なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『極悪レミー』

main_convert_20101108142546.jpg
photo by Wes Orshoski

MOTORHEADのレミー(vo、b)のドキュメンタリー映画。
懐かしの映像も多少絡めながら、
レミーの“雑談+挙動”と関係者のインタヴューで綴られる。

監督/制作はグレッグ・オリヴァーとウェス・オーショスキー。
グレッグは、ミュージシャンの他にモデルやレーサーなど様々なジャンルの映像を手がけてきた映画監督。
レゲエのBURNING SPEARや英国の作家/活動家のミッキー・バーンのドキュメンタリーもやり、
サーフィン、BMX、スケートボードなどスポーツ専門のFUELTVの番組も数多く担当してきた。
ウェスは、過去20年以上にわたり音楽カメラマン、ジャーナリスト、雑誌編集者として各誌に登場。
映像の方では、
BURNING SPEARやイアン・マクラガン(元SMALL FACES~FACES)のドキュメンタリーを手がけたが、
監督としては『極悪レミー』がデビュー作となる。

S1.jpg
(C) 2010 Lemmy Movie LLC

内容盛りだくさんだ。

音楽面では、
レミーの本格的な音楽キャリアの最初となるROCKIN VICKERS、
レミーの“飛躍台”になったスペース・サイケデリック・ロックンロール・バンドのHAWKWIND、
そしてもちろんMOTORHEAD、
さらに2000年代に始めたHEAD CATの活動に、
それらの(元)メンバーの話も交えて言及していく。

レミーがMOTORHEAD結成直前までベースを弾いていたHAWKWINDのことにも時間を割いている。
そのリーダーのデイヴ・ブロック、元メンバーのニック・ターナーとステーシアの話も興味深く、
見どころのひとつだ。
基本的にゆるいトーンの映画だが、
このへんの緊張感のあるくだりは映画全体を引き締めている。
レミーとデイヴ・ブロックの確執が消えてないと感じるのはぼくだけではないだろう。
だがレミーがHAWKWINDをクビにならずに円満な関係が続いていたとしたら、
MOTORHEADはなかったかもしれない。
だとしたらロックの歴史はまったく違うものになっていた。
イギリスからOi!パンクやハードコア・パンクが出てきたのだろうか。
アメリカからスラッシュ・メタルが生まれ得たのだろうか。
“トラブル”や“アクシデント”が新たなドラマを生むことをあらためて知る。

当然のことながらMOTORHEADの話題が多い。
ただむろん好きなことには違いなかろうが、
両監督が熱狂的なMOTORHEAD信者というわけではないようにも思える。

サブ2
(C) 2010 Lemmy Movie LLC

MOTORHEADだけを扱った映画ではないと言ってしまえばそれまでだが、
何しろMOTORHEADの元メンバーの影が薄い作りだ。
いわゆる黄金時代のギタリストだった“ファスト”エディ・クラークが“ちょい役程度”の出演。
同時期のドラマーのフィル“フィルシー・アニマル”テイラーは昔のライヴと馬鹿騒ぎ映像での登場である
(新たな撮影が不能の状態だったのだろうか)。
他の元メンバーに至っては顔も見られない。
必ずしもレミーの歴史の中で長く付き合っていたわけではないからかもしれない。
けど現メンバーのフィル・キャンベル(g~84年加入)とミッキー・ディー(ds~93年加入)でさえも、
それほど多くスクリーンに出てくるわけでもない。

両監督がレミー自身に対して特別な思い入れがあるわけではないようにも見える。
たとえば女性の話題の中でも、
レミーの“ソウル・メイト”で最も大切な女性と思われる、
故ウェンディ・O・ウィリアムズ(PLASMATICS)の話が出てこない。
82年にMOTORHEADの“黄金トリオ”崩壊の原因にもなったから外したわけでもないだろう。
いい意味で切り口がジャーナリスティックでプロデューサー的とも言える。

