なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

RAINCOATS~アルバムのリイシューと初の日本ツアー

77年にロンドンで結成されたヴァイオリン入りの女性ポスト・パンク/ニューウェイヴ・バンド、
RAINCOATSの最初の3枚のアルバムが、
新規のリマスタリング、
政治性とフェミニズムもナチュラルに溶け込んだ歌詞と英文ライナーの和訳付、
11ページのブックレット綴じ込みの厚手の二つ折り紙ジャケット仕様で、
再発されている。
すべてが丁寧な作りで愛情のこもっているリイシューだ。


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★ザ・レインコーツ『ザ・レインコーツ』(Pヴァイン PCD-22327)CD
79年発表のファースト・アルバム。

彼女たちと一緒にプロデュースしたのは、
RED KRAYOLAのメイヨ・トンプソンとリリース元のROUGH TRADEの主宰者ジェフ・トラヴィス。
STIFF LITTLE FINGERSのファースト・アルバムを彼らがプロデュースしたのは意外性もあったが、
RED KRAYOLA(RED CRAYOLA)の流れも感じさせるこちらはど真ん中だろう。
無邪気というにはあまりにもインテリジェントな、
崩れ落ちそうでいて強い微妙&絶妙のバランスのスカスカの音と瑞々しい歌がたまらない。
KINKSの「Lora」のカヴァーもヴァイオリンを活かしている。
当時のドラマーはSLITSのオリジナル・メンバーだったパームオリーヴ。
彼女がドラムを叩いていた頃の初期SLITSはアルバムとは違ってパンク・ロックだったから、
やっぱり『ザ・レインコーツ』もパンク・ロックの色を残すパワフルなサウンドなのだ。
元X RAY SPEXのローラ・ロジックが1曲でサックスを吹いており、
女性のみで演奏した唯一のアルバムでもある。

しかもエンハンスドCDになっていて、
ライヴ(ポーランドのワルシャワと79年のロンドン)の計3~4曲のライヴと、
デビュー・シングル「Fairytale In The Supermarket」のミュージック・ビデオがPC等で見られる。
特にニック・ターナー(後にLORDS OF NEW CHURCH)がドラムを叩いたポーランドのライヴ
(内ジャケットには77年4月とクレジットされているが映像のテロップの78年が正しいと思われる)は、
ピュアなパンク・ロックで失神モノののカッコよさだ。

アナ・ダ・シルヴァ(vo、g)とジーナ・バーチ(vo、b、g)とメイヨ・トンプソン、
そして93年執筆のカート・コバーン(NIRVANA)のライナー付。
日本盤のみオリジナルLPの曲順を尊重して「Fairytale In The Supermarket」が最後に追加された。
むろんマスターピースである。


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★ザ・レインコーツ『オディシェイプ』(Pヴァイン PCD-22328)CD
81年発表のセカンド・アルバム。

パームオリーヴが去り、
当時THIS HEATのチャールズ・ヘイワード、
ジョー・ストラマーの101’ersやPILの『Metal Box』でも演奏したリチャード・ドゥダンスキー、
当時レーベル・メイトだったロバート・ワイアットがドラム・パートをサポート。
ただし彼らのウェイトは必ずしも高くなくてあくまでもワン・ポイントでの参加で、
バンドのドラマー不在だからこそ“ロックンロールの様式”から解き放たれたアルバムに仕上がっている。

パンク・ロックの音はほとんどなく極端に音数が減って静かで内省的なサウンドだ。
音も曲もヴォーカルも原型を留めない形で様々な民俗音楽やレゲエなどをブレンド。
ダブの影響も大きくゲストたちのおくゆかしいパーカッションも目立つ。
どうやって作ったのだろうと思う斬新な曲ばかりで緊張感があり確かに実験的でもあるアルバムだが、
どの曲からもクールな歌が聞こえてきて、
広がりある空間の中でアコースティックな肌触りの音が生々しく息をしている。
子供の心のまま大人の女性の佇まいだから、
女性を含むニューウェイヴ系バンドへの影響は大きいと思われる。
ロックンロールのスタイルから自由でありながらもいい意味でやっぱりロックを感じるのは、
ロックが本来雑食性のものだからであり、
なによりRAINCOATSの意志がロックだからに他ならない。

