なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

JESU『Heart Ache & Dethroned』

DYMC-131_convert_20101122113922.jpg


NAPALM DEATHのデビュー作『Scum』の86年録音の前半でギターを弾いていた、
ジャスティン・K・ブロードリックによるJESU(イェスー)の初期音源をまとめた2枚組CD。
クレジットによれば、
本作は2004~2010年に音楽に関するすべての作業を一人でやった曲ばかりである。
作品数が多いJESUとはいえ押さえておきたい原点の音源と言える。


ディスク1は2004年リリースのデビュー作『Heart Ache』を収録。
2曲入りゆえかアルバムとは数えられないことが多いが、
共に20分前後の曲だからヴォリュームはアルバム・サイズだ。

ジャスティンは同時多発的に様々なことをやってきているミュージシャンだが、
80年代終盤から90年代前半にかけて活動していたGODFLESHの次のメイン・プロジェクトが、
このJESU。
GODFLESHの最終作『Hymns』(2001年)の最後の曲が「Jesu」ということで、
JESUにバトンをつなげたわけである。
まさに1曲目の「Heart Ache」はGODFLESHの流れを感じさせる冷厳なビートの繰り返しで始まるが、
たおやかな表情を見せていく流れだ。
「Ruined」はしばらく静謐な表情をたたえるが、
まもなくクールなスロー・ヘヴィ・リフの鉈が振り下ろされ、
力が崩れたようなヴォイス、さらにシャウトが続く。
これがまたカッコイイ。

3年前にJESU来日公演の際に話を訊いたとき、
ジャスティンはシューゲイザーを引き合いに出されることを困惑していた。
確かにここ数年JESUがリリースする作品はそれっぽくもあるが、
表面的なだけでしかない。
たとえばMY BLOODY VALENTINEとは抱えもったものが根本的に違う。
何に対しても、それこそ対人間でもそうだが、
深いところの意識を見ないとすべてが台無しになる。

JESUはシューゲイザーに類されるバンドと似て非なるものという原点が、
今回の作品に表われていると思うのだ。
この初期のJESUから最近のJESUまで貫くのは、
やっぱりJOY DIVISIONのような重いソウル。
そして何より骨っぽさであることを示すCDである。
落ちているときに聴くと光が差し込むと同時に涅槃も見えてくる。


一方の『Dethroned』と題されたディスク2は2004年録音の素材という未発表曲集である。
4曲の本編だけで約29分だから、
こちらもアルバム・サイズのヴォリュームだ。
輪郭がはっきりした曲が続き、
強度十分のメタル・リフを進める曲も“ヘヴィ・ポップ”とでも言いたくなる。
TORCHEのアプローチの先を行っていたようにも思えてきた。
いずれにせよ以降のJESUの路線の曲と言えるだろう。
JESU初期からヴィジョンが見えていたわけだ。


わりと近い時期に録音されたと思われるこれらの2枚を続けて聴くと、
様々な歌い方を試みているヴォーカルも含めて
音楽的な方向性も含めた葛藤も透けているように思える。
それにゆえに『Dethroned』を“お蔵入り”にしていたと邪推することも可能だろう。
だが迷いはない。
歌詞もGODFLESHのネガティヴ・フィーリングの流れをくみつつ、
内にこもって守っていた自分をどうにか解放しようとする意志が感じられるのだ。


★イェスー『ハート・エイク&デスロウンド』(デイメア・レコーディングス DYMC-131)2CD
2つ折りの厚手の紙ジャケット仕様。
アートワークの写真はジャスティンによるものでデザインはアーロン・ターナー(元ISIS他)だ。
日本盤は本編の曲の“エクステンデッド・ダブ”ヴァージョンを1曲追加して歌詞の和訳も付く。


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コメント

ジャスティン先生

ライヴはGodflesh色が強かった気がします(テッド・パーソンズのドラムがまた強烈でした)。あれをちゃんと観てればシューゲイザーと比較する人は少ないんでしょうが。

ジャスティンといえば、ケヴィン・マーティンとのプロジェクトTechno Animalも必聴ですね。MIAの音を10年以上も先駆けてた気がします。

etakuさん、書き込みありがとうございます。
ここ数年、ブラック・メタルやパンク・ロックにもシューゲイザーの要素を含むバンドが多数出てきていますが、
JESUがシューゲイザーの流れで語られるのは本人同様ぼくには違和感があります。
来日公演は旧知のリズム隊(ベーシストはHEAD OF DAVIDで一緒だったDave Cochraneでしたし)も強力だったためか、ロック魂いっぱいでしたね。
思い切り興奮しました。
ああいうバンド編成でスタジオ・レコーディングすることに今は興味ないのかもしれませんが、
色々なことをするミュージシャンだから期待したいです。
ケヴィン・マーティンとの絡みものも含めて、ぼくもジャスティン関係のCDやレコードだけで数十枚あると思います。
さすがにもうフォローしているのは一部ですが、
最近だとPALE SKETCHER『Jesu:Pale Sketches Demixed』が面白かったです。
まだ日本盤だと手に入るはずのJESUの『ペイル・スケッチズ』が元ネタの作品です。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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