だが、ちょっと距離を置いて客観的にレミーを見ているからこそ、
レミー・マニアが見落としがちな思わぬ一面をガンガン引き出している。
いわば“レミー外伝”もたっぷりの映画なのだ。

S4.jpg
photo by Wes Orshoski

いわゆる武勇伝だけを売りにするロッカーとは一線を画し、
得体が知れぬ底無し沼の極悪性がレミーの魅力だ。

ワルに見えて紳士的という精神的にも一番おんなのツボを突くレミーのメンタリティは、
シビアな育ちによるところも大きい。
レミーの核心が表われている家族関係にも切り込む。
ミュージシャンでもある息子ポール・インダーとの面白い会話も“レミー部屋”でたっぷり繰り広げられる。
『友川カズキ 花々の過失』を見ても思ったが、
子供とのやり取りには親としてだけではなく人間としての本質が表われる。
ただ友川のその映画とは違って、
やはりレミーは息子とほとんど馬鹿話に終始
(ただし息子にとってとても大切な一言も言っているので聞き逃さないように)。
“息子の母親”もさんざんネタにしてくつろいでいる。

実はレミー特有の会話の妙味がちりばめられているのがこの映画の最大のポイントだ。
何しろ数分おきに笑える。
多弁でゲラゲラゲラ~~~~って笑わせるんじゃなく、
何気なくポロッ・・・と漏らす一言でプッ・・・・・という笑いがこっちからも漏れる、
それがレミーの極悪センス・オブ・ユーモアなんである。

S3.jpg
photo by Wes Orshoski

レミー愛用のウエスタン・ブーツの秘密も公開。
“レミーのお宅訪問!”のコーナーも愉快だ。
一軒家ではないが、
室内は“博物館”の様相を呈している。
ファンからのプレゼントやナンセンスな置物をうれしそうにさりげなく披露し、
ズラリと並び飾られた剣から模型からナチものまでの戦争グッズの膨大なコレクションには圧倒される。
関係者にウンチクを垂れながら戦車に乗ってゴキゲンなレミーも拝める。

意外とオトコオトコしていないのがレミー。
極悪でありながら、
ほとんどヲタ。
そんなレミーも暴く。
映画の最初からそんなシーンで腰が砕ける。
勝つか負けるか!人生はギャンブル!みたいなレミーの歌の世界観に直結しているからか、
レミーはゲーム狂だ。
スロットマシーンに興じるのはまだしも、
ゲームセンターに入り浸って何時間もマシーンを“占拠”して血走った目で画面を見つめる還暦越えの男。

もはやヘンなおじさん。
素敵である。

S5.jpg
photo by Jeff Yeager

むろんキメるところはビシッ!とキメるのが極悪流儀。
やはり音楽関係のちょっとした話にレミーのアティテュードが見え隠れしている。
ジミ・ヘンドリックスのローディ時代の頃のこともそうだし、
不良と極悪は似て非なるものだからなのかROLLING STONESではなくBEATLESの大ファンなのも、
映画を全部見ると何となく感じ取れるのではないだろろうか。

今年のクリスマス・イヴでレミーは65歳。
錠剤(いわゆるドラッグではなく某病気用。コーラのジャックダニエル割りの飲み過ぎゆえか)を携帯する。
だが凄みを増している。
一緒に並んだ姿を見ればジェイムズ・ヘットフィールド(METALLICA)が百万倍オッサンに見える。
なんたってMOTORHEADでコンスタントにリリースとツアーを続けており、
なんと90年代以降、
2年に1枚はオリジナル・アルバムを発表している。
しかもアルバム出すたびにレイドバックなんか知らない音。
まさに精力絶倫の鉄人である。

