なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『マーターズ(MARTYRS)』

もう一人


あなたはどこまで耐えられるか。

ぼくが見に行った試写会では少なくても一人の方が序盤で退席されていた。

フランスのパスカル・ロジェによる2007年の映画の『マーターズ』。
監督作品としては2作目だそうだが、
映画表現の極限にまで挑んだ“エクストリーム・フィルム”である。

ファンタジックなイメージも湧くホラー映画とは一味も二味も違う。
同じように“恐怖”の意味でも“horror”というよりは“terror”。
そう、いわばテロリズム的な映画なのだ。

小さな頃に監禁虐待された少女リュシー。
すきを見て脱走してから養護施設で生活を始めたが、
そこで同じ年頃の少女アンナによって少しずつトラウマが薄らいでいく。
でも、それが消え去ることはなかった。
15年後にリュシーは自分を監禁虐待した者を見つけだして“家庭を射殺”する。
しかし、いくらハンマーで粉々にしようが復讐は未完。
かつてリュシーに行われた監禁虐待は単なる個人の仕業ではなかった。
リュシーから現場に呼ばれて見た惨状にショックを受けたアンナは、
やさしすぎるがゆえに次なる“MARTYRS”に……。
ここから話はディープになってゆくのであった。

メイン 小

復讐劇の前半は何十リットルもの血が流れるが、
内臓がえぐり出されるといったようなシーンはないからスプラッターものとは一線を画す。
特に中盤以降は、
虐待のシンボルの鎖と手かせが光る中、
屈辱的な食事と排便のシーンをはさみつつ、
道具を用いぬ暴力行為が黙々と行使される。
女性への虐待というと陵辱もイメージされるが、セックスの類は無し。
そういうことが目的の監禁ではない。
ストックに容赦無き暴力で打ちのめす。

肉を刻み、肉を切り裂き、
頭に金属を突き刺し、顔の形が変わるまで殴り、
さらに皮膚をも剥がしたかのような姿も……。
メイクにCGを加味した絶妙の特殊効果も功を奏し、
普段こういう映像に対してもけっこうへっちゃらなぼくでも身の毛がよだった。
まさに残虐なリアリズムである。

頭

幼児に限らず戦争状態におけるものまで、
現実世界の監禁虐待の問題とダブらせて見ることも可能だろう。
それぐらい生々しい。

生きたまま少しずつ肉が削り落とされる中国の清朝時代の極刑だった、
凌遅(レンツェ)の写真が映画の中で使われていたのも興味深い。
米国のジョン・ゾーンのバンドであるNAKED CITYが92年に出したアルバム、
『Leng Tch'e』のジャケットがそれと同じ写真だから参考までに載せておく。
実際『マーターズ』の虐待のイメージに近い。
lengtche.jpg


タイトルの“martyrs”は“殉教者”という意味が代表的な言葉だと思うが、
“犠牲者”“絶えず苦しむ人”という意味もある。
監督はそれらの意味すべてのイメージをふくらませて作ったのではないかとも勝手に想像できる。
いわゆる俗世間の人間からすればアンナは“犠牲者”“絶えず苦しむ人”以外の何者でもない。
しかし“正気でない連中”が勝手に“殉教者”に祀り上げる。
“崇高な理由”が掲げられてしまったとき、暴力に感情なんてない。
だから徹底的にヤる。
だが決して殺しはしない。
“聖なる実験台”だから。

“虐待組織”はまるで新興宗教みたいである。
終盤はホントに精神異常の集団としか思えない。
それに対して誤解を恐れずに言えば、
変わり果てたアンナの顔は持続するエクスタシーの美しさを放っていく。
ぼくにはそれが生命力に見えた。

あっけなくもある一瞬のラストを見逃さないように。



8月29日(土)よりシアターN渋谷にてレイトロードショー。

(C)2008 Eskwad - Wild Bunch- TCB film




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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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