なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

CONTROL DENIED『The Fragile Art Of Existence』

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デス・メタル・バンドのパイオニアであるDEATHの後に、
故チャック・シュルディナー(g)が率いたヘヴィ・メタル・バンドによる唯一のアルバムの新装版。
99年にNUCLEAR BLASTからリリースされたオリジナル盤の約51分8曲入りの本編のCDと、
本編と曲がダブるデモ等が9曲入った約52分のボーナスCDから成る。
後者は99年の5曲のデモ(インスト4曲とチャックが歌う1曲)と
97年の3曲のデモ(本作とは別のベーシストとドラマーが参加)などが収録された。


米国フロリダを拠点にしていたCONTROL DENIEDはツイン・ギター編成の5人組だった。
DEATHではリード・ヴォーカルもとっていたチャックはギターに専念。
もう一人のギタリストのシャノン・ハムとドラマーのリチャード・クリスティは、
ラスト・アルバム『The Sound Of Perseverance』(98年)で演奏していたDEATH末期のメンバーだ。
ベーシストのスティーヴ・ディジョルジオは、
DEATHの『Human』(91年)や『Individual Thought Patterns』(93年)でも弾いていた音楽家。
シンガーのティム・アイマラはTRIPLE Xのメンバーであった。


ティムのヴォーカルはデス・ヴォイスではなくノーマル歌唱だが、
いい意味でラフな歌い方である。
CONFESSORも頭をよぎった粘着性も有する喉の持ち主だ。
しっかり歌うタイプとも言えるが、
メタルメタル!しているわけでもなくてユニークな曲にフィットしている。

DEATHは98年の『The Sound Of Perseverance』が最終作だが、
96年にはCONTROL DENIEDをスタートさせているから、
DEATHとしては95年の『Symbolic』でやるべきことをやり尽くしたと判断して
チャックが始めたとも思える。
本作の共同プロデューサーが『Symbolic』以降のアルバムを手がけたジム・モリスなのも、
DEATHからの流れを多少なりとも意識したのだろう。
ギッチリ詰め込みすぎず適度に透き間を活かしたチャックのバンド特有の音作りも健在だった。

すべての作詞作曲を手がけたチャックのソングライターのとしての進化も見て取れる。
わりと曲は長めだが、
後期DEATHの流れも感じさせる流麗な表情を覗かせながらグロテスクな展開も見せる。
DEATH時代を思わせるスラッシーなパートを含みつつ、
自ら創造したデス・メタルから解き放たれており、
クールなリフで織り成す“プログレッシヴ・ヘヴィ・メタル”だ。
チャックがCONTROL DENIEDのシンガーとして白羽の矢を立ててデモと歌詞を送ったが、
多忙のため断念したウォーレル・デインが在籍するNEVERMOREを思い出すところもある。

むろんフツーのメロディック・メタルとは次元が異なるしトリッキーでもない。
ジャズの影響も感じさせて浮遊感もあるベースはうねり、
ドラムもパワフルで音が大きい。
エクストリーム・メタルの血も研ぎ澄まされた色で流れていることは、
熾烈かつ艶やかなギターの響きでわかる。
ギターの芯がヤワになっているわけじゃない。

controldenied.jpg

音楽的にDEATHの進化形でありながらも、
“死”と名乗るバンドに曲がふさわしくないと思ったのか、
一度リセットしたかったのか、
わからない。
DEATHはメンバーが流動的でバンドというより個人プロジェクトのようにも見られていただけに、
チャックがあらためてCONTROL DENIEDを始めた理由は定かではない。
“DEATH”という究極のバンド名を背負っていたチャックが、
その重荷を下ろしたかったのかともぼくは思っていた。


命を削っているようなチャックの音出しはDEATH時代から変わっていない。


メロディアスな色を強めた後期のDEATHに対して軟弱になったとかいう類の声も聞かれる。
それは『Heartwork』以降のCARCASSにNGを出す気持ちと同じなのだろう。
だが表面的に激しいだけじゃむなしい。
底が見えるノイジーな音は浅はかで悲しい。
耳を傾けるべき大切ところは音の奥に息づく意識だから。
対象に深く向き合うと、
見えなかった世界が見えてきて、聞こえなかった意識も聞こえてくる。

かなり行くところまで行ったメロディアス・アプローチの
DEATHの6作目の『Symbolic』(95年)でぼくは確信した。
どこかの雑誌の年間ベスト・アルバムの一枚に選んでいる。
その後のDEATH唯一の来日公演(現FEAR FACTORYのジーン・ホグランがドラマーだった)も
観てのことだった。
当時から命を削って音を紡ぎ出していると思った。


DEATH時代から歌詞やタイトルの言葉の選び方も、
インテリジェンスに富んでいて思索的なほど意味深だった。
CONTROL DENIEDではさらに磨きをかけており、
本作の「When The Link Becomes Missing」という曲で
“Individual Thoughts”というフレーズが歌いこまれていたのも興味深い。
DEATHのアルバム『Individual Thought Patterns』のタイトルとダブるわけで、
“個の思考”と訳せるこのフレーズにチャックが特別な気持ちを込めていたことも想像できるのだ。
“はかない実存芸術”とも訳せるアルバム・タイトルも今となっては象徴的すぎる。

Control+Deniedchuckwguitarsigned_convert_20101118102947.jpg

このアルバムのリリース直前に脳腫瘍のためにチャック・シュルディナーは倒れて手術。
2000年には完治したと思われたが、
CONTROL DENIEDのセカンド・アルバム(未発売)のレコーディング半ばにして、
2年間の闘病の末、2001年12月13日に他界。

