なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ジーザス・キャンプ~アメリカを動かすキリスト教原理主義~』.

JesusCamp_MAIN.jpg


キリスト教福音宣教会の信者の家庭が送り出す子供たちが参加するサマーキャンプを軸に、
アメリカに巣食う“病魔”をえぐり出した2006年の映画。


キリスト教も枝分かれしているとはいえ、
本作が扱うのは合衆国の政治に多大な影響力を行使する狂おしいほどコテコテのキリスト教保守派だ。
キリスト教福音宣教会のベッキー・フィッシャー牧師が気勢を上げるのだが、
彼女がターゲットにしているのは、
物心がつく前に吹き込むべし!とばかりに集めた子供たちオンリー。
白人が目立つとはいえ様々な人種を擁し、
ほとんどが小学生に見える子供たちに“教育”を施す。

「神は万能」
「神は世界を正せる」
「この世は病んでいる」
「キリスト教徒は堕落してしまった」
「今こそ立ち上がり汚れた世界を修正するのです」
「変革を起こしましょう」

子供たちはわけがわからないまま従っているように見えるが、
あちこちで涙も流している。
「聖霊との交信に集中しているだけ」だという。
“やらせ”に見えるほど憑かれたかのような行動が続く。

ボーリングで玉を投じる際には本気で神にストライク!をお願いし、
ボーリング場で一般ギャルの大人に教えを説こうとする伝道師の子供たち。
「からかわれたことはあるけど、こう思った。
人の考えは関係ない。
大切なのは神の考え。
変な人と思われてもかまわない。
天国に行くか、地獄に行くか、決めるのは神だから」

人生10年にも満たないにもかかわらず悟ったような口を利く子供たちの無邪気な顔がやるせない。

JesusCamp_SUB2.jpg

なにしろベッキー・フィッシャー牧師のキョーレツな存在感に持っていかれる。
思想的には対極とはいえ、
POISON IDEAのメンバーとしてスカウトされてしかるべき彼女のボディも実にパワフルだ。
たとえ批判的な視点で描かれようが絶大な宣伝にもなるからか、
映画撮影ということでいつも以上に張り切っているのではないか。
よくも悪くも“確信犯”だから主張に力があるし、
イケイケのキャラとギラギラした佇まいがあまりにもアメリカ的だ。
「子供たちを神の水で清めよう」ということで子供たちの手を清める水が、
ネッスルのペットボトルのミネラル・ウォーターというのも、
妙にカジュアルな姿勢を象徴している。

地球温暖化も欺瞞と言う福音派。
なぜなら最後の審判を信じているから。
“何をやってもイエスが救ってくる”という考え方なのだ。
キリスト教原理主義に限らず“エクストリームな宗教”の基本はどこもこんな感じかもしれない。
クレイジーな思想性など常軌を逸しているからほとんど“ネタ”の宝庫とも言えるが、
笑うに笑えないほどブッ飛んでいる。

JesusCamp_SUB1.jpg

「なぜ子供かというと
7~9歳までに“学習”したことが子供たちの人生の基盤になるからよ」とベッキー牧師はのたまう。
“学習”ではなく“洗脳”の間違いではないか。

中絶の非を説くために、
手のひらサイズの胎児の人形を配って持たされ、
“LIFE”と書かれたテープみたいなもので口をふさがれる子供たち。
米国民の25%を占める福音派を支持基盤にしていた
ジョージ・ブッシュの等身大の板に抱きつく子供たち。
未来のアメリカ合衆国のために“神”をすり込まれる子供たち。
「パレスチナではイスラム教のために死ぬ教育をしている。
キリスト教の子供たちも命を捧げてほしい」と
子供たちを神の軍隊に育てる。
すべての根底はキリスト教至上主義である。

JesusCamp_SUB4.jpg

あくまでもキリスト教の“一派”ではあるが、
別な意味で極端な思想性を持つバンドもいるとはいえ、
キリスト教が浸透した国のブラック・メタル勢が燃え上がる理由も納得できる。

さらにDEAD KENNEDYSやMDCをはじめとして、
米国のポリティカルなパンク/ハードコア・バンドがキリスト教右派を素材に歌ってきたのも、
もっともだと思わされる。
80年代末から90年代前半に活動していたニューヨークのハードコア・パンク・バンド、
BORN AGAINSTのバンド名と91年のアルバム『Nine Patriotic Hymns For Children』のタイトルが、
いかにアグレッシヴな意味合いを呈しているかも再認識した。
パンク/ハードコアをはじめとしてアメリカのロックがなぜストロングになるかも、
少なからずわかる映画だ。

疑うべき抗うべき対象は政府だけではない。
もっと怖いのは人間に宿る集団性と植えつけられる“狂信性”。
それはアメリカだけに限った話ではない。


★映画『ジーザス・キャンプ~アメリカを動かすキリスト教原理主義~』.
2006年/アメリカ/87分
12月25日(土)より、渋谷アップリンクほか全国順次開催。
http://www.webdice.jp/realmikoukai/

12月25(土)13:30~には以下のイベントもある。
会場:アップリンクファクトリー 上映作品:『ジーザス・キャンプ』
ゲスト:辛酸なめ子さん(漫画家・コラムニスト)×島田裕巳さん(宗教学者)

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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