なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

David Bowie『Station To Station(special edition)』

David-Bowie-Station-To-Station.jpg
デイヴィッド・ボウイが76年にリリースしたアルバムの“スペシャル・エディション”。
昨秋発売されたCD3枚組で、
本編のCDに同年のライヴを収めたCD2枚がプラスされている。


『Station To Station』はボウイの中だと刺激的な音のアルバムとは言いがたいが、
ボウイの中の私的ベスト3の一枚だから以前のCDのも買った。
Rykodiscから91年に発売されたそのボーナス・トラック入りのCDは音に違和感があったが、
オリジナル・アナログ・マスターを使っているこのリイシュー盤はノイズを取り除きつつ、
LP『Station To Station』の“もこもこ感”が活かされている。
エコーを消したような当時のボウイのアルバム特有のドラムもLPに近く、
制作者の苦労がしのばれる音の仕上がりに感謝したい。

“ジギー・スターダスト”時代のイメージでボウイはグラム・ロックの中に括られがちだが、
ソウル/ファンク・ミュージックのとろみが効いたアルバムである。
この後も5年ほど活動を共にするカルロス・アロマーのギターの色も大きい。
とはいえむろん基本はロックで、
10分を越える「Station To Station」は加速するドラマチックな“ロックンロール”の名曲だ。


一方で追加されたライヴは、
76年3月26日にニューヨーク州のナッソー・コロシアムで収録されたものである。
まさにこのライヴ2枚組CDのために買ってもいい名演であり、
最高のパフォーマンスとダイナミックな音質で頬が落ちそうなほどだ。

ギターは『Station To Station』のカルロス・アロマーと
盟友イギー・ポップの『TV Eye 1977 Live』に参加していたステイシー・ヘイドンが弾き、
ベーシストとドラマーも『Station To Station』以降80年代頭までボウイを支えるミュージシャンで、
キーボード奏者としてYESのオリジナル・メンバーのトニー・ケイも参加している。

CD2枚で計約83分の全15曲のセットリストは、
ライヴ直前にリリースした『Station To Station』の3曲を含みつつ、
それまでのアルバムの曲をバランスよく網羅されている。
盟友ルー・リードが率いたVELVET UNDERGROUNDの「Waiting For The Man」も、
当時のボウイ流に軽やかな佇まいでカヴァーした。

ソウルフルかつグルーヴィーなロックンロールで貫かれ、
かなりハードな音である。
ボウイは70年代前半の“ジギー・スターダスト”時代と、
イーノと組んでいた70年代後半の注目度が高いように思うが、
70年代半ばのこの時期も大切なのだ。
パンク・ロック的で重要なアルバム『Diamond Dogs』(74年)に収録された、
「Diamond Dogs」と「Rebel Rebel」をやっているのもうれしい。

CRASSはバンド名をボウイの代表曲「Ziggy Stardust」の歌詞から引用したが、
1984年にバンドを止めるという伝説的なCRASSのコンセプトも、
ジョージ・オーウェルの小説『1984』がテーマの『Diamond Dogs』にも由来していたと思われる。
このライヴCDを聴くと、
CRASSだけではなくボウイがいかに70年代のパンク・ロック全般に直結したかもわかる。
実際このパフォーマンスをした時期は“パンクムーヴメント前夜”だ。

とにかくかっこいいボウイが楽しめるライヴである。


★David Bowie『Station To Station(special edition)』(EMI BOWSTSX2010)3CD
小箱の中に、
紙ジャケット仕様の本編のCDと、
二つ折り紙ジャケット仕様のライヴCDと、
75年5月から76年5月までの“ボウイ年表”も載った16ページのブックレット
3枚のフォト・カードが封入されている。


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コメント

“パンクムーヴメント前夜”

こんにちは。
ようやく”SPECIAL EDITION”入手しましたか。
昔からのファンにとってこれは大変良いです。

ところで、“パンクムーヴメント前夜”とは、正にその通りですね。
「Station to Station」は76年にリリースされ聴いた時は、当時の時代に合った、70年代的表現で言うと「切れ味鋭いナイフみたいな音」と感じました。特にタイトル曲はイントロからどんどん盛り上げて最後は昇天する当時の王道パターンで大好きでした。しかし、ボウイ自身はこういったアレンジにツアーしながら疑問を感じたようで、この直後にベルリンでイーノとアルバム「Low」を録音して77年1月にリリースしています。興味深いのはAnarchy in the U.K.がリリースされたのが76年11月下旬だったので、これを聴く前に既にボウイも1曲2分前後で終わってしまう「Low」A面の曲の大半は出来ていたようです。楽曲は最初からフルテンションの、短く的確に感情やメッセージを伝えるスタイルです。実際、彼は75年にN.Y.へ行きファンクを取り入れたりしていますが、N.Y.の音楽ムーブメントにも触れたはずです。常に新しい音楽スタイルにこだわったボウイですが、当時別の場所、別の世代で起きたオールド・スタイルに戻ったパンク・ロックと基本姿勢は共通していたと思えますね。

折尾晋哉さん、書き込みありがとうございます。
アルバム・タイトル曲はボウイの中で一番長い曲のひとつだと思いますが、時代性に敏感なアーティストだけに疑問を感じていったんですかね。
ボウイは70年代のパンク・バンドにけっこうカヴァーされてきているように、パンク・ロックの大きなルーツのひとつですが、イーノと組んだ時代に再び短い曲をパンク・ムーヴメントと共振しながら作っていったと想像できます。
CRASS、GERMS、JOY DIVISIONもボウイに大きくインスパイアされていることを考えると、後のシーンへの影響力はとんでもないと再認識しました。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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