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なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ザ・パブリック・イメージ・イズ・ロットン』

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SEX PISTOLS脱退まもなく始めたPUBLIC IMAGE LTD.(PiL)の歴史を追いながら、
ジョン・ライドン(≒ジョニー・ロットン)の半生を丁寧に綴ったドキュメンタリー。
新規取材中心の本人と関係者の証言や過去映像と写真で進めるオーソドックスな作りで、
容赦のない発言もリアリティを高めていて“身内”などの狭いサークルを越えてアピールする。
SEX PISTOLSは大好きでもジョン自身やPiLをあまり知らない方にもわかりやすく、
真正面からPiLとジョン・ライドン(vo他)に向き合った佳作である。

字幕監修を担当させてもらったからいち早く何度も観させてもらい、
オフィシャル・サイトのイントロダクションだけでなく
“どこか”で使われる本作関連の長めの原稿も書かせてもらった。
その文章とあまりダブらないようにネタバレ少なく、
映画のポイントを紹介させていただく。

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1978年1月の米国ツアー直後に抜けたSEX PISTOLSでの様々な経験を踏まえ、
PiLを始めるまでに至ったジョンの意識がまず描かれる。
会社を意味する“~LTD.”という名が象徴する初期PiLの特異な姿勢も示す。
そこからPilのヒストリーが綴られていくのだが、
歌詞も含めて早すぎた究極の拷問ドゥーム・チューンの「Theme」で幕を開けるファーストをはじめ、
未知の道を進んでいったがゆえの波乱万丈のリアル・ストーリーにぐいぐい引き込まれていく。
そうした中でPilの中核のジョンのヒストリーと“人間ぶり”が、
幼少期からじっくりと炙り出されていく。

率直なジョンの発言が実にイイ。
オープニング部分でのジョンの言葉の連打に、
しぶとく本音で勝負するジョンの本質の“結論”が表れている。
権力に対する理想と現実のバランス感に長けた発言も見落とさないでいただきたい。
SEX PISTOLS時代から現在まで右も左も関係ないジョンの
ヒューマニズムとリアリズムのブレンドが見て取れる。
ヒッピーを嫌う理由も伝わってくる。

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もちろんジョン本人の発言は大切だし媚びることなく正直だからこそ物議を醸し続ける人なわけだが、
第三者の発言で炙り出されることも多いとわかる見事な編集も特筆したい。
程良くスピード感があってテンポもいいからスイスイ映画に入っていける。
ディテールにもさりげなくこだわっている。
たとえば初代ギタリストのキース・レヴィンがPiLが去る間際にステージで着ていたTシャツの言葉も、
ここでは書けないほど痛烈だから注意して観ていただきたい。

多数登場するとはいえ証言する関係者が厳選され、
冷静にしっかりPilとジョンに対峙したクールな発言で、
ホメるだけでなく馴れ合いを排しているから“人間模様”のリアリティを高めている。
ほとんどが登場している歴代PiLメンバーたちの秘話にやはり痺れる。
もちろんジョンも含めてだが、
特にジャー・ウォブル(b)、キース・レヴィン(g)、マーティン・アトキンス(ds)という
初期メンバーの現在のルックスの違いや変貌は“その後の人生”もリアルに伝えている。

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The POP GROUPのブルース・スミス(ds~元SLITS、RIP RIG + PANIC)と、
1977年のセカンド『Music For Pleasure』の頃DAMNEDのメンバーだったルー・エドモンズ(g他)らの、
現メンバーの話も興味深い。
他界しているから新規インタヴューはないが、
MAGAZINESiouxsie and the BANSHEESでも活躍したジョン・マッギオーク(g)のことにも
“悲劇”含めて時間を割いているのも嬉しい。

以上の3人が揃っていたアルバムは1987年の6作目『Happy?』だけだが、
ジョンも含めてパンク~ポスト・パンクの歴史の流れが集約されているから、
80年代後半以降のPilを彩るメンバー構成にはちょっとした感動を覚える。
PiL加入前にジョン・マッギオークが提示した演奏は
その後のニュー・ウェイヴのギター・サウンドに影響が大きかったが、
マッギオークがPiLをコピーしていたことを知るに、
オリジナル・ギタリストのキース・レヴィンがポスト・パンクのデリケイトなギターのルーツともわかる。

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時間軸を少し戻すと5作目の『Album』(1986年)は、
90年代以降のポスト・メタル・サウンドの質感を導いたと言っても過言ではない。
メンバーになったわけではないが、
『Album』にプロデュースと作曲とベース演奏で貢献したビル・ラズウェル(談話のみ)と、
そのアルバムでドラムを叩いた元CREAMのジンジャー・ベイカーも登場する。

ドン・レッツやヴィヴィアン・ゴールドマン、マネージャーも生の声を伝えているが、
サーストン・ムーア(SONIC YOUTH)、フリー(RED HOT CHILI PEPPERS)、
アダム・ホロヴィッツ(BEASTIE BOYS)、MOBYが
“外部ミュージシャン代表”として発言。
米国のポスト・パンク/オルタナティヴ・ロックへのPiLの影響を物語るが、
今回もツボを突くトークが冴えるサーストンはもちろんのこと、
フリーが“決断”によってはロックの歴史が違ったものになっていた衝撃!の証言もしている。

