治的パンク/ハードコア・シーン出身のメタル/ロックという点で、
HIGH ON FIREのマット・パイクもその一人。
彼らの音も歌詞も“すごくわかる”。
ニヒリスティックな気持ちに陥りながらも卑屈や傲慢から遠いところに進む彼らのパンクの理念を感じるのだ。

音楽同様に視野が広く開放的なCATHEDRALの歌詞は、
今までも暗喩の手法でそれとなくメッセージ性も託してきたが、
今回いつになく政治的/社会的なニュアンスが漂うフレーズも多い。
「Death Of An Anarchist」という曲もやっている。

特に驚かされるのが12曲目の「Requiem For The Voiceless」。
The SMITHSの「Meat Is Murder」も頭をよぎる牛の鳴き声も聞こえてくるのだが、
動物の立場に成り代わって歌う詞もBLACK SABBATHの「Black Sabbath」の変形風の曲も、
ANTISECTの「Tortured And Abuse」のリメイクみたいな本作随一のドゥーム・ナンバーに仕上げているのだ。
93年のセカンド『The Ethereal Mirror』風にアップテンポとはいえ、
諦観が漂うヴォーカルによってCATHEDRALを省みる曲でアルバムを締めるのも興味深い。

全体的にリー自身の半生を振り返るみたいなトーンの歌詞だが、
前に進むために原点に立ち返って歌ったようにも思える。


重苦しいアルバムではない。
だが確かな念が渦巻いている。

静かなる感動に浸り、
惚れ直した。


★カテドラル『ザ・ゲッシング・ゲーム』(トゥルーパー・エンタテインメント XNTE-00018~9)2CD
ディスク1が40分43秒7曲入り、ディスク2が44分12秒6曲入り。
ポスター・ジャケットで初回プレス盤のみにジャケット・ステッカーが付きピクチャー・ディスク仕様。
もちろん歌詞の和訳付
ロックへの愛に満ちて歌詞にもしっかりと言及した奥野高久執筆のライナーも読み応えあり。
トータル・パッケージとしてグレイト!


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コメント

怪奇骨董音楽箱はGenesisじゃないですか?
ともあれCathedralの新作は素晴らしいですね。
「紳士的な佇まいながらも~倒錯テイストがときおり噴き出す。」笑いましたw

生肉さん、指摘ありがとうございます。助かります! 早速修正しておきます。
ぼくの場合リー・ドリアンのヴォーカルを23年聴いていることになるのですが、今もなお挑戦的で新鮮な作品を発表してくれることにも感動しました。
音楽が自分の中から言葉を引き出してくれると思っています。目が覚めるような音楽を聴いているときほど妙なフレーズが湧いてきて使ってしまいますね。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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