なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『クルード~アマゾンの原油流出パニック~』

Crude_main_s.jpg


南米西部のエクアドルの熱帯雨林地域で起こった米国の石油大企業による環境汚染と、
それに抗う訴訟を追ったドキュメンタリー。
テーマは重いし、
普段から馴染みのある問題とは言いがたい。
だが映画『メタリカ:真実の瞬間』も手掛けたジョー・バリンジャーの監督の起伏十分の構成により、
105分という長丁場をスリリングに進めて最後まで持っていく。

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米国の石油企業テキサコがエクアドルに進出した結果、
美しいジャングルでの生活は一変。
生活用水として使われる川などが汚染され、
赤ん坊は皮膚炎になり、
子供のうちから次々と癌になり、
油混じりの水を飲んだ人はまもなく死ぬ。
移住も余儀なくされ、
必然的に部族の伝統も文化も破壊。
そこで自分たちはもとより地球の将来も見据えて訴訟に立ち上がる。

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汚染現場の実地検証をしながらお互いの言い分を紹介。
素朴な住民たちの体験談や見聞談が生々しく、
侵された肉体や油でドロドロの真っ黒のブツもその土地では一般的なこととして随所で挿入される。
かたや“理詰め”の石油会社側は訴訟者を土地や川の浄化よりも金が目当ての詐欺師とののしる。
アマゾンの住民側は必死で挑む弁護士をはじめとして部族の代表にも語らせる練習も行なって臨むが、
裁判に不慣れなだけに米国の支援組織も加勢。
小国の住民たちが米国の大企業に対して挑む裁判闘争には、
長期戦を覚悟しなければならないから現実問題としてお金が必要とはいえ、
「マンハッタンの高級住宅街に住むアメリカの弁護士に操られている。彼らにとって裁判はビジネス」
という批判の声も出てくる。
このへんのくだりからはエクアドルの人の葛藤と米国人監督の内省も見て取れる。

エクアドルでは裁判も命がけだし、
権力を持つ側がつぶしかねない司法の独立自体も怪しかった。
だから両サイドの弁護士らが判事に詰め寄るシーンもリアルだ。

Crude_sub6_s.jpg

2007年に大統領に就いたラファエル・コレアは進歩的で、
まもなく現場にも足を運んで事の進展に大きな役割を果たす。
前後して米国の大雑誌『ヴァニティ・フェア』にもこの問題が大きく取り上げられる。
スティング(元POLICE)の奥さんでもある
レインフォレスト財団の共同創設者の女優トルーディ・スタイラーも関心を持ち、
この問題に対して積極的に関わり始める。
その流れで、
同年7月7日に米国でも行なわれた“ライヴ・アース”イベントにエクアドルの弁護士も呼ばれた。
そのステージでPOLICEが79年の名曲「Message In A Bottle」をやっているが、
この手のイベントは引いてしまうぼくも、
個人的に思い入れがあるその曲に宿る普遍的なメッセージ性にハッ!とさせられたのであった。

Crude_sub10_s.jpg


という具合にポジティヴな方向に話は進む。
冒頭でチラリと書いたように、
METALLICAの曲のように長く少なからずドラマチックに展開される。
入り込みやすいように事実を再構成するのは当然あり!だ。
毎日の生活に追われてそれどころじゃない人に対して無頓着な“活動家(activist)視点”ではなく、
わかりやすい。
映画の原題の“CRUDE”が“原油”と“自然のままの”という両方の意味を持つのも象徴的である。

さりげなく使われている音楽も効果的だし、
いわゆる政治的なメッセージ以上に映像美のメッセージ性にうならされることだろう。
緑もそうだし、
石油汚染のネガティヴな象徴としての黒いドロドロもある意味そうだし、
現地の人々のDIYなファッションの色の鮮やかさにも目を奪われる。

「何もしなければ何も得られない」
自立が必然なアマゾンの人たちにとって当たり前の言葉である。
ほとんどの人間が恩恵をこうむっている石油について考えさせられる人間ドキュメンタリーの佳作だ。


★映画『クルード~アマゾンの原油流出パニック~』
2009年/アメリカ/105分
12月25日(土)より、渋谷アップリンクほか全国順次開催。
http://www.webdice.jp/realmikoukai/
http://www.uplink.co.jp/factory/log/003811.php
(C)2009, Crude Productions, LLC


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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