なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』

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RAMONESからCONVERGEまでの定番本を書き下ろしてみた。


パンク・ロックも誕生から35年近くを経て無数のアルバムがリリースされてきたわけだが、
今後も新しいバンドがガンガン出てきて新譜を発表していくはずだ。
そんなカオティックな今の状況の中にもし自分が置かれてパンクを聴き始めるとしたら、
どこから手をつけていいのか迷うと思う。
新作を追うだけで昔のアルバムにまで手が回らない。
いくら興味を持ったとしても果てしなく無限に広がるパンク荒野の中で途方に暮れた末、
まもなくパンクから離れてしまうかもしれない。
パンクが拡散の一途をたどる2000年代以降そんな想像もするようなった。

パンク~ハードコア・ムーヴメントは確かに、
一部のビッグ・ネームだけが注目される音楽シーンをデストロイ!した。
STRANGLERSの名曲「No More Heroes」じゃないが、
パンク・ロックも“無名兵士たち”が歴史を作ってきたことは周知の事実である。
ただしそのことを踏まえた上で最近は“先細りの危機感”を覚えてきた。

パンクや音楽に限ったことじゃないが例によって内向き志向に対するアンチの気持ちもある。
溢れ返り続ける膨大な音源を前に自分の守備範囲をフォローするだけでも手一杯なのはわからないでもない。
ただ細分化したことで守りに入ってマニアックな場所に逃げ込むと、
とかくこもって自分らの“サークル”でしか通用しない言葉で語られがちで、
ダイナミズムが失われてパンク云々以前にどんどん気持ちが小さく視野が狭くなっている気がする。
“選民意識”が生まれて大局的に物事が見られなくて袋小路に陥ることが怖い。

そんなことからあえて“定番”で固めて“パンク道しるべ”となるような本を作る必要性を感じていた。


そんなことを考えているおりに、
『パンク・ロック/ハードコア ディスク・ガイド 1975 - 2003』『パンク・ロック/ハードコア史』に続き、
今回も編集を担当してくれたリットーミュージックの方から話をいただいた。
DOLL誌やその増刊の『パンク天国』でも書いていた方で豊富なアイデアをもらいながら進めていった。


 本編の名盤100枚はベーシックな流れを一度整理すべく、
自分なりの“パンク史観”をキープしながら“王道”のアルバムをセレクト。
精神的なパンク云々を超越した音そのものがパンク!のアルバムである。
ジャンル用語で書くとするならばパンク・ロックとハードコア・パンク。
要はパッ!と聴き理屈抜きで即パンク!と思えるものだが、
もっと言えばLED ZEPPELINやMOTORHEADともタイマン張れるガッツあふれるロックの音だ。

それぞれの国内での人気バンドだとしても普遍的な魅力と影響力みたいなものを重視して選盤。
細かいシーンの枠から独立した“個”として輝く作品ばかりだ。
とりわけ本編100枚に関してはまず手にとって聴いていただかないと話は始まらないから、
必要であれば編集盤も含めつつ名盤の中でも比較的コンスタントに入手できる状態のアルバムをセレクト。
ということでどうしても英米のバンドが大半になったが、
メインストリームのメディアや狭いサークルの捉え方とは一線を画すアグレッシヴな並びにしてある。

たとえばRICH KIDSを好きな人がTRAGEDYを聴いたっていいわけだし、
ANTISECTを好きな人がDESCENDENTSを楽しんだっていい。
“パンクの掟”を破るようなそんなちょっとした行動もアグレッシヴな姿勢の表れだから。
たとえばGREEN DAYやRANCIDでパンクを知ったことは誇りに思っていいし、
そこからCOCKNEY REJECTSを聴きDEAD BOYSを楽しむのも素敵じゃないか。

名盤にもかかわらず定番100枚の枠から泣く泣く外したアルバムは、
関連盤の隣などに挿入したコラムでフォロー。
パンクのルーツ、英米以外のバンド、マニアックな系統、シーンの狭間で埋もれがちなバンド、
2000年代以降で特筆したいバンドのアルバムについても触れてみた。
さらにパンク・ロック/ハードコアの魅力が端的に伝わるストレートな映像作品もいくつか挙げた。


