なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ドアーズ/まぼろしの世界』

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67年にレコード・デビューしてジム・モリソンが他界するまでに6枚のアルバムをリリースしたLAのバンド、
DOORSのドキュメンタリー映画である。
原題は『When You’re Strange』。
本作と同じ邦題のセカンド・アルバム『Strange Days』のキーワードである“strange”と、
その収録曲「When The Music's Over」「You're Lost Little Girl」をミックスしたとも思った。
実際はやはりその収録曲「People Are Strange」の歌詞のストレートな引用だろう。

監督のトム・ディチロは、
ジム・ジャームッシュの映画『ストレンジャー・ザン・パラダイス』で撮影監督を務め、
87年の映画『ジョニー・スエード』で監督デビューをしている人である。
オリバー・ストーンの“創作映画”『ドアーズ』は賛否両論でメンバーも複雑な思いを抱いていたが、
本作はDOORSを題材にした映画の中でメンバーが唯一公認した作品とのこと。
異を唱えるファンも一人もいないと思えるほど、
ベーシックなネタを押さえたストレートな作りだ。

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昔の素材を扱うドキュメンタリー映画というと、
過去の映像に関係者が当時のことを述懐するシーンを加えるのが王道である。
だが『ドアーズ/まぼろしの世界』は新たに撮った映像が1秒もない。
71年までの映像オンリーなのだ。
そういう点でも評価しているジョン・デンズモア(ds)によれば監督は、
200時間近くのアーカイヴ映像を見た後でシナリオを書いたという。

昔のことだから記憶があいまいになってしまうのは致し方ないが、
思い出して語ると悪気がなくても脚色したり尾ひれを付けたりする当事者も存在しそうだし、
詳しい人の話ではDOORSのメンバーの中にもその傾向の人はいるようだ。
そういったことを監督が察知したわけではないだろが、
過去を懐かしむドキュメンタリーとも一線を画している。
ある意味、普遍的な現在進行形のバンドとして、
ある意味、妄想的なDOORS伝説を削ぎ落として、
あくまでもハードボイルドに仕上げているのだ。
その結果、わかりやすい流れでまとめながらも重厚で彫りが深い作品に仕上がっている。
ドキュメンタリー映画の異端に見えて、
実はリアル・タイムのドキュメンタリーの王道とも言える作りだ。

サブ5_Doors 7

シーンとシーンをつなぐジョニー・デップのナレーションも絶妙である。
DOORSの大ファンという感情を押し殺し、
終始落ち着いたトーンで語る。

ジムが友人と69年3月に制作した未発表映画『HWY(ハイウェイ)』の映像が、
適度に挿入されているのもポイントだ。
ジムはヒッチハイカーの役で車に乗っているが、
レイ・マンザレク(kbd)によれば『HWY』におけるハイウェイの殺人者というジムの設定は、
ジム在籍時のDOORSのラスト・シングル「Riders On The Storm」の歌詞とリンクしているという。

サブ7_Doors 10

もちろん大学生の頃のジムやレイをはじめとして貴重な映像の連続である。
当然テレビ出演やステージでのパフォーマンスもたっぷり見られるが、
その前後に起こったトピックやトラブルも欠かせない。
テレビ番組『エド・サリヴァン・ショー』でのナマ放送もしっかりパック。
DOORSならばやっぱりこの人!と言える野沢収執筆のこの映画に関する文章によれば、
ジムがステージ上で“露出”を行なった69年3月の“マイアミ事件”にスポットを当てる場面では、
その現場の音声を使っているとはいえ映像は別の日のものだという。
だがそれも映画として許される範囲内のことだろう。
もちろん基本的に事実に即して描かれており、
ジムの遺作『L.A. Woman』のレコーディングに向けてのリハーサル・シーンも収められている。

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やはりジムが中心の作りだが、
たったの数年で加速した顔つきと体型の変化も見逃せない。
歌詞とは別に詩を書くことをプッシュしたと同時に別のモノも“push”したかのようにも想像できる、
恋人のパメラ・カーソンも随所で登場。
71年にジムが亡くなったと同時にDOORS自身も息を引き取ったような作りは、
死後のDOORS周辺のナマナマしさは本作を貫く一種の“美学”とは異質と思ったからかもしれない。
ジムの茶目っ気もさりげなく映画にしているところも心憎く、
ステージ上のあらゆる“行為”も含めて、
ファンもアンチも興奮させることがロック・スターだと自覚していたとも再認識させられた。
そういったことに疲れたからこそ根っからの自由人は“離脱”したとも思う。
終幕間際の美しい映像は解脱にも見えた。


バンドのことをよく知らない方にとってはまさにDOORSの世界に入る“扉”になる映画だし、
マニアも納得できるはずだ。


★映画『ドアーズ/まぼろしの世界』
カラー(一部モノクロ)。82分。
10月30日より新宿武蔵野館、シアターN渋谷ほか全国順次ロードショー
(C) 2010 Rhino Entertainment Company, a Warner Music Group Company
http://www.thedoors.jp/index.html


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コメント

>本作と同じ邦題のセカンド・アルバム『Strange Days』のキーワードである“strange”と、その収録曲「When The Music's Over」「You're Lost Little Girl」をミックスしたかのようだ。
それ以前にPeople Are Strangeに "People are strange, when you're stranger" って歌詞があるでしょ。

行川さんもパンクやハードコアだけでなく、もっといろんな音楽を聴けば、幅が広がると思いますよ。
がんばって!

>としあきさん
指摘ありがとうございます。
ストレートにそのフレーズからの引用でしょうね。
『Strange Days』はDOORSで一番聴いたアルバムで、特に「When The Music's Over」の歌詞は自分の基本でもあるのですが、
そこは見落として、ひねりすぎました。
書き加えさせてもらいました。                                                                                 
>広瀬さん
コメントありがとうございます。
色々な音楽を聴くようにしているのですが、
結局パンク/ハードコアも含めて国籍シーン問わず幅広い意味でのロックが大半になってしまっていますね。
さらに基本的に現在進行形のフォローを優先しているので、
なかなか手が回りません。
ひとつひとつ誠実に向き合い、さらに精進します。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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