なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DEATH『The Sound Of Perseverance』

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デス・メタルのオリジネイターであるフロリダのバンドが98年に発表した通算7作目のラスト・アルバムが、
ジャケットのマイナー・チェンジとボーナス・ディスクの追加とリマスタリングを施してリイシューされている。
最終章にふさわしい荘厳な佇まいに支配され、
冷徹でありながら人間のぬくもりが滲む行き着くところまで行ったグレイトな作品だ。


メンバー・チェンジの激しいバンドだったが、
この前のアルバム『Symbolic』(95年)からは
チャック・シュルディナー(vo、g)以外全員変わっていて、
シャノン・ハム(g)、
スコット・クレンデニン(b)、
リチャード・クリスティ(ds)
を擁した編成である。

チャックが作詞、作曲、プロデュースを手掛け、
フロリダのデス・メタルの名盤を次々と世に送り出したモリサウンド・スタジオで録音し、
エンジニアとミキサーは共同プロデューサーでもあるジム・モリスが『Symbolic』に続いて担当。
リマスタリング効果でより緻密かつ鮮やかに迫る。

ベーシスト以外メンバーが同じCONTROL DENIED用に作っていた曲という説も納得のメロディアス加減だが、
やはりDEATH名義でリリースしただけに残虐な響きがアルバムの血管を流れている。
むろんAT THE GATESをはじめとするいわゆるメロディック・デス・メタル・スタイルではなく、
アーティスティックなエクストリーム・メタルと言えよう。
『Symbolic』で叩いたジーン・ホグランほどドラムが爆裂してないこともあいまって、
英語のsmartという言葉がふさわしい仕上がりだ。

それまでと同じくブラスト・ビートは使わずスラッシーなパートも多いが、
むろんスラッシュ・メタルやメタル・コアによくあるスポーツ感覚とは別次元に突き抜けており、
痛みを研ぎ澄ましたような音である。
流麗なギター・ソロは“心音”だ。
プログレ・ファンの方も堪能していただきたいほどプログレッシヴな曲とテクニカルな演奏だが、
テンポ/リズム・チェンジを多用するとはいえトリッキーではなく決して小難しくない。
ギターにはジャズやトラッド・ミュージックの精も宿り、
アコースティック・ギターも絡めたインスト・ナンバーの「Voice of the Soul」では、
文字通りDEATHならではの静かなるソウルが息づく。

もはやデス・メタルではないという類の論はどうでもいいことだ。
要は魂から紡き出している表現か否かだから。
わざとらしいノイズほど“悲しい音”はない。
とてつもなくデリケイトだがストロングな磁場が生まれている。
じっくりと向き合いたくなるアルバムだし、
いつのまにか引き込まれていくアルバムだ。

もともとヴォーカルはいわゆるデス・ヴォイスではなかったが、
とりわけ本作はブラック・メタルにも近い高音域で
肉体と精神から同時に絞り出して肉体と精神を解き放つような発声。
だから歌心が噴き出している。
デス・メタルの域を超えて心を突き刺すインテリジェンスに富む歌詞も素晴らしい。
ホラー映画みたいな歌詞とは対極であり、
音と同じく人間を掘り下げるDEATHならではのスピリチュアリティをさらに突き詰めたものである。
みな曲名だけでも想像力が広がるフレーズだし、
“堅忍の音”と和訳できるアルバム・タイトルがハマっている厳格なアルバムだ。

約57分9曲入りの本編の最後はJUDAS PRIESTの「Painkiller」のカヴァー。
原曲に忠実とはいえサビの部分での残虐なリフはDEATHならでだし、
先駆者ゆえにデス・メタル・バンドとしては異端の高い声域を使ったチャックのヴォーカルのルーツに
ロブ・ハルフォードがあったのでは……、
とも想像できる興味深いテイクである。


約61分10曲入りのボーナス・ディスクは本編の曲の98年と97年のデモで、
ヴォーカルが入ってない3曲はベースも入ってないが、
他の7曲ではスコット・ディジョルジオがベースを弾いている。
つまりこちらのCDで演奏した4人が前述のCONTROL DENIEDで活動したメンバーだ。
修行僧の如く研ぎ澄ます過程が見えてきて興味深い。


★デス『サウンド・オブ・パーサヴィランス』(リラプス・ジャパン YSCY-1207)2CD
24ページのブックレットとスリップ・ケース付。
日本仕様版は、
ギタリストのシャノンとジャケット担当のトラヴィス・スミスによるオリジナル・ブックレット掲載の英文ライナーと歌詞の和訳付で、
CD1枚ものと同じ価格での販売だ。


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コメント

ブックレットにスリップケース。そしてペインキラーのカバーだけでもこれは買いですね!!

日本仕様盤には和訳が付いているそうですが、
英文ライナーそのものは海外仕様盤にも付いているのですか?
行川さんの記述だと分かりづらいです。

書き込みありがとうございます。
>ITOさん
「ペインキラー」のカヴァーもクールです。
>MIDGEさん
英文ライナーは、RELAPSE Recordsから発売されたもの(カタログ・ナンバーRR7154)に封入のオリジナル・ブックレットに載っているものです。わかりやすく記述手直しておきますね。ただこの英文ライナーは、アルバム・カヴァーと同じく赤の地の上に小さな文字で印刷されているデザインのため、読みやすいとは言いがたいです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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