なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』

ノーウェアボーイメインNWB15 42


ミドル・ティーンからBEATLES結成直前までの多感な時期のジョン・レノン(40年生まれ)を
“二人の母親”を絡めて描いた映画(原題は『Nowhere Boy』)。
レノン没後30周年の年に日本でも公開される。
先日紹介したサントラ盤を聴いてイメージしたとおりの楽しくも切ない作品で、
ストレートな展開で素直に感動した。


監督はサム・テイラー=ウッドは、
67年にロンドンで生まれて芸術家としてキャリアを重ねて本作が長編監督デビュー作となる。
脚本はマット・グリーンハルシュ。
イアン・カーティス(JOY DIVISION)を描いた映画『コントロール』を手がけた手腕を本作でも発揮した。
主演のアーロン・ジョンソンは、
90年に英国で生まれて『ジョージアの日記/ゆーうつでキラキラな毎日』などの多数の映画に出演。
監督のサム・テイラー=ウッドと昨年婚約して今年子供が誕生している。

ノーウェアボーイサブ1

5歳のときから伯父と伯母に育てられているレノン。
三人で楽しい日々を送っていたが、
音楽に対して目覚めさせてくれた伯父が急死して悲しみにくれるレノンに、
厳格な伯母のミミは「しっかりしなさい」と叱咤激励する。
そんな中でレノンはいとこに「実母に会いたくないか?」と持ちかけられ、
実は近所だった彼女の家を訪れる。

実母のジュリアはミミとは対照的に翔んだ女性だった。
時代は50年代の半ばで、
出回り始めていたロックンロールをハイスクールに通い始めていたレノンと一緒に楽しみ、
レノンにバンジョーの手ほどきもする。
十年ぶりに息子と時間を共有できるようになったジュリアは、
かわいくて若い恋人ができたかのようにレノンとハッピーな時を過ごす。
だがジュリアには内縁の夫と娘たちがいて、
レノンの居場所は“nowhere”・・・どこにもなかった。

生意気でケンカっぱやくてキザで自信家。
“エロ本不法所持”のために停学処分も食らい、
狙っている女の子のおっぱいを見たいがために“露出”もいとわないお馬鹿。
とっぽいレノンが向かう先は音楽しかなかった。
バンド結成。
まもなくポール・マッカートニー、
さらにジョージ・ハリスンとも出会う。

17歳の誕生日の夜にバースデイ・パーティが行なわれたが、
レノンは自分の生い立ちに対して伯母のミミと実母のジュリアに問い詰めて事実を話させる。
3人の関係はグチャグチャになりかかるが、
考え方が違ってもモヤモヤした思いを遠慮なく吐き出せば理解もし得る。
ミミとジュリアは愛するレノンをめぐるわだかまりを昇華して姉妹関係の結束を強め、
レノンも”二人の母”の愛を真正面から受け止めて音楽に対して本格的に取り組み始めるが・・・。

これ以上の話は自粛。
レノンに詳しくない方はあまり調べないで見ることをオススメする。

ノーウェアボーイサブ2

映画が始まって数秒で引き込まれる。
音楽と同じくグレイトな作品はそういうもので、
この映画もスクリーンからイングランドの匂いが漂ってきてまたたく間に映画館内を覆っていくのだ。
ストーリー云々以前に鮮やかな映像の力が大きい。
さんさんと太陽がふりそそぐわけではないが、
れんがや緑が彩るリヴァプールの街並みを彫りが深い映像が鮮やかに描き出して目を覚ます。

俳優陣も瑞々しい。
レノン役のアーロン・ジョンソンは憎たらしいほど英国の軟派不良少年でキマっており、
23歳年上の監督が仕事を超えて惚れ込みまくったのも無理はない。
彼にとっては方言もチャレンジだったそうだが、
適度にダーティな“なまり”も映画を盛り上げてくれる。
実母のジュリア役を熱望してオーディションで勝ち取ったというアンヌ=マリー・ダフは、
演じることの喜びに満ちたかわいくて色っぽい熱演でキュート。
伯母のミミ役のクリスティン・スコット・トーマスもピリッ!とした演技も映画を引き締める。
ポール・マッカートニーとジョージ・ハリスン役の男優もチャーミングだ。


たくさんのコトを盛り込める映画ならではのダイナミズムいっぱい作りだから、
ワクワクしっぱしである。

もちろん50年代後半の服装だが、
格調高くロックンロール前夜の息吹がほとばしるファッションにも目が奪われた。
これがイギリス、これがイングランドだと思わされるのだ。

音楽も言わずもがな。
イケイケの曲がほとんどだが、
シーンごとに歌詞の意味も考慮しながら使われている。
映画を見たあとだとレノンの代表曲の「Mother」がよりヘヴィに聞こえてくるが、
なぜ「Mother」をサントラ盤に“アンソロジー・ヴァージョン”で入れたのかも見えてくる。
重いままで終わらせない制作者の意思も感じられた。

ノーウェアボーイサブ3

なぜなら、
あくまでもロックンロールがキーワードだから。
立ち止まらずに転がる音楽的な意味でもあり、
セックスの俗語としての意味でもある、
ロックンロールの魅惑の薫りに包まれている。

楽しいだけじゃない。
二人の母親を持ったことと彼女たちとの愛憎や確執はレノンの女性観の下敷きになったと思われるが、
普遍的に“男性と母親”をはじめとする親子や母子、さらに家族の関係性もクールに問いかける。
そういったこと経たからこそレノンのロックンロールが生まれた。
ポール・マッカートニーやジョージ・ハリスンと組んだ終盤の勢いは、
特にBEATLESファンでもないぼくでもヤられた。
MOTORHEADのレミーがなぜBEATLESに惹かれるかもちょっぴりわかった気がする。

レノンというと高尚な持ち上げられ方もされているが、
青春期とはいえ俗なレノンをクローズアップしているのもイイ。
悪ガキがpeaceになるのもロックンロールの王道。
それもまた良しと思わされる心憎い映画である。


★映画『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』
2009年イギリス映画/原題『Nowhere Boy』/98分
11月5日(金)より全国公開。
(C)2009 Lennon Films Limited Channel Four Television Corporation ando UK Film Council, All Rights Reserved.


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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