なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『友川カズキ 花々の過失』

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シンガーソングライターに留まらない活動を続けている友川カズキ(友川かずき)のドキュメンタリー映画。

詩人としての友川カズキと、
歌手としての友川カズキはもちろんのこと、
競輪評論家としての友川カズキにも時間を割いている。
俳優や随筆家、酒豪&ヘヴィ・スモーカーやとしての友川カズキもさりげなく折り込み、
90年代以降のアルバムのジャケットやTシャツにも絵が使われている画家としての友川カズキも挿入し、
さらに父親としての友川カズキも大胆に描いてゆく。
パンクによくある“言い訳”は皆無で、
ハードコア・バンドの百万倍ハードコアだとあらためて言い切れる表現者だと再認識。
奮い立たされる映画だ。


友川カズキは50年2月16日に秋田県山本郡八竜村(現・三種町)生まれだが、
及位典司(のぞき・てんじ)という本名を恥ずかしく思っていたようだ。
中原中也に触発された詩集の自主制作路上販売を経て、
75年にアルバム・デビューしてからずっと友川かずきと名乗り、
2000年代以降は友川カズキ名義で活動している。


友川はコテコテの日本語で今もなおナマリが強烈だが
(それを“矯正”することを拒否して大島渚監督の映画『戦場のメリークリスマス』への出演もならず)、
そんなふうに日本を突き詰めているがゆえに国境だの民族性だの超越している。
やはりたとえ言葉の細かい意味が通じなくても、
本物の表現は本気で物事に向き合っている人間に響くものがあるということだ。

以前も書いたように、
フランスのヴィンセント・ムーン監督による映画である。
ヴィンセントは米国のR.E.M.との仕事で知られ、
英国スコットランドのMOGWAIによる2009年のライヴ中心の作品も手がけた
(CDとセットでDVDが『Special Moves/Burning』というタイトルでリリースされている)。

アーティストのことはアーティスト自身が語るブログなどでわかるという意見もあるが、
本人自ら語らず気づかない側面が第三者にも掘り起こし得ることも再認識させられる映画だ。
必ずしもヴィンセントは友川のファン歴が長いわけではないと察せられるが、
逆に妙な先入観無しで先鋭的な感性を研ぎ澄まして取り組んだことも奏功。
ヴィンセントが自分の美学をキープしつつ、
MOGWAIの作品と同じく対象となったアーティストの友川の本質を凝縮集約している。

友川の“うた”と共振し、
ささくれだった詩情がゆっくりと波打つ映像そのものの力がすごい。
淡い色使いゆえに染みこんでくる。
友川の姿はもちろんのこと、
たそがれの命がゆらめく何気ない街の風景なども友川が生きる地としてナチュラルに映す。
悠然と流れる時間をあやつる手法も絶妙で、
ヴィンセント・ムーンをあらためて映像作家と呼びたくなった。

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2009年の3月から4月にかけて日本で撮影されている。
最低限の“友川情報”は頭に入れていただろうが、
友川の予備知識がどの程度ヴィンセントの中に入っていたかはわからない。
なにしろ刺し違える覚悟で直感を駆使ながら友川のはらわたの中に入って制作し。
カメラ・アングルや映像の切り取り方がフレッシュで驚かされる。
決してトリッキーというわけではないが、
ライヴ・シーンでは極端なアップを多用してカメラが狙う角度も斬新。
友川のド迫力にひるむことなく、
ぐいぐいぐいぐいと大胆に“肉薄”する。
それでいてわかりにくくなるどころか友川の本質がクローズアップされているから、
何度もステージを観ている人でも新鮮に映ること必至なのだ。

東京都下の立川競輪場で佇むシーンも、
アパートの自室で競輪のテレビを見ながら絶叫するシーンも、
生き生きしている。
もちろんアコースティック・ギター弾き語りも随所に盛り込み、
レコーディング光景も見られる。
実はオシャレなところもポイントだ。

ヴィンセントは、
友川の表現の大きなモチーフのひとつになっている家族関係にも焦点を当てている。
友川自身が事細かに語っているわけではないが、
弟と息子についても時間を割いている。
とりわけ息子の及位鋭門(のぞきえいと)を大きくフィーチャー。
父親譲りのイケメンで俳優もやっているだけにシャープな存在感を際立たせながら、
友川に対して複雑な感情を吐露していく。
ライヴも含めた親子の“大阪ツアー”も一つのハイライトだろう。


友川と息子以外の登場人物は以下のとおりだ。
●大関直樹(マネージャー)
●加藤正人(脚本家)
●福島泰樹(“短歌絶叫ライヴ”で知られる歌人)
●石塚俊明(頭脳警察のメンバーとして知られるが打楽器だけではなく、70年代から現在まで友川のバックでケツも叩く音楽家)
●永畑雅人(ロケット・マツの名でパスカルズを率いる音楽家。ピアノ、アコーディオン、ピアニカ、
マンドリンなどで石塚とともに90年代から友川のステージもサポート)
●生悦住英夫(93年のアルバム『花々の過失』以降の友川の作品を出しているPSFレコード主宰者で、
自称“日本一アンダーグラウンドなミュージック・ショップ”モダーンミュージックの店長)

彼らのコメントが短時間で、適度な分量、ポイントを押さえて挿入されているから、
ゆるやかで激情をはらむ全体のリズムを損なっていない。
むしろ映画全体を加速させるアクセントにしている。

友川photo_sub2

当然のことながら過去のことにも少なからず言及されている映画だが、
あくまでも意識は現在進行形である。
レコード・デビュー以降の業界話みたいなものはほとんどない。
昔の映像で懐古することはなく
若い頃の友川等の姿も写真で見せる程度に留めている。

冒頭で初期の代表曲「生きてるって言ってみろ」を友川の若い頃によく似た“ある人物”が歌っているが、
映画の中で使われている曲の半数以上が2000年代に発表した曲という事実にもそのことが表われている。
わりと最近の曲の中でぼくがいちばん好きな「ピストル」を歌うシーンが特に壮絶。
“戦争反対も結構だが 人間反対ではないのか!”と歌う詞だが、
小池直人プロデューサーのブログによれば大阪の遊郭跡で撮られたというシチュエーションも手伝い、
今まで見た友川の中でも鬼気迫るパフォーマンスで迫真の映像になっているのだ。
むろん他の曲も歌っている友川のツバが飛んできそうなほど生々しい響きに仕上げられている。


友川の語り口はたいへんユーモラスだが舌鋒は強烈に鋭い。
その顔つきや眼差しと同じくあたたかくもあり、
あいまいも馴れ合いも排して厳しい。
ぼくもインスパイアされる。

互助会みたいな世の中を嫌悪する友川。
こんな時代が大嫌いな友川。
だから永遠にツバを吐く。
自分にもかかろうが構やしない。

吐けば吐くほど自分にもかかる。
だがやめやしない。
浴びるように飲む酒みたいに。


★映画『友川カズキ 花々の過失』
2009年/70分/フランス=日本/英語字幕あり
12月に新宿K’s cinemaにてロードショー。
10月23日には爆音映画祭@横浜でも上演。
http://lafautedesfleurs.com/j/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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