GEROGERIGEGEGE『Uguisudani Apocalypse』
2021-06-30

奇才・山ノ内純太郎が1985年に始めた東京拠点のプロジェクトのGEROGERIGEGEGEが、
鶯谷のためのサウンドトラックとして
2019年にイギリスのTrilogy TapesからリリースしたLPのCDヴァージョン。
オリジナル・フル・アルバムとしては『燃えない灰』(2016年)の次に位置する作品だ。
パンクやノイズをはじめとして
作品やライヴによって“ジャンル”が異なるも根は不変のGEROGERIGEGEGEだが、
今回は最もポピュラリティの高い一枚と言える。
山ノ内が2018年と2019年、そして今年プロデュースした、
計40分強の12トラック入りである。
鶯谷は東京都の街だが、
奥多摩などの山奥ではなく東京23区内にもかかわらず知る人ぞ知る秘境感も漂う。
鶯谷のバー&ライヴ・ハウスのwhat's upのサイトによれば、
新宿、渋谷、品川、東京、上野、池袋らの東京を代表する駅を擁した環状線のJR山手線の中で、
鶯谷駅は1日の乗降客数が最下位とのこと。
本作のアートワークや文字情報にも表れているようにゲイを含む風俗イメージも強いが、
メジャーな新宿歌舞伎町などよりアングラな印象である。
そんな鶯谷の匂いがほのかに香ってくるCDだ。
曲名クレジットはないが、
いわゆるメロディもリズムもわかりやすいフック十分のインスト・ナンバー・オンリー。
“鶯谷地獄変”という邦題もジャケットに載っているが、
哀愁の昭和歌謡ブルースと、
モンド風味のラウンジ・ミュージックやジャズ・ファンク、R&Bのブレンドが基調の作品だ。
NHK FMの伝説的なラジオ番組の“クロスオーバーイレブン”が似合う洒落たムードでありながら、
場末の日本のバーのジュークボックスから流れてくる曲みたいでもある。
歌謡曲色の強い曲をはじめとしてただのカラオケで終わらずディープだし、
大半の曲はポップな味わいではある。
と同時に僕は、
日中戦争~太平洋戦争の傷痍軍人と思しき人たちが“物乞い”のために、
路上でアコーディオンやハーモニカを演奏していた昭和40年代の光景を思い出した。
GEROGERIGEGEGEの“テーマ”の一つの、
虐げられ、差別され、埋もれてしまっているものを浮かび上がらせているようにも聞こえる。
すべて楽曲クオリティが高く、
曲によっては尺八っぽい音が聞こえてくるなどさりげなくアレンジに工夫を施し、
いわゆる“ちゃんとした音楽”ではある。
にもかかわらず、
いや、だからこそ、いかがわしい。
ちょい渋くて粋で根がパンクで気の利いたクラブのDJプレイみたいな作りで、
さすがのセンスの一枚だ。
★ゲロゲリゲゲゲ『ウグイスダニ アポカリプス』(VIS A VIS AUDIO ARTS VCD41)CD
2016年以降のGEROGERIGEGEGEヒストリー付。
CD盤面の山手線路線図デザインも微笑ましい。
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