なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

イエジー・スコリモフスキ ’60年代傑作選

イエジー


ミニ・シアターでの公開ながらも2009年キネマ旬報誌洋画ベストテンに選出の、
傑作『アンナと過ごした4日間』を手がけた
ポーランドの奇才イエジー・スコリモフスキ監督の60年代の映画4本をまとめて見てきた。
バラで見ても楽しめると思うが、
休憩を挟みつつ一日で立て続けに見て監督の意識の流れがよくわかった気がする。


上映されているのは以下の4本だ。

●『身分証明書』(1964年/モノクロ/75分)
スコリモフスキが監督・脚本・主演の一人3役をこなした長編デビュー作。
役者としても名優ぶりを発揮している男前である。
覗き趣味的な助平心がこの時期に芽生えていた点も特筆したい。

●『不戦勝』(1965年/モノクロ/74分)
前作『身分証明書』の続編的な作品だから、これまた監督自ら主演してボクサー役にも挑戦。
ほとんど“宇宙人”な会話にも幻惑される。

●『バリエラ』(1966年/モノクロ/81分)
ナンセンス極まりない奇想天外な怪作、いや傑作。
紳士淑女が不気味なほど真剣に次から次へとおかしなことをやりまくっている。
背筋が凍って笑い声を出す間を与えないほどおもしろすぎてホント目が離させない。
誤解を恐れずに言えばNHKの『サラリーマンNEO』が時代を逆流して百万倍イカレたかのようだ。

●『手を挙げろ!』(1967年+1981年/モノクロ+カラー/80分)
『不戦勝』の続編的な作品だから、これまた監督自ら主演。
まず『不戦勝』の流れをくむエクストリームなユーモアに磨きを掛けていることを忘れちゃいけない。
感動的なほど明らかにやりすぎである。
と同時にそれまで小出しにしていた政治色も強い。
アウシュヴィッツも絡ませてはいるが、
実質的にソ連(注:ある意味現在のロシアの前身)の支配下にあって政治的な締め付けが激しかった時代に、
スターリンの“巨大奇形肖像画”を描いたことが問題になったのか検閲で上映禁止。
公開が許可された81年に新たに撮ったドキュメンタリー・カラー映像を加えて、
生々しく“リメイク”したものが今回公開されている。


どれも物語性云々だけで楽しむ映画ではない。
不条理にぶっとんでいる。
わかりにくい歌詞を書く人にインタヴューして、
「俺の歌詞をわかろうとする方がオカシイ(笑)」と言われることもあるが、
困惑している客を見てスコリモフスキ監督が陰でほくそえんでいる様子も目に浮かぶ。
そもそも話の筋がわからなくても映像美と“仕掛け”と会話の妙味にヤられる。
ストーリーなんてもんを超越しているのだ。

おかしい映画ばかりだ。
それは風変わりという意味でもあるし、
むろん可笑しいという意味でもある。

『アンナと過ごした4日間』はわかりやすいストーリー性のある映画だったが、
次々と時間軸をズラすしていくような構成とズッコケなユーモアと微妙な変態性は、
初期から育まれたものだったとよくわかった。


UTOPIAのセカンド・アルバムのところでも言及したが、
スコリモフスキ監督の60年代の映画もポーランドの現行のパンク・バンドたちに通じる匂いがある。
特に『手を挙げろ!』は、
女性ヴォーカルのEL BANDA、
特にアコースティックな楽器も多用する今年のセカンドの『Skutki Uboczne』の空気感に近いものを感じた。


信頼できる情報筋の話では、
スコリモフスキ監督の最新作は8月に完成するとのこと。
こちらも実に楽しみである。


★イエジー・スコリモフスキ ‘60年代傑作選
http://www.eiganokuni.com/skolimowski/
6月11日(金)まで渋谷「シアター」イメージフォーラムにて公開。
6月には札幌と名古屋と大阪で、7月には京都でも公開決定!とのこと。
近場の方は是非!


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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