なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

TOTAL FUCKING DESTRUCTION『Hater』

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BRUTAL TRUTHのドラマーの奇才リッチ・ホーク(vo、ds)が率いる
米国のグラインド・コア・トリオのオリジナル・サード・アルバム。
むろん単なる別プロジェクトではない。
今回もまたクレイジーな濃密仕上げである。


約27分27曲入りながらも、
“グラインド瞬間芸”や“グラインド伝統芸”で終わらぬフック十分の多彩な曲作りが光る。
BRUTAL TRUTHをカオティックな方向性に導いた張本人がリッチだが、
『Kill Trend Suicide』以降のBRUTAL TRUTHより取っ付きやすく、
いい意味で今までのTOTAL FUCKING DESTRUCTIONのアルバムより入り込みやすい。
言うまでもなく破天荒なリッチの高速ドラムが縦横無尽にリードしてフリーキーであるが、
ロックンロールとすら言えそうなほどジャジーなドライヴ感が格別なのだ。
メタルとは一線を画すロッキンなギターのダン・オヘア(g、vo)の録音/ミックス/マスタリングよる
明快な音質もプラスに働いている。

近未来的なリアリティを突きつけながらも
ある意味ポップなのは彼らのキャラだろう。
すっとぼけて微妙に甲高い声で悠然と飛んでいくみたいなリード・ヴォーカルが、
初期BLACK FLAG~CIRCLE JERKSあたりのパンク・フィーリングなのも大きい。
音楽的テクスチャーは必ずしも単純ではなく複雑に音が絡み合って奥深く、
グラインド・チューンの中から無数の音楽が聞こえてくるのだ。

何度かインタヴューした限りBRUTAL TRUTH内で一番ブッ飛んで知的なメンバーである
リッチのトリップしたインテリジェンスが炸裂している。
ステージを観たことがある方ならドラムを叩いている最中のエクスタシー顔でわかるだろう。
今回もリッチが書いていると思しき歌詞も気のふれた知性が加速している
(だが頭デッカチのスノッブ・インテリとは次元が異なる)。
曲だけでなく歌詞もコンセプト・アルバムと解釈できる流れだ。

どうしょうもない世界の状況を笑い飛ばすかのようでもある。
たとえば正義もへったくれもない善悪の彼岸みたいな中東周辺で今起こっていることと共振している。
ピース・マークの保証書付な包茎ミサイルが次々と襲ってくるポスター・ジャケットのアートワークは、
洋の東西問わず傲慢なオトコ的なるものへの痛烈な皮肉とも解釈できる。

“人間そのものへのダメ出し”みたいなラスト・ナンバーのタイトル「Human Is The Bastard」は、
BRUTAL TRUTHが「B.T.I.T.B」という曲でもオマージュした
MAN IS THE BASTARD(現BASTARD NOISE)に引っ掛けたものだろう。
反政府だの反権力だのの類の手垢にまみれた既成のスローガンがオメデタく映るほど切羽詰まっている。
芝居がかる余裕なんてないことは音を聴けばわかる。
深刻にゲラゲラ笑いながらグラインドしているみたいなのだ。

確かにポジティヴ!ポジティヴ!の連発は胡散臭くもあるが、
単なる“ネガティヴ・キャンペーン”もウンザリする。
常々そんなことばかり聞かされたら気が滅入るし特に今の日本だとキツい。
ずーっと最悪なのはわかっている。
だがこの作品は世界的に最悪であることを認識しまくっているからこそ、
歌詞も音も乾いた表現で絶望の果ての空漠を突き抜けて妙に快活だから解放されて元気になる。

以前リッチは、
“BRUTAL TRUTHは前向きだけどTOTAL FUCKING DESTRUCTIONは悲観的”と分析していたが、
本作のリリースに際してこう言っている。
“『Hater』はスローモーションの黙示録を祝す。”
“『Hater』は平和と愛とtotal fucking creationのメッセージを世界中に叫ぶ。”

そして「Everything You Need But Nothing You Want」という曲ではグラインド・コアへの愛憎を露わにし、
ポルノ・グラインドやゴア・グラインドを揶揄しつつ宣言する。

グラインドはポルノじゃない。
グラインドはゴアじゃない。
戦争の速度のラウド・パンク・ノイズだ。

お見事!としか言う他ない。


★TOTAL FUCKING DESTRUCTION『Hater』(TRANSLATION LOSS/WAYLON RECORDINGS TL48-2/WR3-2)CD


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コメント

禅のアルバムしか聴いてなかったですが、今回はメタル色が引っ込んでパンクグラインド的になりましたねTFD。
行川さんはSodomとDeicideの新譜聴きました?

Aさん、書き込みありがとうございます。
パンクグラインド、上手い言い方ですね。
SodomもDeicideも新譜を聴いていませんが、後者は買うつもりなので聴いたら書きたいと思います。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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