なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

IMPERIAL STATE ELECTRIC『Imperial State Electric』

ニッケのバンド


80年代終盤に“デス・メタル・ロックンロール・バンド”のENTOMBEDでレコード・デビューし、
90年代に入ってから始めたHELLACOPTERSのリーダーだった、
スウェーデンのニッケ・アンダーソン(ロイヤル)のプロジェクトが放つデビュー・アルバム。
これがまたクールなグッド・ロッキン・アルバムである。


自分でも何度が会見の機会を得たが、
ニッケのインタヴュー記事を読むと同じロックを愛する人間としていつもインスパイアされる。
SLAYERの『Reign In Blood』もロックンロール」であり、
「“チャック・ベリーが入っている音楽”はすべて良し!」といった、
頭デッカチな連中からは出てこないロックの本質を突く発言が多いのだ。
ロックを掘り下げつつソウル・ミュージックや世界中の現在進行形のロックに向き合っているからこそ、
デス・メタルもパンク・ロックもロックンロール・フィーリングに貫かれていればオッケー!という、
ニッケの帰還はホントうれしい。

バンドマン/ミュージシャンの知り合いも多いとはいえ色々な音楽の話ができる人は必ずしも多くない。
せいぜい昔のバンドか身内のバンドの話止まりで、
自己保身の内向きの意識が見えてしまって思い切り萎えてしまう。
日本のハードコア・バンドのメンバーでも音楽をよく聴く人ほど周りの“不良自慢話”にウンザリしている。
たとえばRELAPSE Recordsあたりからリリースしているバンドの人は、
たいていインタヴューでも種々雑多なバンドやミュージシャン名を挙げて友達になりたくなる。
けどもちろん日本のバンドの人でもインタヴューで興味深いバンド名を挙げている記事を発見すると、
「この人ホント音楽が好きなんだなぁ・・・」と思って得点アップするのだ。


ニッケは真正のミュージシャンと呼ぶにふさわしい才能を磨き続けている。
ENTOMBEDではドラムを叩いてHELLACOPTERSではヴォーカル/ギターだが、
どちらでもメイン・ソングライターだった。
即席で揃えられるファッションなんて知ったこっちゃない。
GUITAR WOLFにしてもそうだがロックンロールも汗水流した努力の上でしか成り立たない。
いわば職人の世界だ。
たとえ歌詞がラヴソングであってもおのれを研ぎ澄ました表現は艶々している。
たとえ政治を歌っていようが結局誰かさんの悪口を言って自分を省みない表現は死んだようなもんだ。

心から音楽が好きであってほしい。
今の膨大な音楽の中を溺れずに泳ぐのはハードなことだし、
バンドマンやミュージシャンは音楽を作り歌い演奏するのが為すべきことで
別にそんなに聴く必要はないと言えばそれまでかもしれない。
だが次々と音楽に向き合って音楽に時間を割く覚悟をもつミュージャンの音楽は、
ジャンル問わず底が割れていない。
何しろ音楽でもなんでもイージーな行動が嫌いだ。
そんなの今日も昨日も明日のイージーな言い訳で行なわれている殺しや虐待と根の意識は同じだから。


ニッケは2000年代の半ばからDEATH BREATHというバンドでも活動し、
『Let It Stink』(2007年)でDISCHARGE、GBH、BATHORYをカヴァーしたことでルーツを示したような、
“デス・メタル・パンク”をやっている。
また元MC5のフレッド“ソニック”スミスが率いたSONIC’S RENDEZVOUS BANDの一員だった、
スコット・モーガンがフロントに立つバンドのSOLUTIONでも活動してきている。

このIMPERIAL STATE ELECTRICは
そんな流れの中で2008年に解散したHELLACOPTERSの後期の流れをくむ。

ROLLING STONESに媚び売った古典的なロックンクローラーとは次元が違い、
80~2000年代のパンク/ハードコアやメタルをひとまず通過した上でリラックスしながら疾走する。
ロックンロールは二十五時間走っている音楽なんだから70年代でオツムが止まっていたらウソだ。
だから現在進行形のアンダーグラウンドの息吹も吸い込んでいる。
けどいわゆるガレージ・シーンやパワー・ポップ・シーンとかすりつつも、
ガレージ村やパワー・ポップ横丁では一杯引っ掛ける程度でクールに去り行く懐の深さに感動を禁じえない。

