なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Christopher Amott『Follow Your Heart』

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スウェーデンの“メロディック・エクスリーム・メタル・バンド”ARCH ENEMYのギタリストの一人である、
クリストファー・アモットのソロ・デビュー作。
FIREBIRD/SPIRITUAL BEGGARSのラドウィッグ・ウィット(ds)の他に、
ベース奏者とキーボード奏者がサポートしている他は
ヴォーカルとギターとキーボードの一部と作詞作曲をクリストファーが手がけている。

だがこれはヘヴィ・メタル・アルバムではない。
驚きの“歌ものアルバム”なのだ。


ARCH ENEMYは兄のマイケル・アモットが目立つが、
クリストファーの方が好きというファンも少なくない。
意外なところでは“ブラスト・コア・バンド”DIE YOU BASTARD!のギタリストもその一人で、
ギターのテクニックもさることながら彼の音楽的な多様性にもインスパイアされている人も多いだろう。
SPIRITUAL BEGGARSも含めてバンドのリーダーだから“政治家的な資質”も要求されるマイケルと違い、
芸術家肌のクリストファーの魅力も十分に味わえる。

BAD COMPANYを思わせる曲もあるとはいえ静かなタッチの曲も多く、
ブラジル音楽っぽいリズムも使ったフォーク風の曲もあったりして、
全体的には麗しい“ソフト・ブルース”とでも言いたい。
マイケル・マクドナルドがリーダーだったAOR時代のDOOBIE BROTHERSや、
あるいは10CCのマジカルなポップ・チューンも曲によっては思い浮かべたりする。

言うまでもなく演奏者としても魅力的だ。
比較的ハード・ロック寄りの曲では伸びやかなギター・ソロも聴けるが、
歌に寄り添うギターは曲に潤いを与えるために弾かれ、
派手な演奏はほとんどないとはいえさりげなくテクニックを覗かせてやわらかい音を紡ぎだす。
光が見える繊細な音作りも素晴らしいから、
淡いサイケデリック・ロックの表情も覗かせる。

自身のソロ・プロジェクト・バンドARMAGEDDONの『Three』でリード・ヴォーカルをとっていたが、
このアルバムでの歌声はギターと同じくデリケイトそのものだ。
「Tibet」「Holy Mountain」「Kilimanjaro」「In The Pale Moonlight」「Space Song」など、
高いところや広いところをイメージする曲名が多く、
一時突然ARCH ENEMYを辞めたときのキャラを思えば“放浪”にも近い自由な旅の光景にも思える。
クリストファーの方がポップでわかりやすいとはいえ心模様の描き方や歌声が、
ジョン・フルシアンテ(元RED HOT CHILI PEPPERS)の歌ものアルバムに通じるといっても過言ではない。
その筋のファンの方々にも耳を傾けていただきたいほどだし、
このクオリティの高い音とこのポピュラリティの高い曲は一般の音楽ファンにも届くことを願う。

シンガーソングライターとしての才覚をたっぷりと見せてくれているアルバムだが、
もうひとつ特筆すべきことがある。
デジパックのジャケットと8ページのブックレットの絵をクリストファーが自ら描いているのだ。
アウトサイダー・アートのような画風が実に強烈で展覧会があったら是非足を運びたい。

クリストファー・アモットというアーティストの無限の可能性を信じるのは、
ぼくだけではないだろう。


★クリストファー・アモット『フォロウ・ユア・ハート』(トゥルーパー・エンタテインメント XNTE-00010)CD
歌詞の和訳付。


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コメント

はじめまして。
行川さんの文章を見て育ったので
とても興味深くブログ読んでます。
ISIS解散、超ショックでした…。

プヤ猫さん、書き込みありがとうございます。
ぼくも大ショックでした。
最初の12”EPからリアル・タイムで進化を見てきて、日本盤リリース元の方に新作が出るたびにライナーも書かせてもらってきて、同時代に生きていることに喜びを感じるバンドのひとつだけに残念です。
しかも3月にあんなライヴを体験した直後だけに・・・逆に言えばあの時点で彼らが“最期の覚悟”を決めていたからこそとんでもないライヴになったとも思えます。
大好きなバンドやミュージシャンの解散や他界の話は大きく心を刺激するためか書きたい欲求がものすごく高まって、比較的最近だとBLUE CHEERのリーダーのディッキー・ピーターソンの死去のときもそうでした。ただ思い出話っぽい内容は今のところここではあえて控えるようにしています。
でもISISのことは、“ケジメの作品”がリリースされたときにでもあらためて書くつもりです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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