なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

CRASS『Stations Of The CRASS』

CRASS.jpg


70年代後半から84年まで活動した英国のポリティカルなパンク・バンドのCRASSが、
自主レーベルのCRASS Recordsから79年に出したセカンド・アルバムの新装リイシュー盤。

“The Crassical Collection”と題されたリイシュー・シリーズ第一弾として数ヶ月前に出た
78年録音のデビュー作『The Feeding Of The 5000』の“新装デラックス盤”と同様に、
ジャケットを変更してオマケもたっぷりだ。
LPや7”レコードでも単なる音源発表ではなかったCRASSならではのヴォリュームでのリリースである。
2008年12月の最新リマスタリングで分離のいい鮮烈な音の仕上がり。
CD特有のとげとげしい音だ。
ちなみに発売元のサイトでは“リマスタード・エディション”という宣伝文句も付いている。


『The Feeding Of The 5000』は、
異形のパンク・バンドのCRASS作品の中で最もストレートなパンク・ロック色が強いサウンドだった。
後にEXPLOITEDがカヴァーしたPUNCTUREから始まり、
MENACEやCARPETTES、
COCKNEY REJECTSやCUREやBAUHAUSの初期作品を出した、
SMALL WONDER Recordsからもともとリリースされたことが象徴する。

この『Stations Of The CRASS』はCRASSが本格的に攻撃の狼煙を上げたアルバムである。
パンク・ロック以外の何物でもないが、
各メンバーが内包した音楽的な“逸脱要素”が随所で顔を見せている。

大半の曲は男性のスティーヴ・イグノラントによって歌われるが、
女性メンバーによって歌われる曲は、
当時CRASS RecordsのレコードをディストリビューションしていたROUGH TRADE Recordsのバンド、
たとえばRAINCOATSあたりと混ぜて聴いても違和感がないほどポスト・パンクっぽいところもある。
CRASSが常に既成のパンクの“オルタナティヴ”、つまり違うものを目指していたがゆえのことだろう。
アンビエント・サウンド+ポエトリー・リーディングの曲やレゲエをブレンドした曲もやっているが、
当然フツーのやり方じゃなくて我流なのがCRASS。
あくまでもパンク・ロックのスタイルでパンク・ロックを解体している。
むろん頭デッカチじゃなく音そのものも生々しく刃先が鋭い。

ファーストの頃は歌っていることもけっこうストレートでダイレクトに挑発していた。
このアルバムは音楽だけでなく歌詞的にもねちっこく、
いちばんユーモアがキツい。
逆に言えばCRASSの辛らつな本質がいちばん詰まっているアルバムでもある。
しかも誤解を恐れずに言えば、いちばんポップにハジけているのであった。


ただし実のところこのリイシュー盤の収録曲は、
当時の2枚組LPや以前の2枚組再発CDと異なる。
スタジオ録音テイクはオリジナル盤の20トラックすべてが収録されたが、
79年8月のライヴ・テイクの17曲がすべてカットされている。
収録時間の制限があるCD1枚でまとめるための処置だろうか。
その代わり初音盤化となる79年3月の“ジョン・ピール・セッション”の模様が、
トークも含めて6トラック入っている。
どのリイシュー盤でもそうだが、
もともとのレコードを持っている人は丸ごと曲が同じなのもどうかと思ったりするから、
この差し替えも歓迎したい。

何しろ他のアーティストの“ジョン・ピール・セッション”ものと同様に音質も含めて、
今回の追加分が最高なのだ。
とりわけ“In All Your Decadence People Die”と女性ヴォーカルによって繰り返される
「Shaved Women」は壮絶極まりない。
ちなみにブックレットに“In All Our Decadence People Die”というフレーズが添えられているのも、
要注意。
“人々が死ぬ”のは“おまえらみんなの堕落の中で”か“我々全員の堕落の状況で”か。
個人的にも17歳のときに聴いて最も衝撃を受けた曲のひとつで今もグサッ!とクる。


リリース・レーベルはCRASS Recordsになっているが、
製造と配給はCRASS周辺バンドのリイシューも手がけるSOUTHERN Records。
RAMESSESのところでも言及したように、
最近SOUTHERN Recordsが配給する作品は日本での流通がイマイチのようだが、
マメに色々チェックしてみていただきたい。


★CRASS『Stations Of The CRASS』(CRASS CC02)CD
スリップケースの中に、
二つ折り紙ジャケットに収まったCDと、
LPのポスター・ジャケットのミニチュア、
リーダーのペニー・リンボー(ds他)のライナーと歌詞、写真などで構成した64ページの“小冊子”を封入。
作曲者か作詞者かは不明だが、
今回その“小冊子”にメンバー名が曲ごとにクレジットされているのも興味深い。
むろんアートワークはジー・ヴァウチャーのデザイン。
トータル約66分だ。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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