なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

BLACK TUSK『Taste The Sin』

TasteTheSinRGB_convert_20100603111151.jpg


米国南部ジョージア州サバンナ出身の“ヘヴィ・ロック・トリオ”のセカンド・アルバム。

結成が2005年だから、
本作のジャケット画を描いたジョン・バゼリーが率いる同郷の盟友BARONESSとほぼ同じ歩みをしている。
厳密に言うとアルバム・リリースなどは彼らの1年遅れぐらいだが、
この『Taste The Sin』で注目が集まるのは必至である。

BARONESSの哀愁の涙を熱で枯らして、
MASTODONのプログレの骨をすべてヘシ折って、
セカンド以降のHIGH ON FIREの獰猛さを思いっきりネジ込んで、
4分以内に凝縮したかの如し。
そんなサウンドをBLACK TUSKは“スワンプ・メタル”と自称しているという。


スワンプ・ロックという言葉はジャンル用語として認知されている。
いわゆるアメリカの土臭いルーツ・ミュージックや伝統的な黒人音楽の影響が強く、
ブルースやゴスペル、R&B、カントリーなどの多彩な要素を取り入れた米国南部のロックを指す。
DELANEY&BONNIEやレオン・ラッセル、ジョー・コッカーなどにより、
70年代初頭から広まっていったようだ。
スワンプ・ロックがもっとブルージーに粘っこく泥臭くなったものがサザン・ロックと言えるし、
サザン・ロックがもっとヘヴィになったものは“サザン・メタル”とも呼ばれる。

じゃあBLACK TUSKはサザン・メタルじゃダメなのかってことにもなるが、
サザン・メタルはブルージーなMOLLY HATCHETあたりを指すからかなり違う。
既に認知されてしまっている言葉も彼らは使いたくなかったのだろう。
そもそもサザン・メタルと呼ぶにはグレイトなまでに混沌としているから、
BLACK TUSKの独自の音楽性を表すための言葉がスワンプ・メタルなのであった。
スワンプ(swamp)は“沼地”“湿地”という意味があり、
湿度の高い彼らのメタル・サウンドの質感そのものだ。
と同時にswampには“圧倒する”“無力にする”という意味もある。
こちらもピッタリではないか。


確かにリフはメタルだが、
よくいう“メタリック”というカッチリした手触りとはちょっと違うのがスワンプ・メタルならでは。
プリミティヴに荒くれているのである。
泥を意味するスラッジ(sludge)コアよりも機動力十分で音が暴れまわる。
性質(たち)の悪い音はクラスティーなパンク・サウンドでもあり、
本編ラストではスラッジ・チューンからハードコア・パンクへとなだれ込む。
スラッシュ・チューンではないにもかかわらず前のめりのスピード感に貫かれており、
レイドバックは死を意味するかのようにドゥーミーなスロー・チューンも慣性のまま勢いがある。

LED ZEPPELINやYARDBIRDSあたりのオールド・ロックからUNSANEまでも動脈注射しつつ、
「メタルもパンクも根が汗臭くて野蛮だからメジャーもインディも“メインストリーム横丁”の鼻つまみモノ、
だったら俺らがまとめて引き受けたるわ!」ってな気概に満ちている。
トリプル・ヴォーカル体制も大きな特徴で、
シャウトと蛮声が入り混じりながらも意味深な短い言葉を掛け合っている。
「罪を味わえ!」と。

それにしてもガラの悪い音だ。
それもそのはず、
ひとクセもふたクセもあるルックスを見よ!
black_tusk_sabbath_convert_20100603115231.jpg
ガッツたんまり根性ありそうである。


ボーナス・トラック「Toe Fry」はBUZZOV-ENのカヴァーというオイシイ曲だ。
BUZZOV-ENは90年代に北カリフォルニアのパンク/ハードコア・シーンを拠点に活動し、
スラッジ・コアの元祖のひとつとしても知られるバンド。
初期のレコード数枚をジョン・イェーツのポリティカルなALLIED Recordingsから出したのも重要だが、
今年RELAPSE Recordsが未発表セッションの『Violence From The Vault』をリリースしている。
BLACK COBRAもカヴァーしているが、
BLACK TUSKの「Toe Fry」もハマりすぎで怖い。
オリジナルと変わりないほど自分らのものにしてしまっている。

これぞ業火のヘヴィ・ロックである。


★ブラック・タスク『テイスト・ザ・シン』(リラプス・ジャパン YSCY-1180)CD
日本盤はボーナス・トラック1曲プラスした11曲入りで歌詞の和訳付。


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コメント

早速

YouTubeで"Embrace the Madness" という曲を聴いてみましたが、これはなかなかの逸材。Unsaneにも通ずる骨太なサウンドに痺れました!アルバムで聴くのが楽しみ。

こんばんは

 音楽の話でなく失礼ですが、今日、ニュースで口蹄疫のせいで殺された牛や豚が何頭も、まるでゴミでも捨てるかのように地中に放り投げられてく現場を見て、腹わたが煮えくり返りました!

>etakuさん
書き込みありがとうございます。
新しいバンドを聴く姿勢もいいですね。確かにUNSANEにも通じる危険性がある音で、本質的に柄が悪い音です。世界中にはエキサイティングなバンドがまだまだたくさん活動しているということですね。

>JADEさん
書き込みありがとうございます。
今回の口蹄疫の問題も色々考えさせられますね。“どうせ殺されるんだから”という気持ちでは済まないですし、遅かれ早かれ“送り出す”仕事とはいえ大切に育ててきた現場の方々の心のダメージも痛いです。

凄いですね。

スワンプ・メタルとは、なんぞや?と思ったのですが、一聴してなるほど!とあまりにもピッタリな表現で恐れいりました。BUZZOV-ENのカヴァーも文句無しにはまってて最高ですね。本当RELAPSEには世界中から素晴らしき暑苦しいバンドが集まってきますね。行川さんがEL ZINEでレヴューを書かれていたSAYYADINAの編集盤もへヴィローテで、1stと2ndは未聴なのですがSOUND POLLUTIONから出てるという事みたいで、その辺りのつながりも面白いです。デスやグラインドだけでなくハードコアの再発にもわりと力を入れてやってくれて個人的には嬉しいかぎりです。RELAPSEの視野の広さと懐の深さっていうのは私自身も凄く感じます。

YUJIさん、書き込みありがとうございます。
スワンプ・メタルという言葉、ちょっと調べたらACID KINGにも使われているようですね。
前にもコメントで書きましたが、かつてEARACHEが犯した過ちを踏まえてRELAPSEは活動している印象もあります。トレンド関係なく細かいジャンル分けが難しい音楽的アウトローのヘヴィ・ミュージック・バンドを今も引き寄せていて、たのもしいです。さらに広いフィールドを求めたりしてここ数年離れてしまったバンドも多い一方、リアル・アンダーグラウンドのレーベルからしたらRELAPSEは“メジャー”な存在みたいです。
RELAPSEの音源を聴いている方がEL ZINEも読んでくれているのは、ぼくもうれしいです。CAPITALIST CASUALTIESが、メタル中心の“MARYLAND DEATHFEST”に出演している時代ですからね。

AKIMBO!

BLACK TUSKやBARONESS周辺と言うのも若干無理がありそうですが、AKIMBOが来日するみたいですね! 行川氏のAKIMBO評が聞きたいです。

JAILBAITさん、書き込みありがとうございます。
AKIMBOの来日は知らなかったです。情報にも感謝です。レコードを買い揃えるほどではないですが、ぼくが持っているAlternative TentaclesのアルバムではMELVIINSをもっとパンク・ロックにしたような印象があります。

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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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