ジャケットはすべてカラーで載せて名盤100枚の本編では曲名も掲載。
アルバムを時系列に並べて一種のパンク・ヒストリー本みたいな構成にしたから、
ページごとにその時代その時代の空気感も伝わってくるかと思う。
一ページに一バンドずつ割り当てているから見た目的にもダイナミックで
同じ頃にアルバムを出していた見開き2ページの2バンドが対バンしているかのような妄想もふくらむ。

名盤には語るべき“ドラマ”がたくさんあるし、
本編100枚に関しては1バンドにつき1000字近くの字数をいただいたから、
音だけではなく体系的に大切な事実やリンクしたい情報を絡めてバンドの混沌や葛藤や煩悩も表した。
バンドの結成や当時の状況、アルバムを出した以降のことや影響にまでも言及。
バンドのキャラやアルバムの特徴がイメージできるように歌詞にも字数を割いた。
反逆もフラストレイションも百バンドいれば百通りだ。


あらためてジャケットや歌詞カードを見ながらレコードやCDを聴き、
まるで格闘するかのように一バンド一バンドにじっくりと向き合って、
ますますパンク・ロックとハードコア・パンクが好きになっている。
時代に屈せぬソングライティングの大切さや歌詞の作り方の違いなどまた発見がたくさんあったから、
今後に活かしたい

つまりこれもひとつの挑戦と始まり。
だからもちろん思い出話の類は一切無し。
あくまでも前に進むための本だし、
そこに現在進行形の意識を感じ取ってもらえたらさいわいだ。


よろしくお願いします。


★『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(リットーミュージック)
■仕様:A5判/144ページ(オールカラー)
■価格:1,575円(本体1,500円+税)
■発売日:10月25日(月)
http://www.rittor-music.co.jp/hp/books/guide/09317106.html


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コメント

いいかげんにパンク/ハードコアから搾取するのは止めて欲しい。

パンクをダシに金貰ってるだけで、パンクから搾取はしてないだろ。多分

他の人が書いたら立ち読みもしないが、行川さんの文章はパンクに関わらず音楽好きには堪らない魅力があるので嬉しい。

よお行川。

文句なく良い。文字でパンク/ハードコアを演奏してる感じの本。この時代に本が出るっていう事自体凄い事だ。出版社も馬鹿じゃなく、必要なものしか出さない。ビギナーの心もオールドパンクスの心も躍る1冊。流石。

かくさん、まず読んでいただいてありがとうございます。そして端的でうれしいコメントにも感謝。「文字で~」の部分、そういう表現は使われたことがないので、とても元気づけられます。
「この時代に~」というも、まさにそうだと思います。リットーミュージックと担当編集者の方にもあらためて謝意、って感じです。

自分を褒めそやす書き込みにしか返事しないのが行川クオリティ。
近所の書店に置いてないし立ち読みもしないけど、本の出来がだいたい想像できるな。

勉強になりました。

行川さんのパンク史観とパンク100選のセレクトに興味があり読んで見ました。

MDCの紹介の所で(ゲイならではの視点)とあったのですがデイブは公表されたんですかね?

スティーヴン・ブラッシュ著の本の中では女装趣味(SSDのアルの証言)と書いてあったのですが('_'?)

余分三兄弟+さん、書き込みありがとうございます。
読んでいただいて感謝します。
MDCのディヴ・ディクターのゲイ云々の話は微妙かもしれませんね。歌詞やインナーシートなどに表れた「ゲイを擁護するバンドならではの視点」という表現の方がベターだった感じもします。
たとえば2007年のインタヴューが載っている
ttp://www.markprindle.com/dictor-i.htm
のサイトの後半部分「Say! Are you gay? 」の質問に対する回答では、「何年もの間あいまいな答え方をしたりイエスと言ったりしていたけど、女装趣味の一種で実際にはゲイじゃない」みたいなことを言っていますね。もしかしたら80年代はゲイだったのかもしれないですが、当時は名言したくなくて、今はゲイではないとも推測できます。
スティーヴン・ブラッシュの本『アメリカン・ハードコア』では、57ページ下段に筆者の言葉でBIG BOYSのランディ・ビスケット・ターナーやDICKSのゲイリー・フロイドと共に、オースティン御三家みたいな感じでデイヴはゲイ/ホモ扱いされていますね。229ページ以降のあたりのBAD BRAINSのホモ嫌悪の話題で、やはりMDCやBIG BOYSなどとの揉め事が語られていますね。やはり微妙なところかもしれません。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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