なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

JB『ソレユケ』

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京都在住の渕上純子(ふちがみとふなと)とbikke(Lovejoy)によるユニットが発表した、
F.M.N.サウンド・ファクトリーからの『ルリパキダンス』(2005年)に続くセカンド・アルバム。
今回は自主レーベルからのリリースで、
DIYな制作姿勢が隅々にまで表れていてうれしい佳作である。


音楽的に自分のど真ん中の方々ではないが、
何気に付き合いが長くていまだ続いているのもありがたい。
というわけで簡単にメンバーを紹介しておく。

●渕上純子(vo、KORG SP-100)
ぼくが彼女の存在を知ったのはビジリバのヴォーカルとして渕上だった。
ビジリバは船戸博史(b)、恵良真理(ds、vib)、古太郎(g)とのバンドだが、
ポスト・パンクみたいな趣もあった最初のカセット作品で衝撃を受ける。
以降94~2001年に3枚のアヴァン/プログレ・ポップなアルバムを発表した。
ただし当時から多彩な活動を展開していた渕上がその船戸と20年近くやっているユニットは、
メインの活動の場である“ふちがみとふなと”。
これまでに6枚のアルバムをリリースしている。
渕上の歌(+小物)と船戸のウッドベース(+コーラス)というユニークな編成だが、
2001年のカヴァーCD『アワ・フェイバリット・ソングス』では、
PRINCE、QUEEN、BEACH BOYS、KINKS、DEEP PURPLE、オーティス・レディング、トム・ウェイツ、
さらに越路吹雪ヴァージョンで「おおシャンゼリゼ」をやるなどタダモノじゃない。

●bikke(vo、Fender STRATCASTER)
PHEWがフロントに立って78~79年に活動した5人組のAUNT SALLYのギタリストとしてシーンに登場。
ベーシストとドラマーは男性だったが、
AUNT SALLYは女性主導の世界的に最も早いバンドのひとつと言える。
79年の唯一のアルバム『Aunt Sally』は日本流のポスト・パンク的な解釈の内容になったが、
CD『Live 1978 - 1979』に記録されているように極初期は120%パンク・ロックだった。
その後bikkeは、
INU解散後に町田町蔵(現・町田康)が82年にやっていたバンドのFUNAでギターを弾く。
ただしぼくが初めて彼女を観たのは、
“積極的な考え方の力”というバンドのフロント・ウーマンとしてのbikke。
縁があって体験したその90年のライヴはバンド名のインパクトも強くて印象に残り、
93年からはLovejoyという名の“まっすぐなバンド”で活動している。
メンバーはbikke(vo,、g)、近藤達郎(kbd)、松永孝義(b)、服部夏樹(g)、植村昌弘(ds)で、
これまでに3枚のアルバムをリリースしている。


『ソレユケ』のオリジナル曲は歌詞も曲もそれぞれが一人で書いた曲と共作とがあるが、
必ずしも作詞した方が歌っているわけでもなく、
全体的に渕上がリード・ヴォーカルでbikkeが作詞というパターンも多い。
そういった“ねじれ現象”ならではのマジックも長年の彼女たちのファンは楽しめるだろうが、
そういったこと抜きにしても感じさせるアルバムだ。

ポップだが生々しい。
息遣いが伝わってくる。
どんな表現でもそれがいちばん大切。
1曲目の「ヒガンバナ」からして、
やわらかくもサイケデリック&フリーキーなギターがかっこよく、
タイトルの花と同じくヴォーカルもたくましい。
一転して2曲目の「雪の日」は電子ピアノと歌で綴られ、
以降もギターと電子ピアノによるささやかな音と歌でシンプルかつ静かに織り上げていくが、
最後の曲の「セブンゴッズ」はポスト・パンクと言ってもいいだろう。

音楽スタイルは違うが、
彼女たちより多少年上と思われるRAINCOATSにも通じるアットホームかつ無限大に開かれた佇まい。
日本のP-VINE Recordsが発売しているような、
現行のオルタナティヴ系のアコースティックなアーティストにも近い自由な空気感だ。

歌詞にも表れているように季節感がうっすらと香る。
雰囲気はまったりしていると思うが、
歯切れのいい渕上のヴォーカルも、
スウィングするbikkeのヴォーカルも、
やっとのことで声を発しているみたいに震えている。
なんとなく切ない。
気がついたら姿勢を正されるほどの心地いい緊張感に覆われている。

英国出身の三兄弟によるBEE GEESの69年のヒット曲「若葉のころ(原題:First Of May)」と、
アイルランドのシンガーソングライターのギルバート・オサリヴァンの「alone again」のカヴァーも、
独自の日本語の歌詞でカヴァー。
特に後者で“絶望の友”というフレーズが出てくるのも興味深かった。
一時bikkeが使っていたバンド名が絶望の友であり、
前述の“積極的な考え方の力”のライヴを観たときの対バンが、
佐藤幸雄(元すきすきスウィッチ)が率いるバンドが絶望の友だったのである。

ベースもドラムもない。
だがビートがしっかり鳴っている。
ビートは生きているものの鼓動なのだ。


★JB『ソレユケ』(たぬへー TANU001)CD
厚手の二つ折りの紙ジャケット仕様で丁寧な作りの歌詞カードも封入された約46分11曲入り。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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