ジーナ・バーチとチャールズ・ヘイワード、
93年執筆のキム・ゴードン(SONIC YOUTH)のライナー付。


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★ザ・レインコーツ『ムーヴィング』(Pヴァイン PCD-22329)CD
84年発表のサード・アルバム。

『オディシェイプ』での意欲的な試みを踏まえつつ視界が開けたサウンドになっている。
なにかふっきれたみたいなのだ。
レゲエ、ファンク、ジャズ、アフリカン・ミュージック、ケイジャン・ミュージックなどが溶け込み、
もちろんふつうのそれっぽいスタイルとはぜんぜん違うが、
このアルバムではけっこう元ジャンルの原型を留めている。
「できた曲がレゲエになったけどこのままでいこうよ」という雰囲気なのである。

ヴォーカルもたおやかでポップ。
やさしいグルーヴがある。
音に元気がある。
パーカッションやホーンなどのゲストも多数だが、
当時のRAINCOATS三人娘の一人だったヴィッキー・アスピナルが、
それまででお馴染みのヴァイオリン(+歌)だけではなくオルガンやピアノも弾いたところもポイント。
正式メンバーではないにせよ、
前作の一部でドラムを叩いたリチャード・ドゥダンスキーが全面参加して足腰がしっかりしたのも大きい。
いちばんリズミカルで、
いちばんメロディアスで、
しあわせになれるアルバム。
でもこのあと10年近くお休みするのもなんとなくわかるアルバムだ。

メンバーの意向によりオリジナルLPの4曲を削り、
シングルの「No One's Little Girl」を加えて曲順も93年のCD化のものにほぼ準じつつ、
そのB面曲だったSLY & The FAMILY STONEの「Running Away」のカヴァーも初めて追加。
より焦点の絞られた10曲入りになった。
ジャケットの色も変わっている。
2010年1月執筆のアナ・ダ・シルヴァとヴィッキー・アスピナル、
93年10月執筆のアンジャリ(VOODOO QUEENS)とデリア(MAMBO TAXI)のライナー付。
個人的にも愛聴盤で何回も聴ける埋もれた名盤である。


raincoats.jpg

そんなRAINCOATSが今月の16日(水)から19日(土)まで初の日本ツアーを決行!
↓のコメントでも書いたが、
http://www.contrarede.com/interviews/raincoarts.html
RED KRAYOLA with ART & LANGUAGEの最新作『Five American Portraits』でも、
ジーナ・バーチの元気な姿が聴けたことだし期待大である。
来日メンバーはアナ・ダ・シルヴァ (vo、g)とジーナ・バーチ (vo、b、g)のオリジナル・メンバーに加え、
96年の目下の最新アルバムの4作目『Looking in the Shadows』にも参加していたアン・ウッド(vln, vo)、そしてジャン・マルク・ブティ(ds)。

日程等の詳細は↓を参照願います。
http://www.contrarede.com/event/event_raincoats.html

↓では日本語通訳付で最新インタヴューが見られます。
http://www.contrarede.com/interviews/raincoarts_skype.html


ほんとうに楽しみだ。


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コメント

レインコーツ奇跡の初来日・・・これはもはや事件ですね!
行川さんのライブ・レポート楽しみにしています

ところでもう一つの事件である
リップ・クリームの復活ライブには
行川さんは行かれるのですか?

ゾーン・トリッパーさん、書き込みありがとうございます。
今やることたくさんあるのでレインコーツのライヴ・レポートは書かないかもしれません。スミマセン。書くとしたら日にちが経ってからになりそうです。
たぶん昔一番観た回数の多いハードコア・パンク・バンドではありますが、リップクリームのは今のところ行く予定はないです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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