なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

BLACK SABBATH『Dehumanizer』(Deluxe Expanded Edition)

BlackSabbath_Dehumanizer_JK(最大)


16作目に数えられる92年発表のオリジナル・アルバムが
2枚組CD“デラックス・エディション”でリイシューされている。

トニー・アイオミ(g)がギーザー・バトラー(b)を9年ぶりに呼び戻し、
10年ぶりにロニー・ジェイムズ・ディオ(vo)とヴィニー・アピス(ds)が復帰という豪華メンバー。
2000年代後半に活動したバンドのHEAVEN & HELLの4人によるアルバムだ。


ディスク1は本編のみの約52分10曲入り。
70年代のELECTRIC LIGHT ORCHESTRA(ELO)や後期QUEENも手掛けたマックのプロデュースで、
金属質のギターをはじめとして各パートの押しが強いソリッドな音作りになっている。
曲もドゥーム云々というよりは、
JUDAS PRIESTSが合流してブリティッシュ・ヘヴィ・メタルを更新したかの如きタイトな曲。
ジャズ・フィーリングのビル・ワードとは違うヴィニーの鋼鉄パワー・ドラムの影響も大きい。

むろん70年代の妖しげな空気感は薄いが、
同時代のスラッシュ/デス・メタルの音の感覚とも違う。
80年代初頭のBLACK SABBATH、
もっと言えば『Heaven And Hell』『Mob Rules』からロマンチシズム五割殺ぎ落としたみたいだし、
イアン・ギランがヴォーカルの『Born Again』も思わせる音だ。
その頃のアルバムも愛する
後期BLACK FLAGの“変態メタリック・アプローチ”への影響も強い部分のBLACK SABBATH。
「TV Crimes」という曲なんて、
BLACK SABBATHの影響を受けたDISCHARGEや英国のDOOM、
あるいは90年前後のSEPULTURAからのフィードバックみたいだ。
その一方でアルペジオやブルージーなフレーズも忍び込む。
どこをとってもストレンジなところにムズムズするのであった。

『Heaven And Hell』『Mob Rules』の頃には
ファンタジックな世界観のロニーに歩み寄ったようなトニーとギーザーが、
基本的にリアリスティックなBLACK SABBATHの本質をロニーに提示したかのようだ。
せめぎあいムズムズする緊張感がある。
一般的なロニーのイメージと違う現実感覚とスピリチュアリティが渦巻く歌詞の中には、
BAD BRAINS~CRO-MAGS以降のハードコア・バンドみたいなものもある。
だが葛藤しながらのロニーの歌いこみ方がカッコよく、
強引に自分の領域に歌詞も引き寄せるド迫力。
苦渋のニュアンスで粘っこいストロング歌唱がたまらない。
SPIRITUAL BEGGARSをサポート・アクトにしたDIOでの来日公演のときに観た、
肉体的かつエモーショナルな歌いっぷりを思い出した。


約40分8曲入りのディスク2はシングルやEPで発表した音源などで構成されている。
72年のサード・アルバムの『Master Of Reality』というタイトルを当時の感覚で解釈したような
「Master Of Insanity」のシングル・エディット、
「Letters From Earth」のBサイド・ヴァージョン、
「Time Machine」の映画『Wayne's World』のサントラに提供したヴァージョンという、
スタジオ録音テイクがまず3曲。
あとの5曲は92年7月25日の米国フロリダでのステージの模様だ。
そのうち4曲は当時CDEPで発表済みだが「Master Of Insanity」のライヴは未発表。
この時期は短命に終わっただけに貴重なテイクである。
『Heaven And Hell』の3曲と本作の2曲を披露しているのだが、
すべてロニー在籍時に発表した曲だから違和感ない。


本作の日本盤ブックレットで読めるインタヴューによればロニーは当時、
「今回のプロジェクトは長く続くものではない。
俺はいずれ(自分のリーダー・バンドの)DIOを再結成させることになるだろう」
と語っていたという。
同時に日本盤のライナーによれば、
当時BLACK SABBATHから影響を口にするオルタナティヴ・ロック界隈のバンドたちが
オリジナル・シンガーであるオジー・オズボーン時代の70年代しか見てないことに対して、
ロニーが魂を燃やしていたらしい。
本作リリース後まもなくロニーとヴィニーが去ったわけだが、
元から危ういバランス状態の上で綱渡りの熱いレコーディングをしたことが伝わってくる。

そんな火花が様式美をデストロイ!した異形のアルバムである。


★ブラック・サバス『ディヒューマナイザー デラックス・エディション』(EMIミュージック・ジャパン TOCP-70990-91)2CD
4面デジパックに16ページのブックレット封入。
日本盤はオリジナル日本盤発売当時のライナーと、
トニーの最新インタヴューを含む昨年10月執筆の英文ライナーの和訳、
本編の歌詞と和訳付。


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コメント

情報有り難うございます。

これは買いですね♪♪チェックしてみます。

話は変わりまして、カバレラコンスピラシー買いました(笑)初回限定を。店員が四回聞き返してきました(笑)
DVD凄いですね♪DEATHのTシャツが..もう...何とも言えません。

ITOさん、書き込みありがとうございます。
Tシャツとかで色々アピールマックスのミーハー性も憎めないです。
70年代の様々な意味での“魔術性”はないですが、80年代以降のサバスも単なるメタルでなくストレンジで面白いです。

いつも拝見しています。

当時ロニー・ジェイムス・ディオの方がモダン/生真面目路線で、ギーザーとトニーの方がサバスで「HEAVEN AND HELL」のメロディアス路線を続けていて、2人がロニーの路線に合わせてこういう仕上がりになった、と記憶していますが。

違っていたらすみません!

サバ男さん、書き込みありがとうございます。
 そういう部分も強かったと思います。“両陣営”がメロディアス/モダンの両路線の葛藤の中で数ヶ月だけ何か一致したアルバムとも言えそうです。
 このあとロニーがDIOでモダン路線を強めて『Angry Machines』にまで至りましたし、サバスはトニー・マーティンがヴォーカルでいわゆる様式美路線をやってきてコレですからね。当時をふりかえるトニーによれば、ロニーが虹のことしか歌わなくてサバスとしてはダークな内容に歌を求めたとのことで、歌詞はギーザー色が強くてロニー色が薄いのかもしれません。曲や音の変化に関してもギーザーの復帰も大きそうです。
 お互いの岐路とまではいえないのかもしれませんが、刺激し合ったからこその作品でしょう。様々な意味でバンド・ドラマを感じさせますね。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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