なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

BLUE CHEER『Rocks Europe』

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BLUE CHEERがDVD『Rocks Europe』(RAINMAN RM09019)をリリース。
レコード・デビュー40周年の昨年4月のドイツにおけるライヴが収録された。
ずっとBLUE CHEERのフロントマンのディッキー・ピーターソン(vo、b)、
離脱時期もあるにせよ同じくオリジナル・メンバーのポール・ホエーリー(ds)、
基本的にここ20年BLUE CHEERで弾いているアンドリュー“ダック”マクドナルド(g、vo)の三人が、
悠然とステージに立つ。

ファーストの『Vincebus Eruptum』(68年)とセカンドの『Outsideinside』(68年)、
最新作の『What Doesn't Kill You...』(2007年)という、
買って間違い無しのアルバム3枚からほぼ均等に選ばれた10曲で構成。
エディ・コクランのカヴァーの大ヒット・シングル「Summertime Blues」もやっている。
様々なアングルから捉えた映像とダイナミックな響きに仕上げた音像など、
絶妙のプロデュースぶりで今のBLUE CHEERを最高の形で伝えている。
日本の通常のDVDプレイヤーで鑑賞可能だ。

本編約90分。
ディッキーによる“ヴォイスカヴァー(オーディオ)・コメンタリー”と、
ディッキーが約35分語り倒す特典映像のインタヴューも付いている。
それらは比較的聞き取りやすい英語で話しているが、
英語がわからない方もむろんど迫力の本編だけでも痺れるはずだ。
オランダで制作された約5分のテレビ・スポットも楽しい。
4分ほどのスライド・ショーのバックには未発表の「Alligator Boots」が流れるが、
その中に出てきた“STILL LOUD, STILL PROUD”という言葉も120%偽り無しのDVDなのだ。

まずBLUE CHEERを一度でも好きになったことがあればゲットして後悔することはない。


BLUE CHEERは60年代後半にサンフランシスコで結成されたが、
当時盛り上がっていた彼の地の“お花畑なヒッピー・ムーヴメント”を掻き乱す如く
とにかく馬鹿でかい音をブッ放つことに命を懸けていた。
結局そういうプリミティヴなロック衝動がずっとBLUE CHEERの肝である。

音そのものが素行不良なアウトロー気質でメジャーな存在には成り切れないから、
パンクの元祖とも呼ばれてきた。
金属質でもあるヴォーカル・スタイルがLED ZEPPELINよりも早く音もやかましいから、
ヘヴィ・メタルを先導したとも言われてきた。
ファズ・ギターとリズムのズラしを応用して不可思議な音を鳴らしてきたから、
サイケデリック・ロックの源流の一つとも見なされてきた。
以上のトータルでストーナー・ロックのゴッドファーザーでもある。

ルーツと言えばジャック・エンディノのクールなライナーも封入されている。
ジャックはNIRVANAの『Bleach』やMUDHONEYの『Mudhoney』を手がけた後、
BLUE CHEERの90年のアルバム『Highlights And Lowlives』をプロデュースした。
MUDHONEYは確実にBLUE CHEERの“長男”だが、
NIRVANAもBLUE CHEERが産み堕としたスウィートな子供だろう。

CONVERGEのベーシストのネイト・ニュートンがフロントに立つDOOMRIDERSが2006年に来日した際、
メンバーの一人がBLUE CHEERのTシャツを着ていたからインタヴューで訊いてみたら、
一緒にライヴをやったと言っていた。
もちろん彼らが大好きなバンドで、
雲の上の存在と思っていたにもかかわらず米国で対バンを依頼したら快く引き受けてくれたと喜んでいた。

けど、ロックの歴史の中で“優遇”されてきたバンドとは言いがたい。
メンバー・チェンジによって短期間のうちにレイドバックした69~71年の“迷走期”や
たび重なる活動停止の時期があるからなのか。
いやロックの王道を突き詰めすぎているがゆえに、
根無し草の浮ついたシーンの中には居場所がなかった。
どの世界でも過剰なまでの熱度はメインストリームがお呼びじゃない。
だからこそBLUE CHEERは外道で在り続けている。


揺るぎ無き核のみを叩きつけるという意味で、
ハードコアかつブルージーに迫る重厚なヘヴィ・ロックと言えるDVD。
99年の唯一の来日公演の時みたいなMETALLICA風のメタリックなテイストを通過し、
シンプルになったからこそ感情が凝縮されて硬度を増していることに驚く。
弾きまくりのソロもハードなリフもひっくるめてのギターにも、
天然のゆるさがまさにBLUE CHEERなドラムにも、
リズム・セクションに徹しつつ曲をリードするベースにも、
音や声のひとつひとつの軋みに3人のひとりひとりの人生が刻まれている。
真剣勝負の表現とはそういうものだ。
BLUE CHEERは“愛と平和”を説きたいわけではなかろう。
でも外に解き放たなければいられない“demon”を抱え込んでいる。

覚悟を決めた男たちのツラ構えに殺られる。
特に、硬質そうな白髪(はくはつ)がまぶしすぎるディッキーはこの時60歳のはずだが、
不変のヴィジュアルで鋼の喉を震わせる。
ストイックと言えるほど落ち着き払ったパフォーマンスならではの凄み。
息を呑みっぱなしだ。

これから先もぼくはこのDVDを思い出しては死ぬまで見続けるだろう。
なぜならロックの魔力がここに宿っているから。
とてつもなく勇気づけられる。



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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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