なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ブラック・サンデー』

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『羊たちの沈黙』でも知られるトーマス・ハリスの小説を元に、
ジョン・フランケンハイマーが監督を務めた77年のアメリカ映画。

当時政治的な問題のため公開直前で中止になった日本では今回が初の一般劇場公開とのことである。
日本赤軍による72年のイスラエルのテルアビブ空港乱射事件から時間が経った時期ではあったが、
そういう問題ともリンクしている映画だ。
いわゆる“9.11”を25年前に予見していたかのようでもあり、
かつて実在していて72年のミュンヘン・オリンピックの際にイスラエルの選手とコーチを殺害した、
パレスチナ解放機構系列のテロ組織“黒い九月”もあぶりだす映画だ。


ベトナム戦争に従軍してボロボロになったにもかかわらず祖国に裏切られた思いでいっぱいの男性と、
パレスチナ自治区のガザで育って家族がヤられた生い立ちを持つ過激派の女性が、
USAに対する憎しみで共鳴して手を組む。
一方レバノンで地下組織を襲撃したイスラエルの特殊部隊を率いた少佐は“企み”を察知し、
アメリカに渡って二人の計画の阻止を試みる。
二人がクライマックスに設定した舞台は、
アメリカン・フットボールの大舞台“スーパーボウル”の会場。
テレビ中継用に飛ばされた飛行船を半ば乗っ取って、
アメリカ大統領も含む8万人が集った会場での瞬時の大量殺戮を試みる。

大ざっぱに書くとこんな感じのストーリーだが、
2時間23分のヴォリュームたっぷりだから紆余曲折含みだ。


当時の(今も)イスラエルの保守派のやっていることはさておき、
テロリズムの恐怖をまざまざと見せつける。
メインの男女二人だけでなく途中で射殺された組織の主力メンバーも含めて、
逃走途中などで“本番前”に何人殺しているかわかりゃしない。
テロリスト云々以前にここ数年多発する乱射事件もイメージさせる。
大義名分に甘えて人間を“個”として見ない無責任な“聖戦”は誰が死のうが知ったこっちゃない、
ようなことも描かれる。
ただし組織と無関係でやっているわけではないが、
実行犯は二人だけだから何気に“個”として動いているところも実はポイントだ。

“アメリカがやってきたことのしっぺ返し”みたいな言葉も盛り込まれ、
単なる勧善懲悪では終わらずに最低限の政治的なポイントは押さえている。
“ジョン・フランケンハイマーが監督でパラマウント映画の作品だからユダヤの視点で描かれている”、
という解釈もできよう。

だが何も意識しなくてもクラスター爆弾の如く否応無しに政治が四方八方に飛び散る素材だから、
ことさら政治性を強調はしてない。
なにしろぐじぐじした理屈を超越している映画だ。

長丁場だから今の時間感覚だと前半が長く感じられなくもないが、
リアリスティックにじっくれと迫るその部分があってこそ後半が生きている。
溜めに溜めていっきにクライマックスのエクスタシーに持っていく巧みな展開とも言える。


レバノンのベイルートから、
アメリカのロサンゼルス、ワシントンDC、モハベ砂漠、フロリダ州のマイアミまで、
市街戦から“空中戦”まで、
政治性を超越した人間ドラマと言うべき攻防が問答無用にスリリングで、
後半は目が覚めっぱなしである。
POISON IDEAが『Feel The Darkness』の1曲目で歌ったプラスチック爆弾を二人は用いるのだが、
残虐でありながらアーティスティックでもある残像の実験シーンも強烈だ。
映像だけで神経を痺れさせる。
音楽でいえばエクストリームなハードコアやメタルなどが、
歌詞だけではなくアルバムのアートワークやライヴのパフォーマンスも含めて表現と同じこと。
問答無用に感覚に訴えかけてくることが大切なのだ。

ハリウッド映画的にエンタテインメントとして“昇華”されたところに賛否が分かれるのかもしれないが、
誤解を恐れずに言えば、
主張込みのハード・ロック/ヘヴィ・メタルにも似たダイナミズムにあふれている。
ゆとりの歌ものやオルタナティヴ・ロックとかじゃない。
これはアメリカン・ハード・ロック、
いやハードコアがかったデス・メタルの世界観にも近い。
特に命がけの“執念vs執念”の終盤は言葉が挟まれる余裕がない展開となり、
手数の多いギターのリフやドラムのビートの如くうねるように動く映像で執拗に観客を打ちのめす。
何しろスクリーン全体でのアピール力がまさに映画ならではだし、
手に汗握る!といった表現がピッタリの映画ならではのスリルに満ちている。
後腐れなくテロップが流れてきて一切の感情を断つ思い切りのいいラストも見事だ。


通常の試写会は小さめのスペースで行なわれることも多いが、
今回の試写会は大きな通常の映画館で行なわれ、
どでかいスクリーンならではの圧倒的なパワーで終演後はしばし放心状態になった。
映画館で見る必然性たっぷり作品であり、
映画ならではの醍醐味たっぷりの作品である。


★映画『ブラック・サンデー』
2時間23分/カラー
2月5日(土)から1年近くにわたって全国ロードショー。
http://asa10.eiga.com/2011/series2/cinema/192.html
“第二回午前十時の映画祭”の一環として上映される。
http://asa10.eiga.com/

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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