研ぎ澄ましたメロディも光り、
Iggy & The STOOGESの『Raw Power』に入っているミッド・テンポの泣きの曲みたいなのもある、
と書けば雰囲気がちょっとは伝わるだろうか。
HELLACOPTERS時代にカヴァーしたMOTORHEADの曲が「Speedfreak」というセンスに象徴されるように、
いい意味で“アルバムの2曲目”の連続みたいな渋さがたまらないのだ。
種々雑多な音楽が出てきている中で、
あえてスタイルが限定されている“ロックンロール(≠ロケンロー)”を掘り下げ、
フレッシュな音楽を生み出すことは、
ポップでキャッチーな曲からはうかがい知れぬエネルギーを要す。
そんな熱気が詰まっている。


ニッケ・アンダーソンが生粋の音楽家であることも知らしめるように、
ヴォーカルもギターもベースもドラムもキーボードも大半を一人でやっている。
曲によって、
ドレゲン(g~元HELLACOPTERS~BACKYARD BABIES)、
ドルフ・デ・ボースト(b、g、vo~DATSUNS)、
アンダース“ボハ・フェット”リンドストロム(g~元HELLACOPTERS)
ロバート・ペールソン(g~DEATH BREATH)
らが参加。
元DISMEMBERのドラマーのフレッド・エストビーが録音とミックスを手がけているのも見逃せない。
大学のサークル活動みたいに甘ったれた幼稚な“ぬるま湯ノリ”じゃなく、
共に音楽を愛する幅広い仲間と共にニッケが真剣に作り上げた開放的なアルバムなのである。

DVD『Sonic Revolution』でも確認できるように2003年のMC5の再編ライヴは、
ミュージシャンとして過小評価されすぎているニッケがチョイスされたグレイトな場だった。
再編MC5のフレッド“ソニック”スミス役はニッケ以外にありえなかったギタリストとしてのセンスに加え、
“空気孔”の多いニッケのドラムも全開だしデリケイトな歌声も艶っぽくてたまらない。
ガレージ・ロックンロールやパワー・ポップやソウル・ミュージックの旨味を吸収し、
凛々しいロックンロール美学が輝くキャッチーな楽曲をディープに聴かせる。
切ないメロディをナマのまま書き込んだソングライターとしての才覚も冴えわたるのだ。

本作の歌詞は英語だし活動シーンはまったく違うが、
セルフ・タイトルの快作を出したばかりのMASSHYSTERIをはじめとして、
スウェーデンのアンダーグラウンドで活動する現行のパンク・ロック・バンドたちにも通じる、
侘び寂びの味わいもたまらない。
あらためてスウェーデン恐るべし!だ。

こういう音楽を好きでいて良かったと思わせる作品は例外なく素晴らしい。
埋もれさせたくない佳作である。


★インペリアル・ステイト・エレクトリック『インペリアル・ステイト・エレクトリック』
(トゥルーパー・エンタテインメント XNTE-00017)
日本盤は70年代のKISSの隠れ名曲「All American Man」のカヴァーがボーナス・トラック。
多彩なニッケの音楽性をわかりやすくポイントを押さえた奥野高久執筆のライナーと歌詞の和訳付。


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コメント

ニッケさん今度は、NECRONAUT(綴り間違ってたらすみません)っていうプロジェクトも立ち上げたみたいです。彼のおかげで、沢山のバンド、ミュージシャンを知ることが、そして発見することが出来ました。政治、ファッションもいいけど、ミュージシャンだったら彼の様に、音楽を一番に考えてもらいたいですね!

Kouzyさん、書き込みありがとうございます。
その新プロジェクトは知らなかったです。情報、感謝します。
節操ないようで一本の筋が通っているニッケの音楽嗜好性に、ぼくもインスパイアされています。
音楽に情熱を注ぎ込んでいる人ならば、政治を歌うにしても本気だったら音楽にすべて表れています。
ニッケはファッションも渋くてかっこいいですしね。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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