なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

遠藤ミチロウ、三角みづ紀アンサンブル、見汐麻衣 3月8日at下北沢THREE

“shimokitazawa THREE 3 man series「it continues. -2days special-」”
と題された企画の初日のライヴを観てきた。
下北沢THREEは初めて行ったが、
ステージ前のフロアーで小さなスペースならではの凝縮されたサウンドを聴くのも良し、
その後ろのラウンジでやや遠めで観ながら聴くのも良し、
という居心地のいいライヴ・ハウスだ。


最初に登場した見汐麻衣は2001年に結成されたバンドの埋火のフロント・ウーマンでもあり、
JOJO広重(非常階段)のプロデュースによるオムニバスCD『日曜日のうた』にも収録されていた。
70年代の日本のフォークもわずかだけイメージしたが、
その手の枠を超えた広がりでいっぱいの音楽だからぐいぐい引き込まれる。
日本語の歌の言葉の意味がわからなくても声だけで響いてくるものがあるのだ。
椅子に腰掛けてときおりMCを挿入しながらエレクトリック・ギターを弾き語り、
たおやかな歌声が響きわたる“エレクトリック・アシッド・フォーク”とも言うべき音楽を展開。
基本的に静かに弾き語るのだが、
このライヴ・ハウスの特性と思しき反響でギターの音がいい具合にゆっくりと旋回し、
灰野敬二が歌もののときに弾くギターを思わせる瞬間もあった。


三角みづ紀

続いては
三角みづ紀ユニット名義で↑のジャケットのファースト『悪いことしたでしょうか』を昨秋出した、
詩人・三角みづ紀の新しいバンドの三角みづ紀アンサンブルのデビュー・ライヴだ。
彼女はそのCDとは多少メンバーが異なる三角みづ紀ユニット名義でもライヴ活動を行なっているが、
三角みづ紀アンサンブルのメンバーは『悪いことしたでしょうか』でも演奏していた二人。
一人は三角みづ紀ユニットのライヴでもステージに立ち多彩な活動を展開する井谷享志(ds、per)で、
もう一人は最近までミドリのメンバーでもあったONCENTH TRIOの岩見継吾(コントラバス)である。

三角みづ紀ユニットのライヴも自由形態とはいえ、
エレクトリック・ギターとエレクトリック・ベースも擁する編成のロック寄り。
かたや三角みづ紀アンサンブルのこの日のライヴも雑食だからロックな音だが、
もっとフリーでもっとフリーキーだし、
やる曲と最低限の構成を決めた上でのインプロヴィゼイションの要素も感じられた。
あくまでも現在進行形のパフォーマンスだから、
「ヘモグロビンが降ってくる」や「カナシヤル」といった『悪いことしたでしょうか』の収録曲も、
CDを焼き直すのではなく現在進行形の命で震えていたのである。

電気増幅されたコントラバスを汗かきながら指と弓で“しばく”ように操る岩見も、
プログレ・バンドのQUIでも駆使する石油缶などの多彩な金属も“いたぶり”ながら踏み打つ井谷も、
ジャズの素養を持つとはいえ“イタズラ好き”だから、
飄々とした顔でヤるスウィング感とスピード感が破壊的なジャズであってオギョーギの悪さがよろしい。
そんな二人が三角の世界をふくらませていた。
伸びやかでメロディアスな曲も我流のリズムで歌う三角の発声はパンク的なわざとらしさは皆無。
そんな余裕がないほど生々しい。
朗読なのかもしれないしポエトリー・リーディングなのかもしれないが、
“読む”というより“ポエトリー・トーキング”と呼びたいパートも絶妙にはさみこみ、
遠藤ミチロウの曲「Just Like a Boy」も歌心いっぱいでまっすぐにカヴァー。
すべて身が切られながらも解き放たれる一編の映画のようだった。

