なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『共喰山(ともぐいやま)』

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オーストラリア産のホラー・スプラッター映画。

監督・脚本・製作を手掛けたジョシュ・リードの劇場用長編デビュー作だが、
ホラー映画監督として知られるコリン・エッグルストンの息子ということで、
ガキの頃からホラーの洗礼を受けてきたと思われる筋金入りの仕上がりだ。
臓物ドロドロだから見るにあたってはある種の覚悟が必要だと思うが、
息をつく暇をまったく与えないスピード感であっという間のキョーレツな84分である。


スクープとも言える古代壁画の探索のために山を訪れる男女が3人ずつ。
カップルと思しき2組と
残りの一人の女に片思いと思しき一人の男の計6人は、
大学の友人同士みたいな雰囲気である。
調査も兼ねつつ基本的にはキャンプでエンジョイ!のノリだけに、
目的地に向かう車中でも下半身で会話をしているみたいな言葉が飛び交うが、
序盤がアゲアゲすぎる雰囲気だけに中盤以降との落差が怖い。

テントを張って周りをはばからず早速彼氏とファックしてあえぎまくる娘もいるが、
その女性が夜中に湖沼で全裸水浴を行なった後に発狂したケダモノと化してから物語は加速する。
人格が変わってしまった女性は、
友人だろうが恋人だろうが生きるために人肉を食いちらそうと息を荒くする。
まもなく6人のうちのリーダー格の男性も、
水浴びで侵されたのか発狂して仲間の肉に飢えて襲いかかってくる


襲い掛かってくるから
殺らなければ殺られる。
ほとんど戦争状態に突入してしまう。
だが、
つい昨日まで研究二の次で仲良くゲラゲラ楽しんでいた仲間であるにもかかわらず、
殺されるかもしれないからといって殺せるか。
完全に正気を失したといっても友を殺せるか、
完全に気がふれたといっても恋人を殺せるか。

一般の人間にとって知り合いでなくても人間を殺すのはたやすくないだろう。
ましてや相手は仲間。
いくらこっちを認識できなくなっているとしても、
迷いが許されない状況だとわかってはいても、
「殺すことも選択肢としてありえる」と言いつつ簡単に殺せるわけはない。
形相は変わっても基本的な顔は同じだから、
なかなか別人格とは認識できない。
“更正”を願って気を許すと指や喉を喰いちぎられる。
単なるスプラッターもので終わってないのは、
そんな命がけの葛藤が渦を巻いているからだ。
ある種の人間性との闘いだから妙にリアリティを感じる。

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悪鬼と化した女性も男性も人間を超越した動きでデフォルメした作りだ。
生き物の種としての人間ではなくなっていることを強調するためだろう。
ホラーの王道と言える顔つきで、
盛りがついたケダモノの如く仲間の肉に食らいつこうとする。
常軌を逸したストーリーもさることながらエクストリームな映像美にこっちも殺られる。
死にかかった臓物が息も絶え絶えの様子が伝わってくるほど立体感が十分で鮮烈な映像なのだ。
バックで流れる音楽はアンビエント~ダブのトーンが中心で、
それがまた静かにヘヴィにゆっくりと煽っていくのであった。


触手が登場するシーンでは『うろつき童子』の世界に突入か!?と思いかけたが、
そんなにエロい話ではない。
むしろ生々しい。
人肉喰鬼と化した女も男も哺乳類なら何でもオッケーみたいだ。
カンガルーも人間も差別はしない。
「しょせん“同種”でしょ! なぜ分けるの? どっちも共喰いじゃん!」とばかりに牙を光らせる。
このあたりのくだりは
“なぜ他の哺乳類をたらふく喰っていても人間だけ喰わないのか?”とかveganismの深読みもできる。
“豚や牛を喰うのはオッケー!で人間が人間を喰って何が悪い! 同じ哺乳類じゃん!”という、
“悪鬼”の声もぼくには聞こえてくる。

デス・メタル全開の映画である。
OBITUARYやMORBID ANGELというよりは、
動物と人間の臓物を同次元でリアリスティックに描くスピード感も含めてCARCASS、
いややっぱりパンド名から食人なCANNIBAL CORPSEが描いてきた世界観と言えよう。


だが実のところキーワードになる言葉はcuntである。
トータルで下品な言葉だから女性が使うのはためらう言葉でもある。
CRASSの女性シンガーのイヴも男性メンバーが歌詞に入れようとしたcuntを排除させたらしいが、
単に“おまんこ”を意味する卑猥な意味合いだからというよりは、
女性蔑視の極端な言葉にもなりえるからだ。
序盤で男女問わず友人たちがうれしそうにcunt!と言いまくってはしゃいでいたときに、
主人公と言えそうな女性は一人だけ嫌悪感を表していた。
だからこそ映画のラストの捨てゼリフを聞き逃さないように。

エクストリームな状況をくぐり抜けたあとに理性はブッ飛び本能が開花する。


ストレートで問答無用な邦題は映画の雰囲気をズバリど真ん中ストレートで射抜いているが、
原題は『PRIMAL』。
“原初的”“主要な”という意味合いが象徴主義的で深い。
暗転した極限状況で人間はどうなるか、
どういう行動を選択するのか、
恋人として友としてどこまで付き合えるのか信用するのか。
人間自身を問う映画にも思える佳作だ。


★映画『共喰山(ともぐいやま)』
2010年/オーストラリア/カラー/84分
2011年5月7日(土)より、シアターN渋谷にてレイトショー。
他、全国順次公開。
www.kingrecords.co.jp/tomogui/
©2010 Prima Films Pty Ltd.


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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