AD(山崎昭典 × drowsiness)feat. 鈴木昭男、安田敦美『たゆたい(Ta Yu Ta I)』
2023-03-18

京都府丹後半島在住の山崎昭典と東京のdrowsinessという
二人のギタリスト・作曲家のユニットのADがリリースしたばかり新作CD。
2001~2003年に山崎がアシスタントをしていた“サウンド・アーティスト”鈴木昭男と、
シンガーの安田敦美をフィーチャーした、
計37分弱の6曲入りである。
二人のギタリストの音はたいへんシンプルで静謐。
二人で弾いているとは思えないほどである。
いわゆるトラッドもイメージされるが、
特に後半のプレイは僕にとってミニマルな“ロック”で、
木漏れ日も目に浮かぶポジティヴな風景が広がっていく流れだ。
“Stone Flute”“Analapos”“Glass Harmonica”で全曲に参加したその鈴木の演奏は、
クレジットを確認しなければヴォーカルと錯覚するほど“歌”に聞こえる。
時に官能的なほど生々しく、
今まで耳にしたことのない音に身が引き締まる。
2曲で放つ安田の“ヴォイス”はやっぱり肉声ならではの確かな歌だ。
言葉を発しているのかどうかはわからないが、
歌詞の意味性を超えた響きで覚醒され、
ラスト・ナンバーにおける声は蠱惑的で特に魅せられる。
「祝吹 Shukusui」「潺 Seseragi」「時乃器械 Time Machine」「芽吹 Mebuki」「庭楽 Teiraku」
「紡奏士 Bōsōshi」といった曲名からもイメージが広がる。
ある意味、俗世間から離れているのかもしれないが、
自然の音・・・・いや音楽である。
マスタリングを担当したのは宇都宮泰。
多方面で活躍されている鬼才だが、
山崎のフェイスブックによれば宇都宮には“音処理やミックス指導”もしていただいたとのこと。
あたたかくも透徹した音像に目が覚めるばかりだ。
静かなプレイの時の灰野敬二に通じる研ぎ澄まされたサイケデリック・フィーリングを感じるのも、
僕だけではないだろう。
全編、まさに『たゆたい』というアルバム・タイトルそのものの空気感ながら、
揺るぎなき佳作である。
★AD(山崎昭典 × drowsiness)feat. 鈴木昭男、安田敦美『たゆたい(Ta Yu Ta I)』(HOREN MIMI-030)CD
中山晃子のアートワーク、
SWARRRMの諸作でも知られる大野雅彦(SOLMANIA)のデザインの二つ折り紙ジャケット仕様。
鈴木昭男、山崎昭典、drowsiness、中山晃子、デヴィッド・トゥープ、山田唯雄、内橋和久、畠中実、
伊東篤宏のライナーとその英訳が載った三つ折りインサートも丁寧な作りである。
帯付き。
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