fc2ブログ

なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

HAINO KEIJI & THE HARDY ROCKS『You’re either standing facing me or next to me(きみはぼくの めの「前」にいるのか すぐ「隣」にいるのか)』

HARS.jpg


灰野敬二が英語で“カヴァー”を歌うべく2016年に始めたバンドのスタジオ録音のデビューCD。
メンバーは、
灰野敬二 HAINO KEIJI vocal, harp
川口雅巳 KAWAGUCHI MASAMI guitar
なるけしんご NARUKE SHINGO bass
片野利彦 KATANO TOSHIHIKO drums

アルバムに収めた曲の“原曲”のアーティストは以下のとおりである。
1. Down To The Bones~城卓矢(「骨まで愛して」)
2. Blowin’ In The Wind~ボブ・ディラン
3. Born To Be Wild~STEPPENWOLF
4. Summertime Blues~エディ・コクラン(灰野が大好きなBLUE CHEERヴァージョンも有名)
5. Money (That’s What I Want)~バレット・ストロング(BEATLESヴァージョンが有名)
6. Two Of Us~Kとブルンネン(「何故に二人はここに」)
7. (I Can’t Get No) Satisfaction~ROLLING STONES
8. End Of The Night~DOORS
9. Black Petal~水原弘(「黒い花びら」)
10. Strange Fruit~ビリー・ホリデイ
11. My Generation~The WHO


HARDY ROCKS”という名でライヴをやってきたバンドだが、
今回のCDは“HAINO KEIJI & THE HARDY ROCKS”名義になっている。
灰野+バック・バンドとは言わないが、
ヴォーカル入りの灰野のアルバムとしてはかなりヴォーカルが際立つ仕上がりだから納得。
自身の多くのプロジェクトで演奏しているギターを灰野が弾いてないのもポイントの一つで、
数曲でブルース・ハープを吹いている以外は“歌手”に徹している。

誤解を恐れずに言えば、
プロデューサーでもある灰野が原曲をモチーフに全曲“作曲”もしているようなアルバムだ。
日本語で歌われていた3曲も英語でやっているし、
みんなオリジナル曲に聞こえほどである。
例によって誰にも支配されない我流のリズムで歌っているヴォーカルが
曲に自分の血と肉を注ぎ込んでいる。
一瞬一瞬にケリをつける灰野だけに、
煩悶とも慟哭とも言いかねる一声一声でケリをつけるような発声の“気”のヴォーカルも健在だ。

僕としては“解体”という言葉は使いたくない。
“聞く”というより“聴く”、そして一つ一つの曲にしっかり向き合って耳を傾ければ、
HARDY ROCKSが原曲のテクスチャーを尊重し、最大限の敬意を表して歌い、
演奏していることがビンビン伝わってくる。
原曲に宿るヴァイブレイションを2022年のエナジーで“再生”している。
<曲の“本性”がむき出しになった>というリリース元のサイトの言葉に付け加えるとすれば、
<曲の“本能”をむき出しにした>アルバムでもある。

今回の「(I Can’t Get No) Satisfaction」を聴くと、
灰野がギターを弾いて90年代後半中心に歌っていたトリオ・バンドの哀秘謡を思い出す。
やはり“カヴァー・バンド”だったが、
そちらは原曲が英語の曲も日本語で歌うことがコンセプトの一つであった。
「(I Can’t Get No) Satisfaction」は哀秘謡でもやっていて、
“うまくできない!”と日本語で歌う灰野の声が今も耳から離れない。
ちなみに今回の「(I Can’t Get No) Satisfaction」は哀秘謡ヴァージョンに近い。

その哀秘謡でベーシストを務めていたのがHARDY ROCKSではギタリストの川口雅巳である。
本作のサウンドなどに関しては“灰野P”の意向も強そうだが、
灰野を吸収消化してアップデートした川口のギター・プレイは特筆すべきだ。
中低音が目立つアルバムだからリズム隊二人の演奏もしっかり耳に残り、
いい意味でヴォーカルを立てる演奏でわかりやすい。

エイト・ビートの曲をやっている時の不失者みたいなアレンジでドゥーム・ロック風が多いのも、
ヘヴィ・ロックとしてHARDY ROCKSを楽しむ僕としては大歓迎。
もちろん、灰野ならではの、つんのめる曲も随所に入れているが、
何よりアカペラの曲が絶品だ。

60年代までの曲で固めているのは灰野のルーツだからであろうか。
灰野が好きなONLY ONESやCHAOS UKの曲のHARDY ROCKSヴァージョンも
聴いてみたいものである。


『きみはぼくの めの「前」にいるのか すぐ「隣」にいるのか』というフレーズが、
“邦題”のようにCD盤の表に刻まれている。
ジャケットの表と裏の文字はすべて英語/アルファベット。
“洋楽”を意識して海外盤のLPみたいな体裁でリリースしたかったのかとも想像できるし、
厚手の紙ジャケット自体の作りも昔のメジャー・レーベルの米国盤LPっぽい。
ちなみにインサート等も無しだ。

特に昔はいわゆるライヴが元のアルバムが多かった人だけに
灰野関連のスタジオ録音盤は今も貴重だ。
東京・吉祥寺のGOK SOUNDならではの、
灰野の音源にしてはまとまりのいい録音の仕上がりも本作にピッタリ
灰野が90年代後半によくライヴをやっていた、
吉祥寺のライヴ・ハウスのマンダラⅡで聴いているような音の質感である。

灰野がこれまでリリースした作品の中でも最も取っつきやすい一枚だし、
メリハリの効いたアレンジと音作りで一般のロック・ファンの方にも比較的入っていきやすい。
これから灰野を聴き始める方にもオススメだ。


★HAINO KEIJI & THE HARDY ROCKS『You’re either standing facing me or next to me(きみはぼくの めの「前」にいるのか すぐ「隣」にいるのか)』(P-VINE PCD-28048)CD
約51分11曲入りの厚手の紙ジャケット仕様。


スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/2453-065d0e4b

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
https://www.facebook.com/namekawa.kazuhiko
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (16)
HEAVY ROCK (275)
JOB/WORK (450)
映画 (396)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (58)
METAL/HARDCORE (53)
PUNK/HARDCORE (512)
EXTREME METAL (152)
UNDERGROUND? (199)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (160)
FEMALE SINGER (51)
POPULAR MUSIC (42)
ROCK (101)
本 (13)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

Template by たけやん