ドラッグをヤってもヘロインなどの危険物には入れ込まなかったなど、
自分の中で一線を守っていたのかもしれない。
レミーは生き延びている。

ロックとして生き続けることにこだわりをもつ灰野敬二を思い出す。
「俺はいつでもレミーの後ろでギターを弾きたいと思っているよ」と言う灰野もレミー・ファン。
ハードコア・パンク・バンドやスラッシュ・メタル・バンドをはじめとして、
ほんとロック好きでレミーを好きじゃない人はいないだろう。
80年代以降のバンドのことを書くときにぼくが一番引き合いに出して語るバンドも、
間違いなくMOTORHEADだ。

S6.jpg
photo by Greg Olliver

映画の中で多数のミュージシャンや関係者が語っている。
前述したレミーが関わってきたバンドの元/現メンバー以外の一部を紹介すると、
METALLICAとデイヴ・グロール(元NIRVANA/現FOO FIGHTERS、THEM CROOKED VULTURES)、
DAMNEDは一緒にセッションをしている。

オジー・オズボーン、スコット・イアン(ANTHRAX、S.O.D.)、キャプテン・センシブル(DAMNED)、
ニッキー・シックス(MOTLEY CRUE)、コリー・パークス(元NASHVILLE PUSSY)らは、
秘蔵エピソードなどを長くしゃべっている。

ヘンリー・ロリンズ(元BLACK FLAG/現ROLLINS BAND)、ラーズ・フレデリクセン(RANCID)、
ジョーン・ジェット(元RUNAWAYS)、スラッシュ(元GUNS’N’ROSES)、
ピーター・フック(元JOY DIVISION、NEW ORDER)、ディー・スナイダー(TWISTED SISTER)、
スリム・ジム・ファントム(STRAY CATS、THE HEAD CAT)、デイヴ・エレフソン(MEGADETH)、
デイヴ・ナヴァロ(元JANE’S ADDICTION~RED HOT CHILI PEPPERS)など、
たくさんの人たちがレミーに敬意を表す。


MOTORHEADやレミーのマニア以外の方も十二分に引き込むおもろい映画である。
ロックのカッコよさとわけのわからなさを体現している。
まさにレミーの映画ならではなのだ。


★『極悪レミー』
2010年/アメリカ映画/カラー/117分
12月3日(金)の東京・渋谷シアターNでの公開を皮切りに、翌日から全国各地で続々ロードーショー。
http://www.lemmymovie.jp/


スポンサーサイト

コメント

楽しみです!

映画絶対観に行きます! 『生けるロック伝説』の御姿をこの目で見られる日が来ようとは! 【Born to lose,Live to win】というフレーズにもシビれたので自分の座右の銘の一つにします!(笑)

JADEさん
書き込みありがとうございます。
MOTORHEADの歌詞のカッコよさ、面白さがよく表われている映画だと思います。
いわゆる典型的な極悪伝説に留まらず、
レミーを多角的に捉えているところもポイントです。
正攻法のレミーの誠実さみたいなものも感じ取れる映画です。
ライヴ・ハウスとかでも話題になったりして、じわじわ盛り上がっていることを実感します。

勝手に不死身の男だと思っていたので
レミーの死が信じられないと言うか信じたくありません。

不純物のない純度100%のロックを鳴らせる
数少ない存在だったのに・・・

悲しいです。

Re: タイトルなし

ゾーン・トリッパーさん、書き込みありがとうございます。
「100歳までやる」という言葉を有言実行しそうな勢いの新作を8月に出したばかりだけに残念です。
僕は観ていませんが、今年のフジロックフェスの写真やレポートを見るとヤバイ感じもありましたね。
癌がわかったのが数日前とのことですが、新作『Bad Magic』の歌詞を見ると“死の覚悟”を決めていたようにも思えます。
旧友(悪友)フィルシー・アニマル・テイラーの後を追うような感じになりましたが、
MOTORHEAD結成40周年まで、
そしてクリスマス・イヴの70歳の誕生日までギリギリ頑張ったようにも思えます。
御冥福をお祈りします。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/303-8c21523a

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (291)
映画 (254)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (48)
PUNK/HARDCORE (413)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (95)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (121)
FEMALE SINGER (42)
POPULAR MUSIC (25)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん