なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

RAINCOATS at下北沢BASEMENT BAR 6月19日

Looking in the Shadows大


ロンドン出身のポスト・パンク/ニューウェイヴ・バンドRAINCOATSの初の日本ツアー最終日に行ってきた。
彼女たちのリイシュー盤について書いたばかりだが、
どうしても書きたくなったからまたRAINCOATSを書かせていただく。

BASEMENT BARは小さなライヴ・ハウスだから超満員。
無理してでも渋谷O-WESTの初日に行っておけばよかった・・・と開演前はちょっとばかり後悔したが、
満員電車の中みたいな状態で観たライヴは記憶に残るという自分の今までの通例どおり、
RAINCOATSが歌い演奏するたびに淡い熱気が揺れるアットホームで素敵な一夜を過ごせた。


ステージ真ん中にアナ・ダ・シルヴァ(vo、g)、
向かって右にジーナ・バーチ(vo、b、g)という二人のオリジナル・メンバーが立ち、
左には4作目の『Looking In The Shadows』にも参加していたアン・ウッド(vln、g、b)、
後方にジャン・マルク・ブティ(ds)。

アナとジーナの最近のインタヴューの様子を見たら歳も感じたが、
RAINCOATSのイメージにそぐわぬ妙な言い方を承知で書くと、
ステージ上での二人にさりげなく風格すら感じた。
ざっくばらんなMCも曲間にいっぱいでフレンドリーな雰囲気が手に取るように伝わってきたのは、
やっぱり小さな会場ならではだ。
たしかに演奏は危なっかしく見えた。
でも昔ながらの単なるローファイとは違う輝きをぼくは見た。
かわいくフリークアウトした曲をこんな女性たちがやっている姿が、
かっこよかった。
女性が女性に惹かれるってこういうことかなと勝手に妄想した。


やっぱりファースト『The Raincoats』(79年)の曲をたくさんやり、
この晩は「Life on the Line」以外の全曲を披露。
そのことはひとまず置いておいて、
セカンド『Odyshape』(81年)とサード『Moving』(84年)曲よりも、
目下の最新アルバムの4作目『Looking In The Shadows』(96年↑のジャケ写)の曲が多かったのは、
その音楽性の意識の流れで今RAINCOATSがやっているとも解釈できた。
ライヴ全体が凛々しかったのもそういうことだろう。
メジャー発売ゆえに現在入手困難かもしれないが、
『Looking In The Shadows』の曲や当時のEPのサブ・トラック「I Keep Walking」といった、
メジャー感の薄化粧をした過小評価の曲がたくさん繰り出されてきてホントうれしかった。

実験的な色彩の『Odyshape』のゲスト多数の『Moving』の曲が少ないのはなんとなく想像していた。
16日の日本ツアー初日ではLP『Moving』の曲を一つもやらなかったようである。
だからこそ前者の「Shouting Out Loud」や、
MCから察するにライヴで披露すること自体レアな後者の「Ooh Ooh La La La」をやってくれた時、
思わず声を上げたのはぼく以外にかなりいたのも当然だ。
一生ナマで体験できるとは思わなかった曲だから。

少女のままの大人の女性の危うさいっぱいでこわれそうな『The Raincoats』の曲と、
大人の女性のかわいさいっぱいで微妙に洗練された『Looking In The Shadows』の曲が、
同じステージの上で確かに共振していた。
女性ならではとも言える解放された振り幅の広さがRAINCOATSだとあらためて目と耳で感じた。

『The Raincoats』の楽曲が時代を超えて得体の知れないパワーをもっていることにもびっくりした。
そのファーストがプロデューサーの手腕とか偶然とか奇跡とかではなかったと肌で感じられた。
あのアレンジで演奏すること自体が難しいとも思うし、
ほとんど原曲を崩さずにバランスを崩したままプレイしていておとぎの世界へと誘ってくれた。

ジーナはベース、アンはヴァイオリンがメインだが、
二人とも曲によってはギターやベースも弾いた。
演奏楽器がクレジットされているアルバムと同じくライヴでも楽器を持ち替え、
このへんの頭のやわらかいパート・チェンジもRAINCOATSならでは。
石頭みたいな役割分担なんて何もない。
曲間でうれしそうに楽器を取り替えているシーンはさながら小学生で、
そういった演奏中以外のシーンからも目が離せなかった。
ヴァイオリンを楽しそうに弾くアン(vln、g、b、vo)はおちゃめなキャラで盛り上げてくれたし、
痩せ男のジャンのドラム(+口笛)もタイト&シンプルでGJだった。