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日本関連の映像が随所で使われているところも嬉しい。
特にライヴ盤『Live In Tokyo』にもなった1983年の初の日本ツアーは
PiLとジョンの活動のターニング・ポイントになっただけに時間を割き、
ポール・マッカートニーを引用したところにも当時の外タレ来日事情が表れていて面白い。

新規インタヴューはもちろん鮮明な映像だが、
画質イマイチでもポイントになる昔のライヴやインタヴュー映像をガンガン織り込んだことで
生々しい仕上がりに一役買っている。
ファッション等の違いから察するにジョンに対しては数回取材撮影を行なったと思われるが、
幼少期も含めてジョンと家族との関係性が本作の“裏の肝”である。
ジョンとかなり年上の“妻”のノラの娘がSLITSのアリ・アップだったことなど、
色々と運命を感じさせる。
とにかく、気難しいイメージのジョンの人間味が滲み出している映画なのだ。

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1978年のデビュー・シングル「Public Image」をはじめとして
書いた時のジョンの心情が表れている曲が多いから、
日本語字幕で表示される歌詞の和訳も映画の流れをとらえるのにありがたい。
数曲ピックアップして歌詞のモチーフが説明されるのもジョンの意識理解の手助けになる。

ほんと見どころ満載。
この映画で1万字でも2万字でも楽勝で書ける。
稀代の皮肉屋ほど、いや、だからこそ純な人間ということもよくわかる。
観たらジョン・ライドンとPiLをますます好きになり、
過去のアルバムやシングルを引っ張り出して聴き直したくなること間違いナシだ。

(c) PiL Official Ltd (photography_ Tomohiro Noritsune left to right_ Lu Edmonds John Lydon Scott Firth Bruce Smith)
(c) PiL Official Ltd (photography_ Tomohiro Noritsune left to right_ Lu Edmonds John Lydon Scott Firth Bruce Smith)
<現メンバー>

これまたエンドロールが始まっても席を立たないように。
全体の流れから外れそうで本編から外されたとも想像できる対面シーンがあり、
ワシントンDCハードコア・シーンの某“親玉”にジョンが話しかけた言葉にも爆笑だ。

あ、そうそう、インタヴュー中にジョンが飲んでいるビールの銘柄にも注目。
これは2017年の映画だから“先見の明”があった。
さすがである。

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★映画『ザ・パブリック・イメージ・イズ・ロットン』
2017年/アメリカ/英語/105分/カラー・モノクロ/5.1ch
監督:タバート・フィーラー
出演:ジョン・ライドン/ジャー・ウォブル/キース・レヴィン/ジム・ウォーカー/
マーティン・アトキンス/サム・ウラノ/ピート・ジョーンズ/ルイ・ベルナルディ/
ジェビン・ブルーニ/ジンジャー・ベイカー/ルー・エドモンズ/アラン・ディアス/
ブルース・スミス(ザ・ポップ・グループ/ザ・スリッツ)/ジョン・マッギオーク/
ドン・レッツ、ヴィヴィアン・ゴールドマン、ジュリアン・テンプル、
スコット・ファース/ジョン・ランボー・スティーヴンス/モビー/
サーストン・ムーア(ソニック・ユース)/アダム・ホロヴィッツ(ビースティ・ボーイズ)/
フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、他。
© 2017 Follow The Motion LLC All Rights Reserved.
http://www.curiouscope.jp/PiLdocumentary/
8月14日(土)より東京・新宿K’s cinemaにて公開。以降、全国順次公開。


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コメント

ジョニーロットンの精神でパンク本来の姿を取り戻す!皆様と共に総力で!

この映画は私が2年くらい前から国内での上映を待ち望んでいた映画です。公開に関して関与された皆様、そして日本語字幕の監修と公式サイトのイントロダクションを担当してくださった行川先生、お疲れ様でした、ありがとうございました。行川先生には末永くパンクを担当して頂けたら幸いです。

Re: ジョニーロットンの精神でパンク本来の姿を取り戻す!皆様と共に総力で!

余分三兄弟+さん、コメントありがとうございます。
関心を持っていただき、こちらこそ感謝します。
期待して間違いない映画ですので、よろしくお願いします。

日本て唯一の音楽文士&パンクの弁護人はなめ様

ネタバレ含みますが映画「グレイトロックンロールスィンドル」のピストルズラストライブではロットンが「騙されてる気分はどうだい」と訳されてる部分が本作では「裏切られた気分はどうだい」に変わってました。なめ様の監修による所が大きいのでしょうか?
あと86以降のライブ場面でライドンが妨害者に「俺はお前らみたいな偽パンクが大っ嫌いだ」と言ってる場面が1番良かったです。

Re: 日本て唯一の音楽文士&パンクの弁護人はなめ様

余分三兄弟+さん、コメントありがとうございます。
<「騙されてる気分はどうだい」と訳されてる部分が本作では「裏切られた気分はどうだい」に変わってました。>
の部分は、字幕担当の方の解釈です。ストレートに訳すと一般的に知られている「騙されてる気分はどうだい」になるでしょうが、今回の訳の方がジョンの気持のニュアンスに近いと僕も思います。
「俺はお前らみたいな偽パンクが大っ嫌いだ」みたいな言葉は僕の解釈も入っていたかも・・・「老いぼれパンクども」みたいな部分は僕の監修でそう変えてもらいました。
細かい部分までチェックして観ていただいたことに感謝します。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

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