なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

CULTED『Below The Thunders Of The Upper Deep』

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カナダとスウェーデンの間で海を越えた“ドゥーム・プロジェクト・バンド”、
CULTEDがデビュー・アルバム『Below The Thunders Of The Upper Deep』を発表している。
20年にわたってエクストリーム・ミュージックを産出してきた米国のリラプス・レコード発だが、
BLACK SABBATHの曲「Black Sabbath」を原点にしたドゥーム系は、
レーベルとしては意外と珍しいリリースだ。
そういったことはともかく色々な面で考えさせられた好盤である。


音楽はライヴが一番という意見はもっともだし、確かによくそう思いはする。
凄みを効かせたイメージのハードコア・バンドでしっかり作りこんだレコーディングを行なっていても、
ライヴで観て肝心の気合と演奏テクニックが追いついてなくて寂しかった例も、
意外と内外に多かったりするし。
そうやってナマで底が見えてしまったバンドは、以降しばらくライヴを観に行かなくなってしまう。
だからといってライヴ重視!という“言い訳”の下、
平板な音の仕上がりのCDをリリースするのは無責任だ。
インディ盤にしても貪欲に様々なCDを聴くと音に対する気遣いの“違い”に気づくと思う。

「とにかくライヴを観てほしい」とかいう発言は、
東京をはじめとしてライヴをやることに恵まれた環境で生活しているバンドに目立つ。
たとえば、いわゆる周りに何もないような地方で生まれ育って、
家庭の事情でその地を離れられないにもかかわらず音楽をやりたい人は、
ライヴどころか“バンド”を組むこと自体が難儀だろう。
逆に言うと、
「オレってパンク!」みたいな借り物のわざとらしい自意識を人前で見せつける必要はないわけで、
だからこそ、おのれとピュアに向き合って搾り出したアイデンティティをまっすぐに解放できる。
地理的な事情で“アンダーグラウンドのメイン・ストリームのシーン”ともなかなか絡めないと思われるから、
表現に対する姿勢が必死だ。
それはジャンル問わず日本でも、特に地方のバンドや個人で活動しているミュージャンと接して思う。
特にオリジナルなことをやっている人は、他とつるみようがないから甘えはない。
コネがない人はホント大変だし、そこでインターネットはやっぱり大きな助けになっている。


CULTEDはスウェーデンのイエテボリに住むヴォーカルとカナダの郊外の小さな町に住む演奏陣3人から成る。
イエテボリといえばAT THE GATESやIN FLAMESなどのメロディック・デス・メタルの聖地だが、
むろん音楽は一色ではない。
それはともかく、『Below The Thunders Of The Upper Deep』はファイルのやり取りで作ったアルバムだ。
昔だったら録音したテープの交換で海を越えて制作したものだが、
双方が録った音源をインターネット上で送って仕上げていったそうである。

日本の範囲内だけでもそのような感じで、
たくさんのミュージシャンに参加してもらってアルバムを作るアーティストはたくさんいる。
メンバーが離れた所に住んでいるだけに、そうやって作っているハードコア・パンク・バンドも存在する。
やっぱり一発録りとは少なからずニュアンスは違ってくるが、
全パート一緒に録るレコーディングでないのならば大差はないようにも思える。
逆に直接会ってレコーディングしてない人たちは、
みんな揃って録音するバンド以上に最終的な仕上げに対して神経を使っている人がホント多い。
CULTEDの『Below The Thunders Of The Upper Deep』も、
彼らのアイドルと思われるジェイムズ・プロトキン(OLD~KHANATE~KHLYST他)がマスタリング。
デリケイトな鼓動が伝わってきて完璧だ。

バランスのいいドゥーム・アルバムと言える。
とはいえアップ・テンポになるところはほとんどない。
90年代のNEUROSISにBURNING WITCHやKHANATEのヴォーカルが加わったようでもある。
CORRUPTEDや初期ZENI GEVAの沈鬱な雰囲気やリズム・パターンのニュアンスも感じ取れるし、
同時にブラック・メタルの終末感も強い。
リズムの間合いに対する各メンバーの感覚も特筆すべきで、
けだるいテンポで脱力した音のゆったりしたビートを鳴らすドラマーのリズム・センスのウエイトも大きい。
キーボードやパーカッションも適宜も挿入して葬送の趣もあるし、
ひとりひとりのメンバーの響きが静かに自己主張して溶け合い、
ひとつひとつ丁寧に織り込まれた楽曲も印象に残るのだ。
滑らかな流れの中から醸し出されるこの“たそがれ感”は、米国のバンドにはなかなか出せないだろう。


●カルテッド『ピロウ・ザ・サンダース・オブ・ザ・アッパー・ディープ』(リラプス・ジャパン YSCY-1154)CD
表ジャケットの中央部がくりぬかれたデジパック仕様で、味のある紙質のインナー封入の約47分6曲入り。
日本仕様盤は暗黒な歌詞の和訳付である。



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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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