もちろんアナとジーナがメイン・ヴォーカルをとる。
ジーナがリード・ヴォーカルをとる曲の方が多かった。
歌っている声も含めて二人のライヴ・パフォーマンスでRAINCOATSの対照的なキャラを勝手に想像する。

アナは強靭な美しさを放っていた。
彼女に話したら怒られそうだがCRASSのリーダーのペニー・リンボーにも似た鋭い“闘士顔”で、
RAINCOATSの音楽的な実験性も彼女によるところが大きいのかなと推測できるパフォーマンスだった。
カッコイイ。

ジーナはキュートな美しさを放っていた。
永遠の“ガールズ”の風情がまぶしい。
彼女が90年代後半にやっていたバンドのHANGOVERS(同名バンドがいるから注意)が、
BIKINI KILLをはじめとして“RAINCOATSチルドレン”的なKILL ROCK STARS Recordsから、
アルバムをリリースしていたことを思い出す。
RAINCOATSのロックンロール的な面を感じさせた。

アナもジーナも変わってない。
佇まいが変わってない。
髪型が昔のイメージのままだったことにも感動した。
歳を重ねて年輪を刻み込んだ美しさ。
色々なインタヴューなどから察するに50歳は越えているのかもしれないが、
若いを超えてあまりにもクールだった。
いい顔をしていた。


KINKSのカヴァーの「Lora」はヴァイオリンを入れず、
アンから歌い始めて3人がヴォーカルを取る意表をつくアレンジでびっくり。
アンコールでとちってやり直したのも御愛嬌。
いくつになってもRAINCOATSだった。

ライヴを体験して今さらながらやっとRAINCOATSの肝を感じた気がする。
「来年戻ってくるからね」という言葉もリップサービスじゃないと、
大団円のエピローグを見て確信した。


★セットリスト
1. No Side To Fall In
2. No One's Little Girl
3. In Love
4. Shouting Out Loud
5. You're A Million
6. Don't Be Mean
7. Ooh Ooh La La La
8. Only Loved At Night
9. 57 Ways To End It All
10. I Keep Walking
11. Off Duty Trip
12. No Looking
13. Lola
14. Black and White
[アンコール]
1. The Void
2. Adventures Close to Home
3. Fairytale in the Supermarket

16日の渋谷O-WESTでの初日では「Babydog」も披露したらしいが、
その代わりにこの晩は「Ooh Ooh La La La」「Off Duty Trip」をやり、
微妙にセットリストを変えていたのもうれしい。



個人的にはSTIFF LITTLE FINGERSの翌月にRAINCOATSという、
ジェフ・トラヴィス(ROUGH TRADE)とメイヨ・トンプソン(RED CRAYOLA/RED KRAYOLA)の、
両者が共同プロデュースして79年にファースト・アルバムをリリースしたバンドを2ヶ月連続で観られて、
とてもラッキー。
音楽性はまったく違うとはいえ共通する匂いが漂ってきた。
どちらもやっぱりピュアなのだ。


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コメント

なんか無理を言ってしまったようですいません
ただ行川さんご自身が「書きたくなった」と仰っているので一安心(笑)
ファーストの曲が中心であるだろうことは想像していましたが
「Looking In The Shadows」の曲を多く披露したところに
彼女達があくまで現在進行形であるというプライドのようなものが感じられました
「危なっかしい演奏」なんて聞くだけで嬉しくなっちゃいます
「来年戻ってくる」という言葉には彼女達も手ごたえを感じたのかなと思いました
それからフリクションの「2013」を聴きましたが・・・凄まじいですね
キャリア30年以上を数えながら殺傷力全開の緊張感漲る音に驚愕しました
フリクション=レックさんのイメージが強いんですがフリクションはあくまでバンドであるということが
演奏からヒシヒシと伝わってきてレックさんの手ごたえの大きさを感じました

ゾーン・トリッパーさん、書き込みありがとうございます。何かきっかけをもらったり話を振られないと手をつけないことが多いので、こちらが感謝したいほどです。
リリースからかなり経っていますが最新作の曲が多いのはそこから現在進行形ということを示していますからね。今あまり出回ってないと思われるにもかかわらず『Looking In The Shadows』の曲をガンガンやったのは、あそこの曲もメンバー間の意思疎通が特によくできているからだとも思います。
フリクション・・・やっぱりHNはそこからだったのですね。実はフリクションもレインコーツに近い意識のようで、以前の曲もやっていて同じように年月経っていますが最新作からの曲が多いところに、懐メロ・バンドじゃない心意気を感じます。

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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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