fc2ブログ

なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

ナガオクミ『まばたき』

まばたき


神戸拠点のシンガーソングライターの新作。
小泉今日子の「サヨナララ」(1998年の『KYO→』に収録)のソングライターとして知られ、
2000年代初頭からいくつかの形態で作品発表とライヴを続けているが、
これは“KUMI”名義も含むソロ4作目で8年ぶりのリリースとなる5曲入りである。

セルフ・プロデュースで、
尾方伯郎(Minuano)が全曲の編曲と歌詞のない2曲の作曲、様々な楽器の演奏を手掛けている。
全体的には尾方がプレイする鍵盤楽器の音に包まれているが、
歌詞が“躍る”2~4曲目はエレクトリック・ベースの音が鍵を握る仕上がりだ。
中低音が目立つバランスのミックスもポイントで、
耳にやさしい質感のモダンな音作りで仕上げられている。

全5曲で計約11分というヴォリュームだが、
シングルではなくEPと呼びたいCDだ。
1曲目がいわゆるリード・トラックではなくイントロダクション的な曲で、
CD全体の流れがしっかりした構成だからである。
曲間はほとんどなく、いつまにか次の曲に移っている感じで、
全5曲が1曲にも聞こえる。


歌が前に出すぎてない作りも相まってセリフに頼らない物語のようでもあり、
ちょっとしたラヴ・ストーリーもイメージできる純な人間ドラマの短編映画みたいな作品だ。

オープニングの「僕は月を追いかける」はピアノとリズム・プログラミングのインスト。
しっとりミニマルな小曲である。

2曲目の「わたしの青空」は僕にとってシティ・ポップど真ん中。
70年代後半の米国のAORの匂いもちょい漂う音で、
シュガーベイブの香りも漂ってくる。
アコースティック/エレクトリック・ギター、エレクトリック・ベース、ドラムス、チェロ、
ヴァイオリン、ヴィオラ、テナー・サックス、トランペット、フリューゲルホルン、トロンボーン、
フェンダー・ローズ、ピアノ、シンセサイザー、バー・チャイムを11人が演奏。
でもシンプルに聞こえるし、
スウィングする歌とサウンドが共振して溶け合っている。

3曲めの「恋」は1979年のアルバム『Feelin' Summer』あたりの太田裕美も思い起こす音。
これまたシティ・ポップと言えそうだが、
これまたグルーヴィな音が気持ちいい。
こちらはホーンやヴァイオリン等が入らない5人による演奏で、
バックグラウンド・ヴォーカルも高得点である。

4曲目の「ごはん」は3人のバンド演奏のシンプルな音でゆったり歩み、
まもなくシンセサイザーがリードするゴージャスなアレンジで引きこんでいく
ミニマルなテクスチャーながらこれまたシティ・ポップと言えそうだが、
童謡のような人なつこいメロディもナガオクミの魅力だ。

エンディング・ナンバーの「花は君に問いかける」は、
ドラムス、ピアノ、クラヴィネット、エレクトリック・ベースを2人が演奏。
バート・バカラックを思い出すソフト・ロック調の佇まいで、
言葉無く次々と解き放つ声の重ねも魅惑的な反復の佳曲である。


70~80年代の歌謡曲をリアル・タイムで体験したナガオクミならではの、
やさしい日本のポップスだ。
やや高い声域を活かしたナチュラルな初々しい歌唱で、
おくゆかしく粋なポップスである。

彼女のCDのジャケット色はショッキングピンクが多かったが、
今回は薄いピンク色。
淡い気持ちをさりげなく描いたこの作品にピッタリである。
さらに初めて自分自身の写真を表ジャケットに使い、
そこはかとなく自信が感じられる。
ナガオクミにしかできない“はかなくもポップ”な佳作だ。

それにしても『まばたき』、素敵なタイトルではないか。


★ナガオクミ『まばたき』(Hanapira HP-0007)CD
4ページのブックレットが薄手のプラケースに封入された約11分5曲入り。
実際のジャケットの色は↑の画像よりも全体的にピンク寄りです。


スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/2414-7cadc9f8

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (16)
HEAVY ROCK (275)
JOB/WORK (450)
映画 (396)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (58)
METAL/HARDCORE (53)
PUNK/HARDCORE (512)
EXTREME METAL (152)
UNDERGROUND? (199)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (160)
FEMALE SINGER (51)
POPULAR MUSIC (42)
ROCK (101)
本 (13)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

Template by たけやん