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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

非常階段『蔵六の奇病』、INCAPACITANTS『Feedback Of N.M.S.』 LPリイシュー

非常階段
昨年秋にイタリアのURASHIMA Recordsからリイシューされた2タイトルのLP。
どちらもたいへんていねいな作りの再発だ。


非常階段の『蔵六の奇病』は1982年にリリースされたデビュー・アルバム。

今までCDしか聴いたことがないアルバムだったから、
レコードならではの彫りの深い音にワクワクする。
オープニング・ナンバーのヴォイス・パフォーマンスも生々しいことこの上ない。
2曲目も音の奥行きが格別である。
スペーシーなインプロヴィゼイションだが、
こうやって聴いてみると、やっぱりロックだし、
ハード・ロックから派生したノイズだし、
“HR/HM”と記号化される前の本質的にハードなロックだ。
3曲は原始的クラウト・ロックでもあり、
ポップなミニマル・ミュージックでもある。
4曲目以降もダイナミズムたんまりで、
ドラム入りの曲はフリー・ジャズとハード・ロックの邂逅だ。

A面とB面とで途中ひっくり返して聴くLPだと、
全体の構成を考慮した編集の妙味に気づかされる。
そして何よりLPだとジャケットに描かれた日野日出志の画が格段に映える。
今回の印刷は侘び寂びの効いた味わい深い仕上がりで、
手作り感あふれる雑然とした裏ジャケットとのコントラストも面白い。

4ページの“ライヴ・フォトブック”と“復刻インサート”、
リーダーのJOJO広重(エレクトック・ギター)が昨年8月に執筆したライナー付。


インキャパシタンツ
非常階段にも在籍するT.ミカワが始めたINCAPACITANTSの『Feedback Of N.M.S.』は、
1991年に日本のALCHEMY Recordsからリリースされた2枚目の音盤。
F.コサカイ加入後の初のアルバムでもある。
当時はCDのみでのリリースで
1曲目の「Curse Of Ceauşescu」はもちろん一続きの一曲として収録されていたが、
29分超の長尺であった。
その長さだとLP片面だけに全部収めると音質的にかなりきびくしくなりそうだから
(LP片面に30分前後収録するのは
物理的な問題でダイナミズムと迫力に欠ける音質になりがち)
今回のLPはA面とB面とに分割されているが、
違和感なくA面からB面にひっくり返して“続き”を楽しめる。

なにしろ元気だ。
肝っ玉の太い豪胆ノイズである。
と同時にヴォイスを聴いていると阿鼻叫喚のようでオチャメな味わいも、
レコードならではの膨張度で増幅なのだ。

コサカイによれば、
超辛口で知られたPSF Records/モダ~ンミュージックの故・生悦住英夫オーナーが
「ノイズでガレージをやってるよ!」とホメたそうだが、
言い得て妙である。

ギターではなくエレクトロニクスによるガレージ・パンクと言っても過言ではない
ドライヴ感とスピード感やかましい“ロックンロール・ノイズ”だから痛快爽快アガるアガる!
飲めや歌えやの宴ノイズにも聞こえる。
ウイスキーやウォッカをロックやストレートで、
いややっぱり日本酒で、喉ならぬ鼓膜が焼けつく熱き味わい。
脳髄に響くノイズであり、
誤解を畏れずに言えば思いっきり粗削りのrawサイケデリック・ノイズに聞こえる。

それにしても
収録曲のタイトルの“Ceaușescu”という言葉は、
強権体制を敷くも本作リリースの少し前に処刑された東欧ルーマニアの大統領チャウシェスクを指す、
というのは深読みだろうか。
無慈悲な響きだからそう思ったりもする。

LPで大きくなるも見事な印刷により生々しい匂いが鼻を突く表と裏のジャケットがまた意味深だ。
世の中的にはこういう“音楽”は“不許可”なのか?と皮肉ったと解釈するのは深読みだろうが、
ギリギリの状況下に置かれた兵士たちの心象風景のようでもあり、
すべてを焦土にしてしまうかのようなノイズの波状攻撃は、ナパーム弾をもイメージする。

オリジナルCDのブックレットに印刷されていたT. 坂口のイラストとコメントを“大判カード”4枚に復刻し、
坂口が昨年書いたライナーの日本語版と英語版の計2枚のカードも付いている。


★非常階段『蔵六の奇病』(URASHIMA UMA 164)LP
★INCAPACITANTS『Feedback Of N.M.S.』(URASHIMA UMA 163)2LP


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
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