三角みづ紀の苗字は“みすみ”と読むが、
やはり“三角(さんかく)”という言葉を背負っているだけに、
“トライアングル”のバランスのトリオ編成ならではと言えるギリギリの緊張感がたまらない。
MOTORHEADBLUE CHEERもトリオ時代が最高なのは必然だ。
三角みづ紀アンサンブルは三人のヴィジュアルもイイ。
常識的なカッコイイの基準のアウトローならではのステージ映えする表情と動きでも引き寄せる。
特に三角はステージ向かって右に立って終始中央を向いて腰を曲げた前屈姿勢で臨み、
終盤まで目をくっきりと開くことのないステージングも印象的。
つまずきながら祈るように声を発する彼女のパフォーマンスは一度観たら一生忘れないのであった。


トリは遠藤ミチロウ。
自分にとって特別な人のひとりであるにもかかわらず御無沙汰して2年ぶりに観たが、
昨秋還暦を越えてますます研ぎ澄まされて凛々しく見えた。
病気でそうなるケースは別として、
歳喰ってからも太らずにいるのはぼくにとって大切だとミチロウを観るたびにも思う。
むろん禁欲的なことを歌っている人ではないが、
根本的なところにストイックな意識がないとこういう姿はキープできない。
いやキープするどころかますます硬質になっている。
この晩ぼくはミチロウの真正面2メートルの位置で文字通り向き合って観ていたが、
電気増幅されたアコースティック・ギターのソリッドな音が左右のスピーカーから襲ってくる中、
蠍の毒が先走るミチロウの声の直撃を喰らって頭と胸が蒼白になりながら加速した。
すごい時間を体験した。

The STALIN時代の「負け犬」や
ソロ・ファースト・アルバムの「お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました」といった
80年代の曲も含みつつ、
様々な時代の曲をまんべんなく披露。
まだ歌詞を覚え切ってないがゆえに譜面台に置いた手書きの歌詞を見ながら歌っていた新曲も、
早くレコーディング化してほしい意味深長な名曲である。

ソロになってからのミチロウのライヴはMCも軽妙で楽しく、
いらん底意地が見え隠れするMCが嫌いなぼくでもヤられる。
全国ライヴで周って土地ごとに訪れる墓場が好きという話にもなり、
子供の頃にも墓場で遊んで桜の季節にお供えのオハギをいただきながら“花見”をした逸話も披露。
直前に周った山陰ツアーにおける温泉での困ったエピソードに続いて「温泉ファック」を歌った後に、
“オンセン”つながりでONCENTH TRIOの岩見を呼ぶ展開も心憎い。

三角みづ紀アンサンブルの岩見が福島の高校の後輩という事実をこの日初めてミチロウは知ったらしいが、
そういう縁も大きかったのだろう強力な磁場が生まれていた。
二人がヤった曲は、
ミチロウが弾き語りソロ活動の極初期からやっているボブ・ディランの曲の日本語カヴァー「天国の扉」。
まさに“天国の扉を叩き壊す”形相で覚悟を決めて透徹した喉を震わせるミチロウと拮抗し、
マイクがないにもかかわらずコントラバスと格闘しながらサビの部分を熱唱していた岩見。
この晩のライヴを観て一緒のレコーディングを望むのはぼくだけではないだろう。

アンコールでは、
ミチロウへのトリビュートCD『青鬼赤鬼』で三角みづ紀ユニットがカヴァーした「早すぎた父親」を披露。

30年間ミチロウ関連のライヴを観てきたが、
ミチロウの歌でこれほど感動したことはない。
ミチロウの歌心がこれほど響いてきたことはない。
凛然とした佇まいと年輪が刻まれた歌に終末だの希望だのを超える何かを覚え、
自失しながら解放された自分をさすりながら帰途についた。


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コメント

来月4月

遠藤ミチロウさんと三回目の対バンです。負けますが負けないよう頑張ります♪♪

ITOさん、書き込みありがとうございます。
そうですか・・・来月のミチロウさんのスケジュールを調べてみます。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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