目下のところこのアルバムがチャックの遺作となっている。


ディスク2の最後の曲「Tune Of Evil」は、
“チャック・シュルディナーのコメディ・デモ”ともクレジットされている。
SORE THROATかAxCx(ANAL CUNT)か!?とも思ったほどの“一人デス/グラインド風”で、
厳格な作風で知られるチャックにしては異例な曲でびっくりした。
こういうお馬鹿な曲で締めるところに制作者のチャックへ愛が感じられる。


★コントロールド・ディナイド『ザ・フラジル・アート・オブ・エグジステンス』(リラプス・ジャパン YSCY-1194)2CD
スリップ・ケースと16ページのブックレット付。
日本仕様盤は歌詞とドラマーが2010年に書いたライナーの和訳も付いている。
一見省略されてしまっているようにも見える「When The Link Becomes Missing」の歌詞の和訳も、
その前の曲「What If…?」の歌詞の和訳に紛れ込んだ形のレイアウトになっているとはいえ載っている。


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コメント

こんにちは。

ライターが海外シーンについて書くとなると、現場の空気に触れておくのが当たり前だと思います。
やはりシーンを実際に肌で感じもしないで本や雑誌だけで論じているのは駄目ですね。そういう口先だけのライターは信用出来ません。
私も音楽ライターを目指して、貯金をしてはNYやロンドンのクラブに行って見聞を広げるよにしています。
行川さんはどれぐらいの頻度で海外に行きますか?
通算どれぐらい行ったことがあるでしょうか?

八千代さん、書き込みありがとうございます。
行ったことないです。
シーンを知るために長期間滞在するのは、なお難しいです。
アメリカにしてもイギリスにしても地域によって大きな違いがあるでしょうね。大都市と地方とによっても。
もちろん日本もそうですよね。沖縄と北海道と大きく違いますし。
その様々な地域に行くのは限界があります。
そもそも他にもたくさんの国があるわけで、そこを訪れて知るにも限界があります。
日本のライヴ・ハウスだけでも様々なジャンルの種々雑多なライヴが日々行なわれていて、シーンをつかむのは難しいです。
だからライヴ・シーン全体について書くのは限界がありますね。
実際、会って長時間話をしているミュージシャンのことを書くのは、資料で調べただけのミュージシャンのことを書くよりも突っ込んだことが書けることも多いです。
ただ自分にもやるべきことがずっと山積みなので限界があります。
できる範囲でビシッ!と向き合って丁寧にやるだけです。

外国行ったことないんだぁ・・・

それで「海外のシーンが~」とか言われてもまったく説得力ないんだけど。

「できる範囲でビシッ!」っていうのは、タダでもらえるサンプル盤とタダで入れるライブでお茶を濁すことなのかな?

真のライターになるには莫大な金と時間がなければなれないのですかね??
NYにはNYのシーンが、ロンドンにはロンドンのシーンがあるだけでそれ以上でもそれ以下でもないですよね??
「百聞は~」だけど、例えばブラックメタルシーンを取り上げるとなると、日本、東南アジア、北中南米、ヨーロッパ諸国などフォローしないと語れませんよね?
大都市、先進国にだけシーンが存在しているわけではないです。
行川さんこれからもこのブログ楽しみにしてます。

九千代さん、書き込みありがとうございます。
このブログを始めたのは、プロモーションをしてもらっても紹介する場がないCDや映画を書く場を作らねば申し訳ないという気持ちが大きかったので、そういう作品を多く書いている感じですね。
買ったレコードはEL ZINEなどでたくさんレヴューしています。
シーンについては、30年以上種々雑多なライヴを観てきている東京ですら無数のシーンが存在していることぐらいしか把握できてないのが現状です。
今の東京のパンク・シーンでも、たとえば新宿と高円寺と八王子は空気感も違いますし。
だから「シーン・レポート」とかで海外のどこかの都市の記事が書かれていても、ごく一部を切り取ったものとして捉えるようにしています。
ともあれ九千代さんが素敵なライターになることを期待しています。

Kouzeke さん、書き込みありがとうございます。
パンク・シーン/ハードコア・シーンもブラック・メタル・シーン同様にホント世界中にありますし、他のジャンルでもそうだと思います。
米国や西欧以外にも目を配ることは意識しています。
色々聴けば聴くほど実感し、一つの国内でも把握できないです。
たとえばスウェーデンの今のパンク・シーンだけでも地域ごとに分散しているみたいですし。
あと、地域的にも音楽的にもなるべく幅広く物事を見ようとしているのでフォローしきれないのが現状です。
ぼくがアーティストやバンドに対して、
そういうこともあって、シーン(集団)の中で埋没しがちな“個”として向き合うことを重視しているからかもしれません。
今後ともよろしくお願いします。

Kouzeke さんへ

実はケータイ等をもってないので、ぼくからは携帯のメール・アドレスにはメールを送れないようです。
もし問題なければPCのメール・アドレス付で簡潔な書き込みお願いできますか。
“非公開コメント~管理者にだけ表示を許可する”にチェック印を入れてもらえれば、ぼく以外には見られないようになると思いますので。
可能でしたら、よろしくお願いします。

実は、PC持ってないんですよ。でも、色々どうにか出来る方法は無いか調べてみます。


Kouzekeさん
ぼくがそんな状況なのでスイマセン。何かありましたからまたコメントください。お手数掛けます。

「矢面を立てて」じゃなくて「白羽の矢を立てて」
じゃないですか?

未完成だったCONTROL DENIED の2ndを
他のメンバーが仕上げて出してくれるらしいので
またレビューをお願いしますね。

重箱の隅を爪楊枝でつんつんさん、書き込みありがとうございます。
「白羽の矢を立てて」が正しいですね・・・修正します。御指摘に感謝します。
“新作”が出るのですか・・・チャック大好きなので楽しみです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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