なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DARKEST HOUR『The Human Romance』

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ワシントンDC出身の“メタル・ハードコア・バンド”の新作。

2000年のファーストの『The Mark Of The Judas』から2年に1枚のコンスタントなリリースを続け、
セカンド以降『The Eternal Return』まで出してきたVICTORY Recordsを離れ、
1年8ヶ月ぶりに発表した7枚目のフル・アルバムである。
彼らの作品に間違いはないが、
今回はスウェーデンのSOILWORKのギタリストとして知られるピーター・ウィッチャーズがプロデュースし、
楽曲クオリティ、緻密なサウンド・プロダクション、全体のドラマチックな構成力、勢いも含めて
最高傑作の一枚と言える。


AT THE GATESをハードコアのフィルターで解釈した突進するファスト・パートがほとんどの
不変の個性に磨きをかけている。
と同時にDARK TRANQUILLITYやIN FLAMESも頭をよぎるミディアム・テンポのパートも有す。
でも全体を覆うヒリヒリした質感により、
そういったスウェーデンのメロディック・デス・メタルとは一線を画している。
米国のヘヴィ系のNGな面が集約されている単細胞なメタルコアとも次元が異なり、
しっかりとおのれの流儀で突き詰めている表現に打たれるのみだ。

大音量で聴いても音がつぶれず、
ヴォリュームを上げてもデリケイトな個性が増幅される音の仕上がりである。
まぐわいながら加速する2本のギターは艶やかなソロ・フレーズもナチュラルな流れで弾き出す。
抜群のリズム感でスピード感を絶やさずにハジけたビートを手と脚で打ち出すドラミングも冴えわたり、
うねりのベースも含めて俺!俺!なゴリ押しではない強靭なリズム隊がリードして加速する。

アルバム・タイトルどおりに一種の“ロマンス”も感じさせるアルバムだ。
ゲストのストリングスとピアノも入って9分近く展開される、
クリフ・バートンが書いたMETALLICAの曲も思わせる終盤の劇的なインスト・ナンバーは、
叙情的なヘヴィ・メタルのような曲調ではある。
だが音の強度が尋常じゃないからハードコアのアルバムと言い切れる。
スラッシュ・パンクものにしてもD-Beatものにしてもダウン・ビート系ハードコアものにしても、
スタイルに甘えぬ響きの強度がハードコアをハードコアたらしめる。
深いところに耳を傾けたいのだ。

整然とした音作りでありながらもカオスが渦巻いているアルバムだ。
2004年の唯一の来日公演を観てDARKEST HOURをハードコアと再認識したときにも感じた、
音の軋みに痛みを覚える。
だから生々しい。
表面的にメタルだろうがハードコアだろうがパンクだろうが、
自己表現として
ひとつひとつの音に託したもの、
ひとつひとつの声に託したもの、
を大切にしたい。


結成15年を越えるにもかかわらずますますヴォーカルがつんのめっているのも素晴らしい。
ハードコア系も含めてパンク・バンドに目立つわざとらしいヴォーカルとは違うし、
いわゆるヘヴィ・メタル・バンドとも別物なのはこのヴォーカルも大きい。
どんな音楽ジャンルであろうと本気であるか否かは声に一番よく表れる。

ストレートに打ち出さなくてもDARKEST HOURは政治的なスタンスも明確なバンドだが、
いかにものポリティカルな言葉を発したりいわゆる直接行動を取ることで免罪符にしている人もいる。
『The Human Romance』は内省的でもあるからこそリアリティを感じるし、
おのれを研ぎ澄ました表現だからカッコイイ。
凛然とした厳格な響きがすべてなのだ。


★DARKEST HOUR『The Human Romance』(E1 EOM-CD-2322)CD
メタルとハードコアとパンクを集約したロックとしても最高な約46分12曲入り。


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コメント

有島イズム

今日の行川さんの文章は、有島博志さんからの影響を色濃く感じさせますね。
「~はハードコアである」という部分は、まさに有島イズムの正統な継承者だと思います。
行川さんだったらGrind Houseに寄稿してもおかしくないですが、予定はないでしょうか?

ぼくもボーカルがダメだと、どんなジャンルも聴けないです。
ここ数年、ハードコアやノイズより一部のブラックメタルのボーカルに本物を感じます。
奇形児のライブ、行川さんのブログ見て、行かなかった事をとても後悔しています。

淳さん、書き込みありがとうございます。
予定はないです。有島さんからの影響は意識してないですが、昔監修されていたシリーズのCDのライナーを依頼してもらったことはあります。
かくさん、書き込みありがとうございます。
もちろんインストの曲もいいのですが、ヴォーカルを軸に聴いていくと色々と広がっていきますね。奇形児は新曲がライヴでさらに良くなっていくと思いますから期待したいです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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